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『オタクマン』  作者: 超ネオ
2/2

第2話『新たなる現実』

◇ ◇ ◇


(女神がいる神殿/不明)


「まあ突然こんなことを言われても困りますよね、良ければお茶しながらお話しされませんか?」

「あっ・・はい!」


 女神さまの手招きについていき、いつのまにかティーカップセットとお茶請けのクッキーが置かれていたテーブルの席に着いた。何もなかったはずなのに俺が気づくことなく用意されているあたり、やっぱり女神さまなんだなと思ってしまった。


 一瞬口にして大丈夫かと考えてしまったが女神さまが紅茶を入れてくれたカップを渡し「遠慮せずどうぞ」と言われ、さすがに断れずゆっくり紅茶を口にしていくと。


「っ!・・美味しい・・というかこれ!実家で飲んでいた紅茶と同じ味だ!」

「お気に召しましたか?」

「ああすみません、たまに飲んでいた紅茶と同じ味がして驚いたんです。美味しいですよ」

「それは良かったです、こちらのクッキーもどうぞ」

「ありがとうございます・・・ん?」


 クッキーを口にしたとき俺は違和感を感じた、それはクッキーがバタークッキーだったからだ。バタークッキーは俺が気に入っていたお菓子の一つであると同時にたまに作っては家族や友人に御馳走して好評だったこともあり思い出深いお菓子でもあった。・・それと味がよく似ているというより全く同じな気がした。

 俺は、同じ紅茶を口にしている女神さまは俺のことをかなり調べ上げているのではないかと考え身構えてしまった。


「それで先ほどの役目の話なのですが、いかがでしょうか?」

「っ!?・・・あの・・具体的に何をすればよいのでしょうか?」

「そうですね、まずはこちらをご覧ください」


 女神さまはティーカップをソーサーに戻し何もない空間にスクリーンが出現する。何もない空間にスクリーンが出るなんて非現実なことに驚かないあたり俺どうなんだと思ってしまった。


 スクリーンには俺が良く知る都内の風景が映し出され、そこから徐々にズームアウトしていき東京都、日本、アジア、地球がどんどん映し出される。さらにズームアウトが続き太陽系、銀河系が映し出され、最終的に一つの球体が映し出される。そして球体は一つだけじゃなく似たようなものが幾つも並んでいく。

 俺はこの光景を特撮映画などで似たようなものを見てきたため、女神さまが何を見せようとしているのか理解した。


「・・マルチバース?」

「その通り。あなたが送っていた日常は複数存在する宇宙の中の一つの宇宙の銀河系の中のとある惑星のとある国のとある都市のとある場所で過ごしていたことだったのです」

「・・・・・」


 よく映画で人間は世界の中のちっぽけな存在に過ぎないと表現するのをよく見かけるが、それをまさか女神さまの口から説明して頂く日が来るなんて・・なと感慨深かった。けどやっぱなんか自分が小さな存在だと言われていると思うと同時に皮肉っぽく聞こえてしまって、複雑だった。


「そして本題はここからなのですが・・」


 女神さまの一言に我に返り再度スクリーンを見ると、一つの球体がズームアップされ突然淡い赤色と紫色の2色にゆっくり点滅を始める。


「っ!?」

「この2色の点滅には意味がありまして、紫色はこの宇宙のとある惑星内の一部地域にて将来異変が起こることを示しています」

「・・赤色の意味は?」

「赤色は宇宙滅亡の危機を意味しています」

「え?・・その惑星の世界だけの話ではないんですか?」

「いいえ、その惑星から全ての銀河系つまり宇宙そのものが滅亡することを意味しています」

「・・何ですか!?その規模の大きさ!?」

「そうです、このまま放置してしまうと取り返しのつかないことが起きてしまうのです」

「起きてしまうって・・・待ってくださいまさかこの宇宙滅亡を防いで欲しい・・ということですか?」

「はい、その通りです」

「・・・・・」


 俺はRPGゲームとかそれこそラノベとかで出てくるような魔王を倒せとかあるいは勇者を倒せとかの内容かと思ったら・・それすら小さな内容に見えてしまう「宇宙そのもの」の滅亡を防げなんてとんでもないクラスの内容に現実味がなくなってしまった。


