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第十二話

「……いいえ! いいえ!フェリクスは、陛下とわたくしの子でございます!!」




悲鳴にも似た叫びがホールに響いた。扇を失った手が宙を彷徨い、もはや取り繕う余裕すらない。


淑女はいかなる時も冷静であれ。


そう教えられてきたはずなのに、もはやその面影は残っていなかった。




「……もう、よい」




陛下の声は低く、静かだった。




「すべての証拠は揃っておる。王妃殺しの罪も……それ以外のすべてもな」




見透かすような視線で側妃殿下を見つめる陛下の表情は、怒りよりも深い――疲労と哀しみに満ちていた。




「衛兵」




その一声とともに、予め打ち合わせしていたのだろう、数名の衛兵が前へと進み出る。

側妃殿下、その一族、そしてフェリクス殿下を囲むその動きに、会場の空気が一段と冷えた。




「フェリクスよ」




名を呼ばれ、フェリクス殿下の肩が跳ねる。




「本日をもって、王位継承権を剥奪する。そなたは何も知らぬまま、母である側妃に利用されていただけだ。今後の処遇については、追って沙汰を待て」




フェリクス殿下は、膝から崩れ落ちた。だが次の瞬間、何かに縋るように顔を上げる。




「……しかし!私がいなくなれば、誰が王になるのですか!!」




――陛下の血を引いていないと、つい先ほど告げられたというのに。




私は思わず、小さく息を吐いた。そして、ほんのわずかに視線を横へ。その視線に気づいたのか、ビビが――静かに、しかし確信に満ちた微笑みをニコリと浮かべた。




「その心配は無用だ」




陛下の声が、はっきりと響く。




「正当な後継者は、生きておる」




どよめきが、波のように広がる。陛下の視線が、ある一点に注がれた。それを追ってフェリクス殿下も視線を向ける。




「……エリザベスが、正当な後継者だと……!?」




憎悪を隠そうともせず、こちらを睨みつけてくる。




(わたくし)は、ただの公爵令嬢でございますゆえ」




静かに首を振り、一歩だけ後ろへ下がった。




「フェリクス。そなたは本当に思い込みが激しいな」




陛下は、ため息混じりにそう言った。




「正当な後継者は――“ビビアン嬢”だ」

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