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第二話
陛下の挨拶が終わると同時に、フェリクス殿下が一歩前へ出た。
その動きは早く、そしてどこか待ちきれない様子だった。
「父上」
陛下を呼ぶ声には、誕生日の主役としての高揚が滲んでいる。
「皆の前で、どうしても伝えたいことがあります」
周囲が騒めく。
祝宴の席で語る言葉ではないことを、誰もが本能的に察していた。
――ああ、やはり。
今日という日を、選んだのね。
私は視線を玉座へと移した。
陛下の表情に浮かんでいたのは、驚きではなくーー諦観だった。
「構わぬ。本日の主役は、お前だ」
陛下の言葉はどこか投げやりに聞こえたが、言われた本人は嬉々とした表情で頷いている。
こちらを向いたフェリクス殿下の視線が私を捉えた。
「エリザベス・ローゼンベルク」
「はい」
名を呼ばれた私は、フェリクス殿下の側まで歩み寄り、淀みなく最高位の礼をとった。
「王国の小太陽、フェリクス殿下にご挨拶申し上げます」
周囲に騒めきはない。
誰もが、今から始まる“余興”を待っているのだ。
「ふん、白々しい」
フェリクス殿下は鼻で笑う。
「さっさと顔を上げろ。お前に伝えることがある」




