第11話 進化する呪物と魔法の修業
俺たちはダンジョンで手に入れたアイテムを換金した後、モナのいる露天商へと向かった。モナには色々と貸してもらったので、お礼の意味でいくらか換金したお金を渡してから、『吸血鬼の腕輪』について調べてもらうことにした。
モナさんは気乗りしない様子で俺に手渡された『吸血鬼の腕輪』を受け取ったが、何か分かったのかすぐに目を見開いた。
「……これ、ただの『吸血鬼の腕輪』じゃなくなってるね」
「ただの『吸血鬼の腕輪』じゃない?」
見た目はゲームで見た『吸血鬼の腕輪』そのものだったので、俺は首を傾げてしまった。すると、モナは腕輪の内側についている宝石を指さした。
「普通の『吸血鬼の腕輪』は、この宝石がもっと赤黒いんだよ。こんな澄んだ赤い色のは見たことがないね」
「あれ? 本当だ。確か、拾った時は赤黒かったんですけど……色が変わった?」
俺はモナに指摘されて、『吸血鬼の腕輪』が澄んだ赤色をしていたことに初めて気がついた。
え、なんで色が変わってるんだ?
それから、俺は『吸血鬼の腕輪』を拾った時の状況や、試しに使った時の威力などをモナに話した。すると、モナは一通り話を聞き終えてから、納得したように頷く。
「なるほど。多分、呪物が覚醒したんだね」
「覚醒? え、呪物にそんな機能ありましたっけ?」
俺は思いもしなかった言葉を受けて、間の抜けたような声を漏らした。
ゲームでほとんどの呪物を集めたはずだが、そんな機能のある呪物の存在は知らない。ネットでもそんな記述を見た記憶もない。
俺が眉間にしわを寄せると、モナは小さくため息を漏らして続ける。
「『特別な呪物は使う度に、本来の力を取り戻していく』。ただの噂だと思っていたけど、聞いた話と今の状況から考えると、その可能性が高いだろうね」
「使う度に……なるほど、そういえば今まで呪物は使ったことなかったです」
俺はモナの言葉を聞いて、なるほどと頷く。
確かに、いくら呪物を集めていたと言っても、ゲーム越しに観賞用として集めていただけだ。実際に使ったときに何が起こるのかは全く知らない。
まさか、そんなギミックで進化する代物だったとは思いもしなかったな。
いや、というか呪物を酷使する奴なんか俺以外いないんじゃないか?
「ていうか、当たり前かもしれませんけど、モナさん呪物の知識量凄いですね」
「別に、大したことじゃないさ。それよりも、魔物に会う度に全力で『魔力波』を撃つんじゃないよ? 全力で撃ってダンジョンの中で生き埋めになっても知らないからね」
「そうしたいんですけど、いまいち『魔力波』の調整ができないんですよね。魔法って使うの初めてで」
「初めてって……ああ、そうだったね。ノーンはMPがないんだったね」
モナは思い出すようにそう言ってから、唸るようにして考えていた。それから、小さく頷いて俺を見上げる。
「仕方ない。少しだけ魔法について教えてあげるよ。ついてきな」
「え? いいんですか?」
「かまわないよ。どうせ、客なんて来ないんだからね」
モナはそう言うと、手際よく店の片づけをして俺たちを茂みの奥へと案内してくれた。
「ここは?」
モナに案内された場所は茂みを抜けた先には少し開けた場所だった。いくつかの木々の枝が不自然な折れ方をしていたり、幹に傷跡が付けられたりしている。
これが魔物によるものだったら、ガンナがいち早く警戒態勢をとはずなのだが、ガンナはなんとも気まずそうな顔をしている。
一体、どういうことだろうか?
俺がそう考えていると、ガンナが言いづらそうに口を開く。
「モナ。おまえ魔力を通す回路がおかしくなったのに、まだ魔法の修業続けてるのか」
「うるさいね。習慣になっていたんだから仕方がないだろ。あんただって似たような物だろうに……というか、今は私のことはどうでもいいんだよ」
モナはぷいっと顔を逸らしてそう言ってから、咳ばらいをしてぴんっと指を立てる。
「ノーン、まずは魔法の基本的なことから教えてあげるよ。魔法はMPを消費して使うことができる。基本的に魔法はレベルアップで覚えるか、熟練度を上げることで会得できる。ここまでは知っているかい?」
「はい。あくまで、知識程度ですけど」
『月夜に浮かぶ乙女の魔法』では、基本的に魔物と戦って経験値を溜めていけば、レベルアップ時にジョブに合った魔法やスキルを覚えることができる。レベルアップ以外でしか覚えられない魔法やスキルを覚えたいとき、一定の修練を積むことでも魔法やスキルを覚えることができる。
当然、このゲームをやり尽くしていた俺が知らないわけがない。
モナは俺の返答を受けて、ふむと頷いて続ける。
「じゃあ、熟練度次第で新たな魔法をつくることができることも知っているかい?」
「魔法を作れる? そんなことができるんですか?」
俺は初めて聞いた設定を前に目をぱちくりとさせる。モナはそんな俺の反応を見て、得意げに笑みを浮かべる。
「できるよ。まぁ、ただ誰もやらないってだけさ。見せた方が早いね」
モナはそう言うと、右の手のひらをじっと見つめて『火魂』と魔法を唱える。すると、モナの手のひらに人魂のようなものが形成された。
それから、モナはその人魂のようなモノの大きさを変えたり、手のひらでくるくると回したりし始めた。
「おおっ、魔法ってこんなに自在に操れるんですね」
「実はそうなんだよ。大きさをかえたり、速度と密度、硬さを変えたりすれば、それは本来の『火魂』とは別の魔法になるって訳さ。まぁ、『火魂』で余分にMPを消費するくらいなら、上位互換の『火炎魂』とかを使った方が利口だけどね」
「なるほど。誰もやらないって言うのは、そういうことですか」
「でも、『火炎魂』を使えないものにとっては、これは『火炎魂』と対抗できる手段でもあるんだよ」
モナは真剣な顔でそう言って、『火魂』勢いよく回して近くにあった木に打ち込んだ。すると、『火魂』を打ち込まれた木の幹には、ただの『火魂』ではつかないような焦げ跡が刻まれた。
「ノーン、あんたが修行をするなら、少しくらい手伝ってやってもいいよ」
「え? いいんですか?」
「構わないよ。というか、少し『魔力波』の使い方を教えるだけだよ。あとは、自分で考えて熟練度を上げな」
俺は思いもしなかった提案に一瞬躊躇ったが、ゲームではできなかった新しい魔法を作るという魅力に心を引かれた。
そうだ。元々、ゲーム世界を堪能するために俺は強さを求めたのだ。それなら、この提案を受け入れないなんて選択はない。
俺はそう考えて、きゅっと拳を握って覚悟を決める。
「分かりました。モナさん、よろしくお願いします!」
こうして、俺は数週間の間、モナに魔法のイロハを教わることになった。
それから数週間の修業をした後、俺はまた『ゴエティアの迷宮』に挑むことになったのだった。
『魔力波』の新しい使い方、それを無事会得してから。
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