【第113話】モチモアのソウルジャーニー その1
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時は少し前に遡る。一仕事を終えた後の突如襲ってきた災難、それに遇った男。モチモア。
あの男は声すら出せず、そして痛みすら感じずに、そして思い人に最後の1言が言えずにいた。半分になった視界に最後に映ったのは、自身の血で濡れた甲板だった。
…。
(くそう ・・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんだここは」
熱い。鉄板の上にモチモアは居た。
辺りを見渡すと、赤とオレンジに輝いた洞窟のような壁面が遠くに見える。それはぐるっとモチモアのいる場所を中心にして囲んでいた。
そして天井を見上げても壁が続き、終わりが見えない。下を覗くと壁よりも明るい紅く白い光の海が遥かかなたに広がっているのが分かる。
足を立たせるここは、小部屋だった。小部屋といっても洒落たもんじゃない、黒い鉄の柵が自身を取り囲むようにして立ち、床も鉄だ。
鉄が熱を帯びている。立ったままでは足が焦げそうなほどだった。
手で柵の棒を掴むも、同じく熱く、長くは持っていられない。
自分の恰好は、あの時、覚えている。最後を迎えた時のままの姿であった。
(どういうことだ ・・・)
この場所に見覚えなんてない。初めて来た場所なのは明らか。ただ1つ思う事柄は監獄、それが地獄だという認識はまだできてはいない。
だって悪い事なんてした覚えはない。俺様は真っすぐに生きただけだ。
(暑い ・・・)
しかし、やはりこの暑さは地獄なんじゃないか。そう思わずにはいられなかった。
呼吸を整え、鉄格子から外の様子を確認していく。
(あっ ・・・)
今まで見えてこなかった光景が目に映り込んでくる。
「「ブラナンっ!!!」」
自分と同じように、宙づりになっている牢獄の中にいる彼の姿だった。そしてその先も周りにも何個もの牢獄があり、そしてその中に入る人々がいるのに気が付く。
「「おいっ!! こっちだ! 返事しろ!」」
…。
そう何度も呼びかけたが彼の元にその声は届いていないようだった。
彼は静かに座り込み、足元の鉄板を見つめたままだった。
彼も自分と同じく理由も分からずに項垂れているような様子だった。
しかし、
( ・・・ )
彼の居る牢獄の下から丸い光のようなものが現れ、彼の所まで上がっていくのが見えた。
するとブラナンが立ち上がり、その光と接触をしている。
(なんだ ・・・ あれ)
目を凝らしてその光の中を確認する。
「「シオナ!? ・・・ おい!!! モチモアだ!」」
彼らに向けてそう叫んだ。
しかし彼らはモチモアの声を聞く気がないようで、楽しそうに会話をしている。
「「おい!! こっちもみろーーー!! なっ ・・・」
一瞬彼の居る牢獄が「パァ」と光を出すとそれが白い光のまま崩れ出した。シオナの周りの光は翼のようになっており、片手でブラナンの手を持つとそのまま下に向かって行った。
『シュルシュル』
彼の牢獄をつっていた鎖が上空の見えない所にまで巻き戻っていった。
…。
モチモアは置いてけぼりをくらっていた。
(ちぇ なんなんだよ ・・・)
…。
しばらくの間何もしなかった。
(なんなんだよ ・・・ ったく)
ただ暑いだけのこの場所にも少し慣れ始めていた頃だ。
別に狭くて、そして暑くても特にそれに対して苛立つような、そういった物は内側からは出てこない。意外と居心地は悪い所ではないように彼は思えてきていた。