「だいたい宇宙が滅亡するくらいの原因って一体何なんですか!?」

「現在原因と思われるものは複数存在するのです」

「複数?」

「はい」


 原因が複数あることに違和感を感じた俺に女神さまは新たなスクリーンを出してくれて、そこにはどこぞのモンスター映画とか特撮作品とかに出てくるような怪物やロボットらしきものから人間の写真が載ったリストがずらっと出てきた。


「こ、こんなにたくさん!?」

「はい、このリストは全てとある惑星に存在するものなのです」

「ある惑星?」

「『惑星カーズ』、この惑星にはモンスター、アンドロイド、生物兵器、古代遺産さらには人間など様々な危険分子が存在しています」

「なんだこの問題だらけの星!?」

「私の方でシミュレーションした結果これらのものがすべて起動したことがトリガーとなって、危険因子同士が共鳴し合い融合を遂げ新たな脅威が誕生することが判明しました」

「その融合した脅威が生まれた惑星だけでなく宇宙そのものに影響を及ぼすってことですか?」

「そうです。それはあらゆる惑星・銀河系の危険因子までも取り込み、やがて宇宙を滅亡させる危険な有害な存在となるのです」

「・・・・・」


 モンスターとか、アンドロイドとかそれだけでも脅威になるイメージなのに、これら全部が融合して宇宙滅亡の脅威へと成長する?・・・映画の展開みたいな絶望的な未来だな。

 ・・・だけどそれなら、それらの危険因子が融合を遂げる前に倒すことができれば何とかなるんじゃないのか?


「だとすると・・このリストの危険因子を一つでも倒せば解決するってことですか?」

「いいえ、すべての危険因子を対処しなければなりません」

「全部!?・・1つでも止めれば良いんじゃないですか!?」

「それではだめです、1つ2つ材料がなくなったところで生まれてしまう驚異の力がほんの一割落ちるぐらい変化でしかないので根本的な解決にはなりません。」

「そんな・・・」

「それに今回の異変の黒幕が惑星カーズであるというのも問題だからです」

「?・・惑星が・・黒幕?」

「そうです」


 訳が分からない惑星が黒幕って・・・いや待てよ、そいえば星そのものを生命体だと考える説があるのを映画とかで見たことがあったな。温暖化とかを地球のバランスを保つためのアレルギー反応みたいなものと考えていたな。


「惑星カーズが意思を持っているってことですか?」

「そうです。惑星カーズは自分の星の人間こそ危険因子と見なし、すべての人間を駆逐することで本来のバランスを保たせやり直しを実行しようと考えたようです」

「ガイア理論・・でも俺が言うのもなんですがやりすぎじゃありませんか?」

「まったくその通りです。・・人間もまた惑星の一部であるというのに・・駆逐という最終手段を出したまでなら私の方も目を瞑りますのに」

「え?」


 怖っ!?


「それではとどまらず今の宇宙をリセットして、宇宙そのものをやり直そうとするなんてとんでもないことを考えてしまったようです」

「いったい何があったらそんな考えまでに至っちゃうんですか!?」

「人間が引き起こす様々な争いや環境変動などをこの惑星の人々は根本的な解決をしようとする姿勢が薄いのです・・さらには他の惑星から来た脅威からの攻撃を過去に受けたこともあるのです」

