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村祭り

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 大学の民俗学を学んでた時、卒業研究でとある田舎の村の神社の祭神を調べたことがある。祭神は既知のものでは無く、独自の氏神様で村人から厚く信仰されていた。そこで、年に一回のお祭りがあると聞き、参加したいと言ったが断られた。


「よそ者はぁ、見るのもダメだってぇ」

「そこをなんとか」


 知られてない独自の祭りを論文に出来ればA++を貰えるはず。そう思ってしつこくお願いしたが、にべもなく断れてしまった。


 僕は村人には悪いが隠れて見ることにした。


 その夜が来た。村人はご神体を担ぎ蓑をかぶって「ホーエ、ホーエ」と言いながら神社から出てくる。ご神体を村の中心に安置するとゆっくりと踊り始めた。


 カメラを回して録画する。


 と、夜空から光がご神体に降ってきた。光の元に視線を向けたが特に何も無い。オリオン座が見えたが、そもそもオリオン座はでかいので場所が特定できない。


 同時に地面が揺れた。震度3程度の地震。

 これは凄い。僕は夢中になって見守った。


 ご神体が麒麟に変わった。アフリカのキリンではなく、中国の伝説の麒麟に近いといったらいいだろうか。


 麒麟は嘶き、光は強くなった。多分、村を祝福しているのだと思う。

 と、僕の肩にポンと背後から叩かれるのを感じて飛び上がった。


 数人の村人が難しい顔をして立っていた。

「あっ、こ、これは……」

「兄ちゃん、見たらアカンと言っただろ。こうなったら覚悟してくれないと困るね」

「す、すみません」

 そのまま、神主の元に連れ出された。


「なんということを。死ぬか、仲間になるかどちらかを選んでほしい」

 殺される? とんでもない。仲間になるしか無かった。


 麒麟は尻尾の毛をシュルシュルと縛の足首に巻き付けた。どうやら、足かせのようなものらしい。


「もう、この村から出られない。まあ、心配するな。衣食住には困らんし、妻もほれ、ウチの村の中学生の聡子ちゃんと結婚すれば良い。わしらも外から血が入らないと困るんでね。ちょうど良かった」

 神主は言った。


 麒麟は光を失うと同時に、石のご神体に戻り神社へと運ばれた。

 明日は祝言があるという。僕と聡子ちゃんの。


「なに、すぐになじむさ。日が落ちるまでは村外にでられるしね。そう悪くない。聡子ちゃんも君のこと好きみたいだったし」


 村人は言った。僕は大学卒業できないのが心残りだった。

全ての著作権は私、葉沢敬一にあり、勝手な書籍化、マンガ化、ドラマ化、映画化などは禁止します。

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