第十話
本日も3話更新です。
第八話からどうぞ。
「…父…か」
その言葉に、陛下は玉座から静かに立ち上がった。背筋が伸び、全身から王の威厳が迸る。
「何年もかけて、儂は証拠と証人を探し続けておった。…やっと、やっと見つけた」
その視線が、凍りついた側妃に向けられる。
「側妃よ。そしてその一族よ。よくも儂を謀ってくれたな」
鋭い眼差しが今度は側妃殿下を射抜く。会場に張り詰めた空気がさらに鋭く、重くなる。
「な、なんのことで、ございましょうか…」
側妃殿下は、陛下の怒りを目の当たりにし、顔が青ざめ、焦りを隠せない。当時を思い出しているのか、陛下の表情が歪む。
「王妃しか愛さぬ儂が、酔った勢いでそなたを襲ったこと。いまだに信じられぬ。それだけでなく、子を孕み、産み落とした…」
苦痛を堪える声音で、淡々と語る陛下はとても悩んでおられたのだろう。
「生まれた子は王子。だが金髪碧眼、王家の紫の瞳を持たぬ」
冷静に事実を指摘するその口調に、側妃の血の気が引いていく。
「本当に儂の子か?疑い続ける日々を過ごした」
フェリクス殿下を見つめながら、静かだが胸を締め付けられる響きを持っていた。フェリクス殿下は青ざめたまま、初めて聞く事実に驚いた様子だった。
「そして最愛の王妃と共に子までも奪われた…」
会場は沈黙し、王座を囲むすべての者が、その一言一言に息を呑んだ。




