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第十六話
本日ラストまで投稿いたします。
最後までどうぞよろしくお願いします。
「嘘よ! そんなはずはないわ!」
衛兵に囚われたまま、髪を振り乱し身体を捻って逃れようとする側妃殿下へと視線を移す。目の前の現実を、どうしても受け入れられないのだろう。自らが描いてきた未来が、音を立てて崩れ落ちたことを。
「何が正当な王位継承者よ! 王位を継ぐのはフェリクスよ!」
唇を強く噛み締め、憎悪を孕んだ視線で、ヴィクトル殿下を睨みつける。
だが——
ヴィクトル殿下は、その視線を一度だけ受け止め、すぐに逸らした。
その横顔に浮かんでいたのは、怒りでも哀れみでもない。
——“無”。
「貴女が信じるか否かは問題ではありません」
低く、よく通る声。
「この紫の瞳が、すべてを物語っています」
感情を交えぬその言葉は、冷徹で、そして決定的だった。
「……もうよい。連れて行け」
陛下が静かに命じると、衛兵たちは側妃殿下と、その一族を引き立てていく。
——ヴィクトル殿下の存在を、最後まで見せつけるために。
尚も叫び、暴れる側妃殿下の姿を、私はただ、扇の奥から静かに見送った。




