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第十三話

本日の“余興”は、最骨頂を迎えていた。陛下のたった一言は、会場を揺るがすには十分すぎるほどだった。

――それもそのはず。

正当な後継者が、フェリクス殿下の連れてきた少女だと告げられたのだから。どよめきが渦を巻く中、私は思わず彼女へと視線を向けた。サラリと揺れる、淡く光を反射する銀髪。




この髪色も……見納めね




場違いなほど呑気な考えが、ふと頭をよぎる。フェリクス殿下を見上げると、彼は理解が追いつかないといった様子で、陛下とビビを交互に見つめていた。その表情は、怒りでも拒絶でもなく――混乱。




「陛下。発言の許可を、頂きたく存じます」




澄んだ声が、ざわめきを切り裂いた。ビビが、完璧な所作で最高位の礼(カーテシー)を披露する。その一連の動きに、会場の空気がわずかに変わったのを感じた。フェリクス殿下が、はっと息を呑む。

無理もない。

殿下の中でのビビは、天真爛漫で、どこか危なっかしくて、礼儀作法など縁のない無邪気な少女だったのだから。

――けれど。

男爵令嬢であっても、礼儀作法は叩き込まれる。学園に入る条件ですらあるのに。




どうして、それが「当たり前」だと思っていたのかしら。




「許す」




短く告げ、陛下は玉座へと腰を下ろされた。




「ありがとう存じます」




背筋を正したビビは、コツ、コツ、と静かな足音を響かせながら、再び壇上へと戻っていく。



……いよいよ、ね



私は息を詰め、視線を逸らさずに見守った。壇上に立ったビビが、くるりと周囲を見渡す。そして私を見つけ、その瞳が静かに細められた。その視線に、私は小さく頷いて応える。


次の瞬間――


パッと、そこに現れたのは。




黒髪紫眼の、男だった。

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