だが、1つだけきちんと残る思いはあった。しかし、それが何なのか思い出せない。
一息いれ、また鉄格子を掴む。
ブラナンが居た方向とは別の方向を覗く。するとそこに今まであったかどうか定かではないがブラナンの監獄よりも近くに、声が届きそうなほど近くに、牢獄がぶら下がっていた。
中に入っているのは青年。自分と同い年くらいに見える。そいつの恰好はかなりラフ、Tシャツ短パン姿で年季が入ってボロボロ、足には片方だけサンダルが履かれていた。
「「おい!! 聞こえるか!!」」
そう声を上げると彼はムクッと立ち上がり、ケンケンで自分の方に足を運んできた。
やっと話ができるやつが居た。
「何者だ」
彼はそう自分を睨むようにして言ってくる。
「モチモアってんだ なんなんだここは?」
そう言うと彼は自分から視線を剥し、つまらなそうに監獄を右往左往していた。
「「おい!」」」
シカトをくらったのでそう叫ぶ。
「何だよ ・・・ 知らないよここが何かなんて興味ない」
「俺より先に居たんだろ? 何か教えてくれ!」
「ああ ・・・ 随分長い事いるなぁ ・・・」
そう喋ると青年だった彼は年寄りの姿に変貌していく。急に腰が折れ、髪が伸びていく様子が気味が悪かった。
「腹へったなぁ ・・・ ああ ・・・ お前酒は持ってるのか」
「ねぇよそんなもの お前 ・・・」
「んー?」
そのやり取りの後彼の顔が急に見覚えのある奴に変化した気がした。それがどいつだか詳しくは忘れたが、おそらく……。
クイと顎を突き出し、口元を上に上げ自分を睨む目にモチモアは恐怖を感じた。
「ここから出せ ・・・ お前だろ ・・・ 俺をここに連れて来たのは」
「さぁてどうだったかなぁ よく覚えてない ・・・ しかし」
「しかし? なんだ!」
「なぜ出たがる?」
なぜってそりゃそうだろう、せっかく掴んだチャンスだったじゃないか。ん?
…。
そうだよ、思い出した。なんでこんな大事なこと思い出せなかったんだ。馬鹿野郎。
その時、一瞬だが鉄格子の1部と周囲の壁の光景が揺らいだ。そこに何かがあるのが分かった。
「出てやるぞ このくそサメ野郎」
「 ・・・ 」
その言葉がなぜ出たのかは謎だったが、なぜかそう言えて気分が良くなった。揺らいだ鉄格子を手で確認すると何かを持った感触があった。
『ガチャ』
(開いた ・・・)
地獄のような景色の中に暗い隙間が開くドアの隙間から見えてくる。
「じゃあな」
「 ・・・ おい サケ 」
男を無視しそのまま暗闇の中に足を入れた。
…。
『ペタペタ ペタ』
目が慣れるまで少しの時間を要した。
暗い冷たい石レンガ作りの小道を、手探りで壁を伝って進んでいった。
(寒い ・・・ )
体がまだこの寒さに慣れていない、先ほどとは真逆の環境。ブルブルと体を震わせてしまう。
進んでいる内に何個もの、モチモアが先ほど開けたドアと同じ特徴のドアがあった。それを開けようと試みたが、あちら側からでしか開かないようだ。ドアノブすらついておらず、それができなかった。
そのドアの内側からは人のため息や唸るような声が聞こえてくる。それらの声もまた身震いを誘う。
足を進めるうちに先のほうに明かりが見えてくる。登り階段だった。
それに向かってペタペタと走っていく。次第に寒さは感じられなくなっていった。
…。
『『ザワザワザワ』』
階段を登り、見えた光景はまたしても初めて見るものであった。