「身内問題が全然解決する様子がない上に、外からも圧迫されていたってことですか・・」


 確かにもし俺だったらと思うとな・・そりゃ自暴自棄にもなるよな。・・・うん?待てよ・・だけどそれだと。


「ですけど宇宙滅亡なんてことしたら惑星カーズだってなくなるのでは・・」

「惑星カーズは自分すら滅んでもかまわないから宇宙をやり直してほしいのでしょう、もはや自殺願望とも捉えられる案件です」

「惑星の・・自殺願望!?」


 ・・まあ確かに意思を持つ生命体ならそういう考えも出てくるってことか、地球というか日本でも問題になってたからな。


「つまりその惑星の人間こそが根本的な原因の一つであるということですか?・・・まさか!俺が!・・代わりに人間を抹殺しろって言うのですか!?」

「いいえ、さすがにそれは本来関係のないあなたには酷な話です。・・それに人間を抹殺したとしても宇宙滅亡を実行できる材料は残ったままとなり結局は一時的な時間稼ぎにしかなりません」

「うーーん、それじゃあやっぱり危険因子すべてを倒すしかないのか・・」

「いいえ、倒すのではなく確保して頂きたいのです」

「え?確保?」

「そうです」


 確保ってどういうことだ、倒せばいい問題なんじゃないのか?・・・危険因子にはモンスターやアンドロイドや遺跡なんてものがあったよな。・・そういえば映画とかでもモンスターとか危険な存在を倒したとしてもそれを再利用したり研究しようなんてろくでもないことを考えたりする奴は必ず出てくるから、それを防ぐためってことか?

 なら封印すれば・・いやそれも同じか、そういうのも映画とかで大昔に危険だから封印していたのに人間が好奇心で復活させるなんてことよくあるからな。だとすると・・。


「確保するというのは例えば俺が現地で確保して、その後それを女神さまが管理してくれるということですか?」

「その通りです。あなたには現地で危険因子そのものとそれに関わるものをできる限り確保して頂き、後世に再発の危険を回避させるようにして欲しいのです。・・その後は私の方で適切な処分を致します。」

「なるほど・・」


 俺にやって欲しいことはある程度理解できた。・・だが疑問はやっぱり出てくるな。そもそも・・


「あのいくつか質問良いですか?」

「もちろん、どうぞ」

「今回の件、女神さまが直接処理されないのですか?」

「私はあくまで様々な次元宇宙を監視することが役目であり、捌きを下す者ではありません。そのため他の宇宙にまで多大な影響を与えない限り、私の方で直接どうにかするといったことは致しません。・・これはあくまで本当にどうにもならなくなった時の手段です。」

「なるほど・・」


 まあ予想はついていたがそういうことか。様々な宇宙を監視するほどの存在が直接を手を下せば宇宙1つ消し去るなんて他愛ないとか映画とかでも見るし、あんな感じなんだろうな。


「では次の質問です。どうして俺なんて凡人にこんな大規模な話をされるのですか?その惑星の神や兵士に頼むっていう手もあったのではないんですか?」

「理由は2つあります。1つは惑星カーズの神や人間などに頼んでも宇宙滅亡を防ぐことはできないと私が判断したからです。」

「どういうことですか?」

「先ほどもおっしゃった通り惑星カーズの人々には問題解決する意欲が薄く、人間の信仰心で力を得ている神々もまた必然と力が衰えてしまうため今回の件に適していません。」

「何より今回は黒幕である惑星カーズが最も邪険にしている自分の惑星の人間たちが万一滅亡を防ぐほどの力や能力を持ってしまえばどんな事態を引き起こすかわかりません。場合によっては余計に滅亡のカウントダウンを速めてしまう結果を生む可能性があります。」

「んんー、ならその惑星の人間に滅亡の危機があるからと教えて危機感を与えて対処してもらったら良いのでは?」

「では逆にあなたは突然世界が滅亡するから何とかしなさいと言われたら信用しますか?」

「あっ・・確かに信用しないですね」

「それにそうした場合、他人に責任を押し付け合いをしてしまい暴徒と化し自滅の危険性もありますのでどのみち対処は難しいでしょう」

「・・それも確かに・・」


 どんな世界でも自分から大きな責任を取ろうなんて思わないよな。気持ちはわかるけど・・・うん?待てよ・・他の惑星から来た脅威からの攻撃を過去に受けたことがあるって言ってたよな?


