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婚約破棄されたので、王子殿下に次の婚約者を探して差し上げましょう

作者: ふたーなる
掲載日:2026/11/03

「アデライード・ロシュフォール。お前との婚約を破棄する!」


王宮の夜会で、王太子レオニスはそう宣言した。


理由は、彼が愛する伯爵令嬢ミレイユを、アデライードが虐げたというものだった。


しかし、アデライードは驚かなかった。


「承知いたしました」


あまりにもあっさりした返事に、王太子は拍子抜けした顔をする。


「……それだけか?」


「はい。ところで、殿下」


アデライードは扇を閉じた。


「次の婚約者は、もうお決まりですか?」


「何?」


「王太子妃教育を受けた者が必要でしょう。王宮のしきたり、外交、貴族間の調整。私が担当していた仕事は少なくありません」


「そんなもの、ミレイユが覚えればよい!」


ミレイユは慌てて首を振った。


「わ、私は……そのような難しいことは……」


アデライードは微笑んだ。


「そうですか。では、殿下のご希望に合う方を探して差し上げましょう」


「余計なことをするな!」


「いいえ。婚約者を失った王太子殿下が、次の婚約者を見つけられないのは大変な問題ですもの」


こうして、アデライードは王太子の次の婚約者候補を探すことになった。


彼女が選んだのは、王宮の仕事を熟知した侯爵令嬢。


外交に優れた伯爵令嬢。


財務に明るい公爵令嬢。


どの候補も、王太子妃として申し分ない人物ばかりだった。


しかし、候補者たちは王太子との面談を終えるたびに、次々と辞退していく。


「殿下は、私の話を聞いてくださいませんでした」


「王太子妃の仕事を、すべて私に任せるおつもりのようです」


「……そもそも、あの方は王太子妃に何を求めていらっしゃるのでしょう?」


アデライードは、候補者たちの報告を聞きながら首を傾げた。


「困りましたわね。殿下のお好みを伺っても、ミレイユ様のような方としかお答えにならないのですもの」


一方、王太子は候補者が次々と辞退することに苛立っていた。


「なぜ誰も私の婚約者になろうとしないのだ!」


アデライードは答える。


「皆様、殿下のことをよく理解なさったのでしょう」


「どういう意味だ!」


「殿下の隣に立つことが、どれほど大変なのか、という意味ですわ」


そして、ついに最後の候補者との面談の日がやってきた。


王太子は、これまでの候補者たちのように断られることを恐れ、必死に笑顔を作った。


しかし、面談を終えた令嬢は、アデライードにこう告げた。


「申し訳ございません。私には、あの方を支えることはできません」


アデライードは深く頷いた。


「そうですか。では、これで候補者は全員辞退なさったことになりますわね」


王太子は顔を真っ赤にした。


「アデライード! お前は一体、何をしたのだ!」


彼女は微笑んだ。


「私は、殿下にふさわしい婚約者を探しただけですわ」


「ふざけるな!」


「ですが、殿下」


アデライードは、静かに言った。


「婚約破棄をなさったのは、殿下です」


王太子は言葉を失った。


アデライードは一礼し、王宮を後にする。


彼女の背後では、王太子が次の婚約者を探すために、慌ただしく側近たちへ指示を出していた。


けれど、もう彼女には関係ない。


婚約破棄された令嬢は、ようやく自分の人生を歩き始めたのだった。

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