豪華なパーティー会場。広い空間、高い天井にはシャンデリアが何個も吊るされ、体育館のように檀上も存在した。
そしてその会場には白い豪華なテーブルクロスが丸いテーブルの上に敷かれ、その上に見たこともないような食事の皿が置かれている。
それが何個も置かれ、それを囲むようにして何人もの人が立っていた。
男女様々で皆豪華な衣装を身に纏っていた。
いつの間にか寒い空気ではなく暖かいそれに変わっていた。
ふと後ろを振り返ると今しがた登った階段の穴は消えてなくなり、赤い金の装飾が施された絨毯にすげ変わっていた。
(なんなんだよ ここは ・・・)
会場内に響く管楽器の厳かな旋律が耳に入る。
それがきちんと自分の耳に入ってくることが、不快な今の気持ちを倍々にしていく。
「すいません ・・・ あの ・・・」
自分の恰好がそこに合っていないのを自覚して気まずかったが、近くにいる人に声をかける。
…。
しかし彼らはモチモアの姿を見ることはできないようだった。
何度か試みるも全て躱されてしまう。そうこうしてこの広い会場を歩き回っていった。
「うっ ・・・」
歩き回りながら彼らが口に運んでいる物をまじまじと観察すると、なにやら得体のしれない丸みを帯びたピンクの肉塊であった。
それを大きな口を開けピシャピシャと音を上げている様は気持ちが悪い。美味しそうに食べる彼らの表情も不気味だった。そして彼らがその手を止めると檀上の方を向いていた。
『『#"#%%''(#$#T#()&'&'#』』
マイクから壇上の男が何かヘンテコな言葉を喋っている。耳には届くが何を喋っているのかまでは分からない。
それを聞く彼らは「ああ」とか「うん」とかいって真剣にその話を聞いていた。彼らがまともな神経の持ち主ではないと悟り、軽くため息をつく。
(どうしよう ・・・)
とぼとぼと会場を歩く。
『『わぁぁぁぁ ざわぁあああ!!』』
会場がどっと盛り上がりを見せると、照明が落とされ、壇上のみに照明がつく。
(うっ ・・・)
壇上の男をよく見ると、人の顔をしていなかった。
丸い大きな目に大きな口ばしを携えている。
白いローブのようなものを羽織り、頭には金の大きな冠が載せられていた。肩幅はかなり広く、むしろ後ろに羽根があるのを隠しているのではないかと思うほどだ。
( 気味が悪いな ・・・ )
その前に1組のカップルが歩み出てきていた。
『うぁ ・・・』
ついそう口を零した。シオナとブラナンがそこにいた。
鶏男と2人が何やら喋っているようだった。そして2人が会場側に体を向けると手を繋ぎ合い、お辞儀をしていた。
『『 わぁぁぁぁ! ざわぁぁぁぁぁ! 』』
そして、シオナがマイクを握る。
『『&$'("#%&'(($』』
またしても意味不明な言葉を発するシオナ、それに対して人々は頷いたりして彼女を凝視している。
彼らの様子を見るべく檀上に歩いて近づいていく。
( ・・・ )
ブラナンだが、少し彼だけ様子が違っていた。どこか顔に影を落としているように見えた。
「なっ ・・・」
一瞬彼女と目が合った気がした。口元は笑っていたが色を失った目がこちらを向いていた。
紺色のドレス姿、頭には花の冠を乗せた彼女の姿は人がうらやむほどの美貌ではあったが、やはり、あの目は好きになれない。
目が合った瞬間に本能的に彼女からの視線を逸らす自分がいた。
…。
シオナのスピーチが終わり、彼ら2人はそろって壇上を降りる。シオナは自分の事に気が付いたのかもしれない。先程の様子をモチモアは思い出した。
