『ギャンブル』
息を止めて走った数ヶ月が終わり、一息ついたところで出会った歌があった。
名を『ギャンブル』という。
syudou(敬称略)というアーティストの作品で、俺がこの人を知ったのは、娘たちが歌詞なんてバラバラに歌ってた『うっせえわ』という歌からだった。
幼児だけに幼い歌をいつもせがむので、大して期待もせず、娘の隣でyoutubeを操作したのだが……。
いや……ビビったわ。
これはすごい。時代の寵児というか、令和が生み出したモンスターというか。何でこんな歌、娘が発掘したんだろう(苦笑)。
……もうコノヒト、きっと有名人だろうから俺がいまさら紹介や新発見!を騒ぐのは馬鹿らしいのかもしれないが、俺としては数か月前に知ったのだから仕方がない。
とにかく、その歌詞が織り成す"今現代"の感性に、しばらく凍りついた。
俺という作家はどこか浮世離れした自分の世界で物語を紡いでいる。
対してコノヒトは……彼も自分の世界は自分の世界なんだろうが……見事現代における若者の世相を反映している(俺評価)。"今"を描く能力は秀逸だと思えるアーティストだ。
わかんない。"今"が今だけなのか、二十年後も"今"をキャッチできる人なのかは分からないが、とりあえずここ数年、一度聞いただけでこんなに震えた歌は他にない。
ともあれ、そこからずっと気になってたんだけど、昨日、ようやくもう一曲を聴いたと。
どれが有名曲かとか知らないし、有名曲がいい曲とも限らないのでとりあえず適当。……たまたま選んだのが『ギャンブル』だったのだが……。
これがまたすげぇ。
いや、すごいのだろうか。すごいはすごいのだが、歌われてる言葉はまさに、俺の心情の代弁だったのがすごい。
だから、この歌がクリーンヒットする人間は、どれくらいいるのだろうか。とも思う。
内容的には、もう聴くのが早いのだが、
『いいから全員黙れ。俺はこの道に全部を賭けてんだよ!』
……という歌だ。
俺は単純だから、夢が叶いきる前のアーティストの紡ぐ、夢を追い人(たぶん自分たち自身)に向けた歌というのが好きで、よく勇気をもらって喜んでるんだが、これほど毒性のあるハリネズミみたいな曲は初めてだ。
そして同時に、他を寄せ付けない攻撃的な姿勢の奥底に、えもいわれぬ不安を抱えている。精一杯の強がりの中、心の奥底で求めているものがある。
自分という草が、地に根を生やしていないことを知っているのだ。
……まさに、俺じゃねーか。
『この人生こそが 何よりもギャンブル』(syudou:ギャンブル)
『才能やノドを枯らさずにくたばる? 冗談じゃないだろ』(同)
俺すぎて痛快であり、痛快すぎて、胸が痛い。
『勘違いの言葉を まだまだ叫んでくつもりですが
笑っちまうような様も アナタなら愛してくれますか……?』(同)