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第十五話
「儂が長年、隠してきた“真実”だ」
その声音には、かすかに後悔が滲んでいる。しかし向けられた眼差しは、今日一番、優しかった。
——陛下が奪われたのは、王妃殿下だけではない。
ヴィクトル殿下と過ごすはずだった、
かけがえのない時間も……。
陛下はゆっくりと顔をあげる。
「王妃が遺した、ただ一人の子。そして――正当なる王位継承者」
会場全体に行き渡るよう、わずかに間を置いて。
「ヴィクトル・ゼノ・レガリア。我が息子よ」
次の瞬間、歓声が震え上がった。祝福と衝撃が入り混じったざわめきの中で、ただ一人――フェリクス殿下だけが、世界から切り離されたように立ち尽くしている。
「……う、そ……だろ……?……ビビ……?」
縋るように零れたその声に、彼――ヴィクトル殿下は、初めてほんの一瞬だけ視線を向けた。感情の読めない眼差し。そして、はっきりと首を横に振る。
「――“ビビ”は、どこにもいません。……兄上」
それは、あまりにも静かで、あまりにも残酷な宣告だった。