彼女はこそこそと壇上付近のスーツ姿の男に耳打ちをしていた。しかし、その後は特に自分を見る素振りは見せずにブラナンと立食を嗜んでいた。
胸を撫で下ろすと共に、ブラナンを見ながら会場をぶらつく。
そして、ある機会が訪れた。ブラナンがシオナから離れると会場の脇の1つのドアに足を運ばせていた。
それに食らいつくようにして後ろにつけていく。
…。
絨毯がなくなり、タイル張りの床が姿を表す。ブラナンの後ろ姿に安心感を覚えつつモチモアは彼を追った。
(頼むよ お前だけが頼りだ ・・・)
この場所の正体や知っている様子のシオナの話を聞き出したかった。
…。
だだっ広い会場から廊下に出る。その脇のトイレに彼は向かって行った。
( ・・・ おい どうした)
幸いトイレの中は彼だけであった。
彼は用を足す訳でもなく、流しのカウンターの上に両手を付き泣いているようだった。
「「おい ブラナン!」」
そう言うと彼は一瞬後ろを振り返った。
しかし、
彼は首をブルと振るうと流しで顔に水を浴びせていた。
『ふぅ ・・・ モチモア ・・・』
「「おい 後ろ! ブラナン後ろ!」」
そう声をかけるも彼はこちらに気が付く様子はなかった。
( ・・・ あぁ ・・・)
そして彼を写す鏡には自分の姿は映っていなかった。そして、見てはいけないものが目に入る。
「「んっ あ!!」」
ゾワワワワワ。
鏡にシオナの姿が映った。彼女が静かにこのトイレのドアを開け、こちらを覗き込んでいた。
ブラナンを見ていない、確実に鏡越しにモチモアを目に捉えていた。
(はわわわわわ)
寒気が走り、どうしていいか分からなくなる。
そして彼女はドアを閉めた。
(・・・)
「「よしっ」」 『『ピシャッ』』
ブラナンはそう言い、顔を叩いて鏡に顔を写していた。大丈夫イケメンだよ。
しばらくの沈黙のうちに彼はモチモアを残してトイレを後にした。
『 ・・・・・・ 』
外から2人の話し声がした。
…。
それが止むのを待ち、おそるおそるドアを開ける。
…。
『もっちぃ ・・・・ 来てたんだ』
ドアを開けたすぐそこに、やはり彼女はいた。
「は わっ ・・・」
彼女は自分を待っていた。傍にいるのはブラナンではなくあのとき耳うちしていた屈強そうな男。
『なにしてるのー?』
彼女がそう呟くようにして話しかけてくる。伺うようにして腕を後ろに回し腰をかがめて、顔だけ上を向いていた。
口元は笑っているが目は見てられないほど。黒一色で恐ろしい。
「い いやちょっと歩き回って えへへ」
『ふぅーん ・・・・』
「「おい! なにすんだ!」」
シオナは背をこちらに向け会場に歩いて行った。
モチモアは屈強なスーツ姿の男に羽交い絞めにされ、そのままこの暗い廊下の先に連れて行かれた。
…。
「「おーーーい! 帰してくれー!!!」」
男に連れてこられた牢屋の窓格子からそう叫ぶ。
『『ガチャガチャ』』
外側から鍵を掛けられ出られない。
この部屋は会場の暖かい空気とは別。コンクリートが全面を覆っていた。
つい今しがた、格子窓の先の廊下の通路の照明を落とされてしまった。
そのため暗闇が辺りを支配している。
(なんでだ ・・・ 俺が何したってんだ)
シオナに何かした覚えはない。しかし彼女は明らかに自分を排除するべく動いていた。こうするために。
そして会場の様子から彼女の事を察するにそれなりに地位があるように思えた。
一体何があったんだ。
…。
考える時間はあった。
その間にモチモアがこうして捕まえられる前の事まで彼は思い出してきた。
(俺達は利用された ・・・ ?)
