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第8話 魔物との初戦闘


「「ガァルル!」」


「キシャッ!」


 俺は短剣を引き抜いて魔物たちに向かって駆け出した。その瞬間、これまでと違う体の動きに驚きを隠せずにいた。


 え? 体が軽過ぎないか?


地面を蹴る度に加速していくような感覚を前に、俺は自分の素早さが上昇していることを肌で感じた。


小走りをしている感覚でここまでスピードがでるのかよ……これが、『妖狐の鎖』の影響か。


 そして、すぐに魔物との距離が詰まったことに驚いたのは、俺だけではなかったらしい。


「「ガッ⁉」」


「ギャッ⁉」


 魔物たちは突然詰められてしまった距離にどうすればいいのか分からず困惑している。


 俺は不意を突かれた魔物たちの隙を逃さないよう、短剣を一匹のウルフに向かって振り下ろす。


「くらえ!」


 シュンッ……ザシュッ!


 すると、俺が短剣を振り下ろしたウルフの体が真っ二つに割れて、ずるっと地面に落ちた。


 あれ? なんか豆腐を切るときみたいに簡単に切れた感覚だったんだけど、今の一撃で骨も斬り落としたのか?


 あまりにも斬った感触がなさすぎて、短剣についた血を見るまで魔物を斬ったという実感が湧かいてこなかった。


 真っ二つになっている魔物を見ていると、魔物から黒い霧が発生してきた。そして、ガラスが割れるような音が聞こえた瞬間ウルフの体が砕けて、こつんと小さな魔石とまとまった肉片が落ちてきた。


 そうだった。この世界では魔物を倒すと魔物は魔石と素材に分かれてドロップするんだったな。


 それにしても、魔物を倒すと素材とか魔石がドロップするってどんな原理なんだ?


「ギャッ!」


「うおっと」


 俺が首を傾げて考えていると、隙をつくようにゴブリンが手にしている棍棒で俺に殴りかかってきた。


 俺はいきなりの攻撃に少し驚いて、短剣を構えるのが遅れた。しかし、ゴブリンの攻撃がやけに遅く感じたので、問題なくその攻撃をひらりとかわすことができた。


「ギャ?」


 あれだな。かわさなくてよくても、反射的に殴られるとかわしてしまうものなんだな。


 ……そういえば、今の俺なら武器を使わなくても攻撃は入るんだよな?


 俺はそんなことを考えながら、棍棒の攻撃をかわされてふらふらと近づいてきたゴブリンをみて、何となく裏拳を入れてみることにした。


「ほっ」


 メリメリッ……バガンッ!


「ギャ⁉」


 すると、俺の裏拳を顔面に食らったゴブリンは骨をきしませる音を立てた後、後方にぶっ飛んで体を地面に叩きつけてしまった。


「おお、また軽く飛んでいったなぁ」


 俺はそう呟きながら両指に数個ずつ着けている指輪を見る。


 ただでさえ攻撃力や防御力、素早さを上げている『妖狐の鎖』とは別に、いくつかの呪物も着けて色んな能力を向上させている。


 ゲームの中以外で戦いなんかしたことないというのに、ここまで簡単に魔物を屠れるとは思いもしなかった。


「ガ、ガルルッ!」


「おっと、仲間がやれても突っ込んでくるだな」


 すると、もう一体のウルフが俺に向かって突っ込んできた。そしてそのまま、鋭い牙で俺の腕に噛みついてこようとしてきた。


 俺は一瞬その攻撃を避けようとして、自分がHPを削られないということを思い出してピタッと避ける動きを止めた。


 そして、逆に短剣を握っていない左手をウルフに差し出すことにした。


「お、おい、ノーン!」


 ガンナの焦る声を聞きながら動かないでいると、ウルフが俺の左手めがけて噛みついてきた。


「ガルルルッ、ガル、が、ガル?」


「やっぱりノーダメージだよな。まぁ、防御力も強化されてる状態だし、攻撃が入るわけがないか……よっと!」


 俺はウルフの攻撃が効かないことを確認してから、噛みつかれた腕ごと近くにあった壁に叩きつけた。


 ドガッ!


「ギャワンッ!」


 ウルフはいきなり壁に叩きつけられると思っていなかったのか、顔面から壁に叩きつけられ、悲鳴のような鳴き声を漏らして力なくその場に倒れ込んだ。


 おお、顔面がへこんでやがる。


 俺はさっき裏拳を当てたゴブリンがドロップした肉塊と小さな魔石を確認してから、壁に叩きつけたウルフが素材をドロップするのを待った。


不意に視線に入ったガンナの方に戻ると、ガンナは顔を引きつらせていた。


「いやいや、バーサーカーかよ」


 いや、バーサーカーって。俺ただのモブNPCだぞ。


 俺はそう思いながらも、戦いが終わった後の惨状を見て、ガンナの言葉を強く否定できずにいたのだった。


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