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第21話 公開裁判~断罪の時~ 後編

「別に……」

「いや、『別に』って……」




 継母のアナスタシアは上品な顔を蒼白にさせながらも、しらを切る気満々だった。




 わたしは彼らの態度に心の底から呆れ返った。



 彼らがリリアナの暴挙をすべて知っていたとは言わない。



 だが、リリアナがわたしを虐げていたこと、そして、わたしとレオナルドの婚約関係に亀裂が入っていたことは、知っていたはずだ。



 それでも、彼らはリリアナを溺愛し、わたしを顧みなかった。

 その結果が今のこの状況なのだと考えると、同情はできない。



「王子の婚約者を貶めるなど、言語道断!」

「卑劣な真似を! 許せるものか!」



 民衆の間から、激しい怒号が沸き起こる。



 彼らはリリアナたちのしらを切る態度に激しく憤慨しているようだった。




「民衆のクセに生意気ですわね」




 浴びせられる罵声に精神的に追い詰められるレオナルドたちであったが、リリアナだけはまだまだ抵抗する気が残っていた。



(ここまでくると才能ね……)



「はぁ……」

「ユリウスさま?」



 思わず大き目のため息を漏らすユリウスさま。

 何事かと視線を向けると、すでに彼はその場で立ち上がろうとしていた。



「殿下、なにか意見でも?」



 ユリウスさまは彼らの態度を冷めた目で一瞥すると、静かに、そして、明確な声で言った。




「愚かな茶番は、終わりだ」




 彼の言葉に広場がぴたりと静まる。

 ユリウスさまはアルベルトさまとルイスさまに目配せをした。



「「は!」」



 2人の側近が素早く壇上に上がり、何枚もの書類を裁判官に提出する。



「これがリリアナ・フォン・カーライルが虚偽の証言をさせた侍女たちに支払った金銭の記録。そして、匿名の密告書をばらまかせた際の指示書だ」

「ちょっ、なんでバレているのですの――――あっ」



 アルベルトさまの声がはっきりと響き渡ると同時に、口元を押さえるリリアナ。

 口は禍の元だと言うが、今がまさに禍をもたらすきっかけだったようだ。



(これまでも禍をもたらしてはいたのだけれど……)



「さらにレオナルド・アルバレストがこの企みに加担した証拠もすべて揃っております」

「ちょ、ちょっと。待ってください!」



 ルイスさまが淡々と証拠を読み上げていく。



 そこにはリリアナとレオナルドが交わした手紙、秘密裏に会合を重ねた場所の記録、そして、侍女たちへの具体的な指示内容まで、すべてが詳細に記されていた。





 決定的な証拠の前にリリアナの顔は絶望に歪んだ。





「――――くっ……」

「うわああああ……」


 レオナルドもまた、全身の力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。


 父と継母は信じられないものを見たかのように、目を見開いている。




 彼らの抵抗は完全に打ち砕かれた。




「セレナ・ローゼリア・フォン・カーライルさまへの一連の不正行為はリリアナ・フォン・カーライル、レオナルド・アルバレストが主犯であると認定する!」


 裁判官の声が広場に響き渡った。



「そして、セレナさまの身に覚えのない過去の噂はすべて捏造されたものであると、ここに宣言する!」



 民衆の間から、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。



「やっぱりセレナさまが正しかったんだ!」

「まさか、王子の婚約者を貶めようとするとは! 許せない!」

「セレナさまは本当に可哀そうに……!」




 民衆は掌を返すようにわたしを憐れみ、擁護する声を上げた。




「市民というのは調子がいいな。噂が流れた段階ではお前を誹謗していたのに、今では賛美している」


 ユリウスさまがわたしの耳元で小さく囁いた。



「ふふっ……」




 その言葉にわたしは思わず微笑んだ。



 彼の言う通りだ。

 民衆は常に真実を知る機会を与えられない。

 だからこそ、表面的な情報に踊らされやすい。



「ええ。ですが、彼らが真実を知ったことは、喜ばしいことです」



 わたしは彼らに憎しみを抱いてはいない。



 ただ、真実が明らかになったことに安堵を感じた。



「わたしへの誹謗は構いません。ですが、この国の未来のためにも、彼らの罪は正しく裁かれるべきです」



 わたしはそう言って、父と継母、そしてリリアナとレオナルドに視線を向けた。



 彼らの行いはわたし個人への恨みだけではない。

 王家の名誉を傷つけ、この国の秩序を乱そうとした罪だ。



 ユリウスさまは国王陛下に視線を向けた。

 国王陛下は大きく頷き、再び民衆に語りかけた。



「よって、本日、この場において、セレナ・ローゼリア・フォン・カーライル嬢がこの王家の未来を担うにふさわしい、真の婚約者であることを宣言する!」



 国王陛下の言葉に民衆の拍手喝采は最高潮に達した。

 彼らはわたしとユリウスさまを熱狂的に支持してくれている。



「これで一段落……となればいいのですが」



 わたしはユリウスさまにそっと囁いた。


 彼もまた、小さく頷く。


「ああ。だが、油断はできない。結局、レオナルドが王宮に侵入した経路もよくわかっていない。それに彼らの罪は膨大だ。正式な最終判断は後日改めて下すことになるだろう」



 ユリウスさまはそう言って、わたしの手を強く握りしめた。

 彼の瞳にはまだ、深い決意の光が宿っている。



 この裁判はまだ序章に過ぎない。



 この国の未来を賭けた戦いはまだ続くのだ。

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※この作品はカクヨムでも連載しています。

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