俺が死んでいるという事は正直もう確実。そう直感した。だとすると、あの2人ももう既に死んでいる。
幸いなことは。そう。
マユミはこっちに来てない。それだけが何よりも今のこの状況の支えになっている。
しかし……。
なんでこんな所に。シオナは一体何者なんだ。こっちの事を知っているように思えた。そしてブラナンはその事を知らないようだった。
怒りと悲しみと、わずかな希望が心の中でごちゃまぜになって表に出たり、消えたりする。
「 ぁ ・・・」
格子窓の外からこの部屋に明かりが射す。
『ガチャ』
「モッチー 来てくれたんだ 嬉しいよ」
ドアを開けるとシオナが入ってきていた。先ほどまでの恰好ではなく普段着になっている。
「来たくて来た訳ではない」
そう色んな感情を込めた言葉を彼女に浴びせてやる。
「 ・・・・ 」
それを受け止めた彼女は難しい表情を作っていた。
「上にブラナンもいるし 一緒にどう?」
「行って何をするんだ」
「美味しいお食事に 外もあるわよ それに ・・・・」
「色んなお話が聞けるわよ」
そう言うシオナの表情は幸せそうであったが、何か感情が抜けているように思えた。
「マユミはどうなってんだ?」
「ああ ・・・・ 一緒に来たかったけど ・・・・ あなたが逃がしたのよね」
「ああ って ふざけてるのか? おい!!」」
「怒らないでよ 私がわざわざこうしてあなたを誘ってるのよ!?」」
今までに見たことがない表情をシオナが作っていた。普段の落ち着いた雰囲気がギャップとなり、胸を強く打ったような気分になる。
一番言いたかった事、マユミの事をもっと言ってやりたかったがそれが言えずにいた。
『いずれ みんなここに来るのよ ・・・・』
そう不気味に彼女が呟いていた。
その表情が嘘をついていると直感で悟った。おそらく彼女はそういった事に慣れてはいない。
しかし、行動までは一緒に冒険をする中で見抜けなかった。
それがモチモアの心を苦しめた。
「考えさせてくれ ・・・」
「そう 1日だけね」
短く返ってきた言葉に寒気が襲う。そして彼女はこの部屋の外の部屋の様子を説明してくる。
「見てほら 私達の話を聞けない人は ああいう風になるのよ」
シオナが話すと、コンクリートの壁だった壁面に映像が映し出される。
…。
そこにはこの世の物とは思えない器具に寝かされた人がグロテスクな姿となり、泣きわめいていた。
「なんでそんなひどいことを ・・・ うぇ」
「だから 私の話に「うん」と返事すればいいだけよ」
淡々と喋る彼女の様子にウソの気配は無かった。
「ここじゃ死ねないから いくらでも痛い思いできるわ 哀しみも欲しい?」
「・・・」
生前の彼女の様子に心当たりがある。やはり嫌な予感は的中してしまう。
「1日だけ待つわ 私はもう次の行先決めたから あとはブラナンの返事を待つだけ」
そう話してくる。
どこに行くのか検討もつかない。興味もない。しかしブラナンが道連れなのは腹立たしい。
「嫌がってるんだろ? あいつは」
「 ・・・ 知らないわよ そんなこと」
シオナは軽く苛立ったようにして背を向けた。彼女を捕まえるようにして追ったが、手が届きそうでいてそれが出来なかった。
『ガチャ』
彼女が部屋を出ていくと照明が切られ、暗闇が再度辺りを支配した。
…。
時計だけが蛍光色にうっすら光って見えた。しかし、普通の時計よりも大分針の動きが早く見えた。
『ザァ』
その音だけが耳に入る。自分から発している音なのか、それともこの部屋から鳴っているのかは分からない。
…。
あっという間に半日が過ぎる。
あの会場にいた人々の顔が目に浮かぶ。気味は悪かったが、楽しそうに喋るその姿にウソをついている様子は無かった。
俺だって生きている時はそういう豪快で優雅な遊びに憧れたことがある。ブラナンもいる。目一杯楽しむことができそうじゃないか。
もし、俺がシオナの誘いに「はい」と言えばそれを味わえるのかもしれない。
しかし、そんなもので自分が満足するのか?
…。
何がしたい?
急に心に声が届く。
( ・・・ ?)
自分から出た言葉か、それとも外からか?
(何がしたい?)
…。
見えないが、強く握りこぶしを作る。
俺がしたいのは、ただ1つだけ。それだけは心に決めている。
…。
『ザァ』 ピタっ。
「「なっ!」」
『交換条件だが 聞こうか』
暗闇の中に1人のフードを被った男が白く浮かび上がった。