どうも俺だけ三日月の日らしいのだが……
「ぐわぁ!! うが!! ま、またか……ぬぁ……が、がぁぁぁぁぁ!!」
それを見た瞬間、何かが俺の中に入ってくるような感覚が貫き、痛みを感じ始めた次の瞬間に俺の姿は変わり始めた。
「が、がおぉらぁぁ……(ま、またかよ……)」
痛みが引いた時には辺りは真っ暗で、見上げると星がらんらんと輝く夜になっていた。
「がぁうぅ……(帰るか……)」
ぼんやりと星空と三日月を眺めるとこ数分。重い腰を「よっこらしょ」と持ち上げ、黒い毛をふさふさとさせた太い脚を動かし始めた。
街の中は、意外と整備が進められ、街の遠く、そのまた遠く反対側の場所で獲れるようになった『魔法石』なる物のおかげで発展し、真っ暗で夜になれば誰もが家の中から外に出る事なんて無かった夜だが、魔法石を使う事で光を作り出すことが出来るようになると、夜の活気ともいうべき姿をみせ始めた。
そんな活気あふれる街の中へとのしのしと歩いて入っていく。
「おう!! ガウロじゃねぇか!! あはは。その恰好またいつものやつかい?」
「がうがう。(そうなんだよ)」
家の手前にある飲み屋の店主、マリウラが俺の姿を見て声を掛けてくれた。
「あんたその姿の時にもしゃべれるようにならないと、討伐されちまうよ?」
「がう? が、ガウガウがぁ……。(討伐? そ、それはやだなぁ……)」
「いや、昔からアンタを知ってるこの辺のやつはいいけどな。他の町とかじゃ生きて行けるかどうか……」
「がうがう!! がうがぁ!!(ありがとう!! 頑張るよ!!)」
「あはは!! なに言ってるか分んねぇけど、礼は態度で分かるぜ。しかし……」
身振り手振りで気持ちを伝えると、マリウラが自慢の顎髭をさすりながら俺の方を見つめる。
「がうぅ? (なんだよ?)」
「いやね、聞いた事は有るんだ。満月を見ると変身してしまう一族が居るって話は。でもそのお話では大抵狼になるって話なんだが……」
「…………」
マリウラが再度俺の事を足先から頭の先、たぶんピコピコ動く耳の先までみている。
「どうしてガウロはその……」
「…………」
「クマなんだい?」
「がうわぁ!! (知るかぁ!!)」
そう。
マリウラが言うように、俺の体はずんぐりむっくりな姿をしていた。
そして――。
「まぁその首周りの模様が可愛いからいいんじゃね?」
などとヤツはのたまう。
俺は他のやつと違い、狼になる事も無く、首周りに真っ白な毛で『三日月模様』が出来上がるクマに変身するみたいなのだ。
お読み頂いた皆様に感謝を!!
本当は自己企画用の作品で書きたいものが書けないので、気分を変える為に執筆!!
『なろうラジオ大賞5』に参戦第2弾です。
ちょっと思考していたら想い浮んでしまったので、仕方ないんです(笑)
※2023,12,13 後半ちょっと加筆。