【第11話】目的地へ
舗装された道を2人を乗せたバイクは走り、それは時より揺れている。
(何をしているんだ ・・・ 俺は ・・・ 何をさせられるんだ?)
役所で受けた依頼は決して手に負えるものではない。それだけは確かだと思う。緊張はしていない。だが不安と過去の後悔が自分を支配している。ただこの前に座る灰色の髪の男に全て委ねることしか今の自分にはできない。そう考えてしまっていた。
(・・・ ここは ・・・)
先日パインが自転車を必死になって漕いだ道と同じ坂道。自転車のスピードとバイクのスピードの差になんだかやるせない気持ちが彼には湧いてきていた。
そしてその時は、ここから少し行った所の交差点を曲がり、森へと続く道に入った。森に入ると彼は自転車を乗り捨て、徒歩でひたすらその中を何時間も歩いたのであった。彼は背の高い木が生い茂る暗い森の中を思い出した。危険なのは分かっていた。けれども後には引けないとも思っていた。今考えるとあのような無謀な行為をなぜしてしまったのかと疑問に思えてくる。何かが自分をそうさせているのではないか、そう思ってもおかしくはない。そしてその流れが今も尚も続いているのかもしれないと。
(まぁ それでもいいや ・・・)
…。
山の斜面を登り、どんどん景色が自然のそれへと近づいている。
(ちょっと寒いな ・・・)
冒険者の数は決して多くない。この平和な町でわざわざ身を危険に晒すということが、どれだけ無意味か。そういった事を誰からではなくとも彼は聞いて育ってきた。
(あ ・・・)
そんなことを思っていると、前方から冒険者と思しき数人の乗ったトラックがやってくる。そのトラックは簡素であり、白一色で塗装されている。
冒険者の心境を詳しく理解していない、彼の中で冒険者は生死をかけた荒事を毎日し心も体もボロボロになってしまっていると思っていた。だが、対面で今すれ違ったトラックに乗っている冒険者達の笑顔に彼は今まで自分が知り得た冒険者の情報が間違っているのではないかと思ってしまった。それほどまで男女を交えたトラックに乗る冒険者達の笑顔が彼には眩しく映っていた。
(なんでだろう ・・・)
初春の空気は、高度を上げ、さらに冷たくなりパインの耳の傷をよりいっそう痛めつけていた。