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第20話 下層へと続く道中


「ちょっと、待ちなさい」


 それから、『ゴエティアの迷宮』の下層を目指して魔物を倒して進んでいる道中、ソフィアがじろっと俺を見てきた。なんだろうかと思っていると、ソフィアは呆れの混じったような目でさっき倒したばかりの魔物をちらっと見る。


「ノーン、あなたさすがに強すぎない?」


「えっと、お褒めに預かり光栄です?」


「そうじゃなくて! あなた私と同い年くらいよね? なんでその歳で成人してる冒険者たちより強いのよ!」


 俺が首を傾げていると、ソフィアは前のめりになりながら詰め寄ってきた。どうやら、色んな魔物との戦いを見ているうちに俺の強さが異常なものだと気づいたらしい。


 ガンナとモナも一緒にダンジョンに潜っているうちに、冒険者としては他の冒険者と数段レベルが違うくらい強くなっているのだが、それでも目立ってしまっていたようだ。


 すると、ソフィアは俺の手を掴んで俺の手をじぃっと見てから顔を上げる。


「それに、さっき魔物の攻撃当たってたわよね? それなのに、かすり傷一つ付いてないじゃない」


「えーと」


 ソフィアに言われた個所をちらっと確認してみると、確かに魔物の大きな爪でひっかかれた場所に傷一つついていなかった。


 確かに、不自然すぎるよな。


 ……まぁ、別に隠している訳でもないし、言ってしまっても構わないか。


「俺って攻撃が入らないんだよ。体質的にね」


「攻撃が入らない? どういうこと?」


 ソフィアは俺の言葉を聞いてきょとんと首を傾げた。まぁ、普通じゃありえないことだから、一言で全てを理解しろと言うのは無理だろう。


 それから、俺はソフィアにガンナたちにした時と同じような説明をしたのだった。




「そんなことって本当にあるの?」


「さっき魔物の攻撃を食らったのに、なんともなってないの見たでしょ?」


「そうだけど……進んで呪物を着ける人なんていたのね」


 ソフィアは不思議なものを見るように俺の指や腕、耳に着けている呪物を見ている。やけに真剣に見ているのは、自身も呪物を着けているからだろうか?


 すると、しばらく俺を見ていたソフィアがじろっと俺のことを軽く睨む。


「ねぇ、あなたそんなに強さを求めてどうする気?」


「ふむ。そんなに俺のことが気になるの?」


 俺がソフィアの言葉を脳内で変換して聞き返すと、ソフィアは顔を真っ赤にさせて首を横に振る。


「そうじゃない! 隣国に危険分子がいないか把握しておくことは大切でしょ! 答えないさい、これは命令よ!」


 ソフィアはそう言うと、ピシッと俺を指さしてさっきよりも強く睨んできた。ごもっともな言葉だけに、この言葉はどうも本心で言っているような気がした。


 俺は少し考える素振りをしてから、隠す必要もないかと思い続ける。


「この世界を満喫したい。まぁ、『シュルドワーロック学園』に入学するのが直近の目標かな?」


「『シュルドワーロック学園』? あなた貴族ではないわよね……もしかして、あなた庶民からの特別枠狙い?」


「そうなるね。優秀な学生なら特別枠として庶民でも入れるみたいだからさ」


 ここ数年の間で、俺は作中で主人公たちが通っていた学校のことを色々と調べていた。その情報によると、主人公たちが通っていた『シュルドワーロック学園』は貴族しか通えない学園かと思ったが、入学試験で力を示せれば平民でも特別枠として通うことができるらしい。


 このゲーム世界を堪能するためにも、主人公たちが通っていた学園には通ってみたいし、学園に入れる年齢になったら入学試験を受けるつもりだ。


 魔法具の使用について制限はないとのことなので、呪物を使いまくればきっとその試験も突破できるはず。


「ふーん……あっそ。それじゃあ、その学校にだけは絶対に入学しないようにしないとね。間違えないようにしないと」


 すると、ソフィアは考える素振りをしてから、ツンとした態度で俺から顔を背けた。


 なるほど、分かりやすいツンデレだな。


俺は意味ありげな発言とテンプレなソフィアの反応を前に、思わず顔をにやけさせてしまった。


「ああ。入学式で会えるのを楽しみにしてるよ」


「だ、だからっ、入学しないって言ってるじゃない!」


 俺がそう言うと、ソフィアは分かりやすく顔を赤くさせた。そんなやり取りをしながらダンジョンを進んでいくと、目的の下層にあるワープがある部屋の前までたどり着いた。


 部屋には重厚で大きな扉があり、これまでに入ってきた小部屋や隠し部屋とは大きく違っていた。


「この部屋は初めて見たね」


「ああ。いつもこっちに来ないで下の階に言ってたからな」


 モナとガンナが興味深そうに扉を見ていると、ソフィアが信じられないようなモノを見るような目を二人に向ける。


「い、いつもって」


 まぁ、最下層に何度も行っている人間と、ほとんど初めてダンジョンに入った人間の反応に違いがあるのは当然か。


 俺はそんな三人の反応を見てから、重厚な扉を両手でぐっと押す。


「それじゃあ、この部屋にいる魔物を倒してワープを使わせてもらおうか」


 俺はそう言って、ワープの施設への侵入を妨げている魔物と戦うために重厚な扉を開けるのだった。


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