「すみません、先ほど他の惑星の知的生命体からの攻撃を過去に受けたっておっしゃいましたよね?」

「はい」

「その際はだれが対処されたのですか?」

「もちろん、過去の惑星カーズの人間です」

「惑星カーズの人間が!?」

「はい、その当時の惑星カーズの人間は自分たちの持つ軍事力や魔法、場合によってはモンスターの力を借りて人種や国を超えて互いに協力して対処し苦しくも防ぎきったのです」

「え?・・そんな経歴があるならなおさらその世界の人間たちに任せても良いのでは?」

「確かに当時の人々の意思をしっかり継いで心身ともに栄えていけば問題はなかったのでしょう」

「・・衰退していったってことですか?」

「そうです、当時の大きな戦いが終わり世界は一つとなりともに力を合わせていこうと誓い合っていました・・ですがそれも長くは続かず平和になるとより富を求めるようになり手を取り合っていた者同士での戦争や環境破壊が続いてしまい、ついには他の惑星からも手に入れるほど価値のない惑星と判断されるようになりました」

「・・・・・」


 なんだか他人事に思えなくなってきたな・・俺の地球も平和そうに見えて環境破壊やいじめ・差別とか嫌なものは途切れることなく続いていたからな。

 ・・もし俺の宇宙に地球以外の知的生命体がいても地球を狙うほど人間も環境も良いものとは思えないだろうからな、もしかしたら俺の地球も将来そうなるのかな?

 ・・・けどそれではダメ・嫌だって思う人間も必ずいるよな、俺だってダメだと思うくらいだしな。少なくてもまだ俺は地球や人間は捨てたもんだじゃないと思う。映画を見ていると毎回思う。


「話を戻しますね。2つ目の理由に、今回の件をあなたにこそ頼みたかったからです」

「え?・・それはどういうことですか?」

「あなたは亡くなる直前に生きたいと願いましたね」

「・・はい」

「しかし生きたいと願う前、もうこのまま生きるのをやめていいと思いませんでしたか?」

「っ!それは・・確かに・・」

「自分はやり遂げたから『今の自分のまま』で終わらせていいと思うつまり停滞してしまうのはどの世界でも許されることではありません」

「今の自分のままで、いい・・・」

「その反面教師的存在が今の惑星カーズの人間たちです。彼らは過去の人間の栄誉に満足し、今の生活に困らないからと停滞したまま自分たちを変えようとせず危険が迫っていても危機感のない今の状況を生んでしまっているのです」

「な、なるほど・・」

「少し脱線してしまいましたが、あなたは今までの自分で満足して終われますか?」

「・・いいえ」

「あなたが生きたいと願ったのはなぜですか?」

「・・俺は・・」


 その時、俺は死ぬ前の自分を思い出した。あのとき俺がフラッシュバックする。そしてあの時の自分の思いを思い出した。

「けどもっと生きたかったな・・・こんな俺で・・満足・・・できるかよ・・まだやりたいこと・・あったんだよ!今の自分じゃない・・何も成し遂げていない自分のままで・・終わりたくない!!」

 ・・・そうだ。・・俺は。


「俺は今の自分に満足なんてできません!生きてやりたいことがあります!・・何もしていない、何もできない自分で終わりたくありません!!」


 俺はあのとき満足してしまった自分への怒りをぶちまけるように女神さまに俺の思いを言い放っていた。それに対して女神さまは驚く様子はなく、むしろその言葉を待っていたかのような嬉々とした表情をしていた。


「ではあなたの返答は・・」

「はい!女神様、御願い致します。俺を転生者にしてください!!」


 今思えば女神さまの口車にまんまと嵌ってしまったような気もする。

 だがそれが無くても俺の選択は変わらなかっただろう。

 これは間違いなく俺が選んだこと。

 俺は当時の俺を変えたくて今の俺がいる・・だから俺の生きる意味を見つけないとな。

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