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第四話
「それがどうかしまして?」
首を傾げ、まるで何が悪いのかわからないように微笑む。
そんな私の態度が、癪に障ったのだろう。
フェリクス殿下は更に声を荒らげた。
「どうかしまして、だと!?
自分が何をしたのかわかっていないのか!」
「あら…?」
私は扇を口元に添え、困った様に目を瞬かせる。
「だって私は公爵令嬢ですのよ?」
その言葉に会場がひくりと揺れた。
「男爵令嬢如きの娘に身の程を判らせるための振る舞いとしては、ごく当然のことをしたまでですわ」
扇の奥で、口角が僅かに上がる。
怒りなさい。
もっと感情を露わになさって。
この程度では、側妃にしてやるなどという生温い処分で終わってしまう。
私は背筋を伸ばし、前を見据える。
私の言葉に、フェリクス殿下の腕に縋る少女ーービビが、小さく体を強張らせた。
まるで今にも泣き出しそうに長い睫毛を伏せる。
その小さな仕草一つで、会場の空気が彼女を守る方向へと傾いていくのがわかった。
ーー見事なものだ。
私は扇の奥で、何の感情も浮かべないまま、ただその様子を見つめていた。
「このっ…!!」
フェリクス殿下が、一瞬我を忘れたのがはっきりとわかった。
そこへ冷静な声が割って入る。
「殿下」
ついに側妃殿下が口を開く。




