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告白(4)

 話を続けよう。


 さっき「ある人から出た死神が別の人を襲うことはない」って言ったが、それには例外があるみたいだ。どうやら自分の仕事を邪魔する奴には容赦はないみたいだな。まあ、当然と言えば当然か。


 はじめは、器用なことに俺を攻撃しないように気を遣いながら王女様ばかり狙っていたんだ。それを俺が邪魔するというのが幾らか続いた。


 すると、どうやらターゲットを俺に変更したみたいだ。俺の魂を奪った後ゆっくりと、っていう算段なんだろう。


 ついつい心の中で「よし」って思っちまったよ。こうなったら多分、俺が死ぬまで奴が彼女を襲うことはないだろうからな。


 第二だとはいえ、俺だって一国の王子だ。それなりに戦い方なんてものを教え込まれたものだ。この時だって武器になるようなものなんて護身用の短剣しかなかったけど、この程度の相手なら攻撃をかわしながら彼女を守るというのも問題なかった。


 だから、ここからが本番だ。


「王女様、奴の様子が変わったみたいです。ほんの少しばかり、私から離れられた方がよろしいかと」


 先ほど離れるなと言ったばかりなのになんて考えもしたが、標的が俺に変わったんだからいくらか距離をとった方が彼女にとっては安全だろう。


 彼女は「わかりました」とって一言、離れ際に「絶対に勝ってくださいね」ってもう一言。


 彼女のこの言葉を聞くだけで、「問題ない」が「負ける気がしない」に昇華しちまったね。


 背中を向けててよかったよ。一瞬だけ現状を忘れて顔がゆるんだのをはっきりと自覚したよ。


 すぐに気を引き締めて、


「お任せください」


 とだけ、答えた。





 そうは言ったものの……。奴の鎌にはちゃんと触れられるみたいなんだが、死神を切ることなんてできるんだろうか。


 そんなことを考えてる間も攻撃は続いている。


 奴の獲物はその特性上攻撃のパターンが限られてくる。それに鎌をふるう速度も大したこともなく、はっきり言ってこの程度なら単発で攻撃を食らうことはないと判断したよ。まぁ、だからと言って決して油断はできない。不意に本気の速度で切りかかられるなんてこともないわけじゃない。


 これもその特性なのだが、奴の獲物はとてもリーチが長い。だから、俺は俺でなかなか距離がつめられないんだ。短剣じゃ相手の懐まで潜り込めなきゃ当てられない。だからってこのまま一方的に打たれ続けるんじゃジリ貧だ。あいつが体力を消耗しているなんてどうしても考えられなかった。


 鎌を振る速度は大したことないって言っても、自重に獲物の長さによる遠心力が加わると、短剣で捌くには少々荷が重い。なるべく躱すようにしたんだが、どうしても短剣で防がなきゃならない場合もある。


 この短剣はかなり頑丈な方なんだが、あんな重い攻撃何回も受けてたらさすがに持たない。


 奴の攻撃を捌きながらしばらくそんなこと考えてたが、やっと”決めた”決意ができたよ。遅いぐらいだったのかもな。



 振り下ろしてきた鎌を、渾身の力で大きくはじく。そうしてできた僅かな隙を使って一旦大きく後退して可能な限り距離を取った。そのまま懐に攻めてたらまず間違いなくやられてた。


 一呼吸置いて気を落ち着かせてから、相手との間合いを測る。


 そして、先程稼いだ距離を駆け足で詰めた。


 奴がその場で鎌を振り上げた。懐に飛び込む前に振り降ろすつもりだろうが、構わず距離を詰める。


 鎌が振り下ろされた。このままいけば確実に攻撃を食らうことになる。


 それでも、距離を詰めた。


 禍々しく輝く刃が、迫ってきた。


 避けるな。そう自分に言い聞かせた。


 まだだ、と。


 歩調を気にしながら、更に距離を詰める。


 もう少し、あと少し、だ。




 今しか、ない。




 死神の鎌が俺の脳天を捉える寸前、踏み込んだ足で強かに地面を蹴る。その反動と膝のばねを連動させ、さっきよりも数段上の速度で残りの距離を詰め、死神に肉薄した。


 踏み込みが後ワンテンポでも遅れていれば、奴の狙い通り自分は魂を奪われていただろう。


 死神とて油断していたわけだはないだろうが、咄嗟のことに反応がほんの少しだけ遅れた。


 その隙をついて、踏み込みの勢いを短剣に乗せて奴の胸元を切りつけた。





 致命傷と言うのか何と言うのかはわからないが、とにかく効果はあったみたいだ。あの死神はその後、靄みたいになったまま王女様の体の中に帰って行ったよ。


 出てきた時みたいに無意識になるんじゃないかと一瞬不安になったけど、特に何か変わったことが起こった様子もなかった。


 今後どうなるか全くわからないが、少なくとも今この時点で再び彼女が襲われるということはないんじゃないだろうか。


 正直言ってこうも事がうまく運ぶなんて思ってなかった。だから死神が体に戻ってきて、うろたえながらも元気そうな彼女を見て本当にホッとしたよ。よほどのことがない限り、誰かの死神とはもう二度と戦いたいとは思わないね。


 とにかく、この戦いは終わったんだ。


 短剣を鞘に納めようとする前に彼女と目があったよ。



 笑顔だった。



 俺も笑顔を返したよ。告白の返事も気にはなったが、今は彼女を守り切ったって達成感やそのご褒美とばかりの彼女の笑顔をもっと味わってたかった。





 ……しばらくもしないうちに彼女が走ってこっちにやって来ていたんだ……。


 どさくさまぎれってのはちょっと不本意だが、走ってくる彼女をそのまま抱きしめたいと思ったよ。

だから、まずは短剣をどうにかしようと思ったんだ。


 でも、どっちの手にも短剣は握ってなかった。




 短剣は既に、鞘に納められていたんだ。


 訳が分からずにいるうちにも彼女が急いで俺の方にやってくる。








 笑顔じゃ、なかった。

告白編はここまでですが、話自体はまだ幾らか続きます。

しかしながら笑顔でないというのならば、一体何だと言うのでしょうか。

乞うご期待でお願いしますm(__)m



しかしながら終わり方がワンパ気味だなぁ……(-_-;)

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