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『オタクマン』  作者: 超ネオ
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第1話『転生者となるもの』

◇ ◇ ◇


(都内某所/夕方)


 俺は今日やっと楽しみにしていた映画が観れた。今なお不朽の名作を有名監督がリメイクしただけあってやっぱ見応えある名作だったなぁ~。特に当時じゃ表現できなかったヒーローのモデル像を完全再現させて、ヒーローが現代社会で活躍していくための葛藤や人間ドラマも必見だったなぁ~。

 これで明後日の仕事も気合入れてやれそうだ。さて最寄り駅に着いたら駅前のスーパーで夕飯になるおかず買いに行かないとな。・・今日は何するかな?この時間なら冷凍餃子に割引シールがつく頃か・・。


ブゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

「「「「「っ!?」」」」」


 突然鳴り響くクラクションの音に俺を含めた周りの人たちが音の出所に注目していく。そこにはクラクションを鳴らし続ける軽自動車が信号も関係なくスピードを出して車道を走っていた。


「おい!やばいぞ!」

「まずい対向車にぶつかるぞ!」


ドシャン!!


「「「「うぉ!?」」」」

「「「きゃあ!?」」」


 暴走した軽自動車は対向車と斜面からぶつかってしまいそのまま止まることなく、最悪なことに歩道へ乗り上がってしまった。


「危ない!」

「逃げろっ!逃げろっ!」

「たけちゃん早く!」


 俺も必死に進行方向から逃れようとしたとき「たけちゃん!さとちゃん!」とどこかの母親と思われる女性の声に後ろを振り返ると、そこにはその場で泣きながら駄々をこねていた子供が2人いて母親が両方とも抱えようとするもできず手こずっていた様子が見えた。周りには誰もいない、しかも車は猛スピードで迫って来ているまさに絶体絶命な状況だった。


 そのときは何を考えていたかはっきりと覚えていなかった、でも確かに俺の足は走っていた、ただがむしゃらにあの親子を助けたいと思っていたのだろう。「おいあんた!?」俺の後ろで俺を止めようとする男の声も全く無視して走っていた。


「1人は俺が!」

「え!?あ!すみません!!」


 俺はたけちゃんと呼ばれていた子を抱え、母親がさとちゃんって子を抱えたとき暴走車はクラクションを鳴らしながらすぐそこまで迫っていた。走ろうとするが、母親が恐怖し足がすくんでいた様子に気付き「早く!」と叫ぶと走り出してくれたのを確認して俺も後から走る。

 だが今思えば走りながら叫ぶべきだったと自分の判断に後悔した。俺は今からでは走っても衝突回避に間に合うかわからない距離まで来ていたのに気づいた。俺は今自分の胸の中で泣いている子供を一目見た途端自分の置かれている状況に恐怖と絶望に支配されどうしたらいいかと焦ってしまう。

 その時「たけし!」と叫ぶ今度は男性の声に声の方を向いたとき、この子の父親らしき人物が母親とさとちゃんを引っ張り抱えながら倒れている姿に気づいた。


 俺は咄嗟に何も考えず行動したことで、自分の命と運命を変える行動をとってしまった。


「受け取って!」


 俺は父親らしき人物に向けて思い切り子供を投げ飛ばしていた。常識的に考えれば俺の行為は最低だろう・・だけど俺はこうしなければならないと最善の行動をしたと思う。父親らしき人物は驚くも俺の意図に気付いて子供を受け止めてくれた。・・このときは内心安心したあの子供が自分に必死にしがみつかず逆に離せと言わんばかりに暴れていたためにうまく投げ飛ばすことができたのだから。そしてあの父親が来てくれなかったらこの子を助けられなかった、父親の素晴らしい家族愛に感謝した・・。


 そう思ったすぐ後に俺はものすごい衝撃を左側に感じ自分の骨が何本も折れる音が聞こえたような気がした。さらに自分の視界が一回転してアスファルトに叩きつけられ、腕や足・首・腰・ひざなど挙げればきりがないほど体中のあちこちの骨が折れ、血管が破裂して痛みに声すら上げられず視界がくらくらしていく感じと口の中が熱くなっていきながら鉄の味が広がるのを感じることしかできなった。


「車が止まったぞ!」

「おい!・・おいおい!マジかよ!?」

「・・そんな・・どうしよう・・」

「誰か!誰か救急車を!救急車を早く!」

「おいこの運転手胸を押さえながら意識なくなってるぞ!」

「まさか心臓発作か!?」


 俺は薄れていく意識の中聞き慣れた子供の泣き声が聞こえあの子たちが生きていることと、周りが俺と心臓発作を起こしたらしい運転手にしか気を取られていないことに犠牲になったのが俺たちだけだと気づいた。不謹慎であるが犠牲になったのが俺たちだけでよかったと思った。

 そして安心しきった俺はもう自分の意識を保つことができなくなり・・俺もう生きていけないだなと悟った。でも自分のやったことは間違ってないと俺はそれだけははっきりしているし、覚悟を決めようと思った。だから俺は・・・けどもっと生きたかったな・・・・・。

 そのとき俺の意識はろうそくの火が消えたように消え、俺という1人の人間は生きるのをやめた。



◇ ◇ ◇


(女神がいる神殿/不明)


 ・・・・・。・・・?。・・あれ?痛みがない・・・。さっきまで俺は何していたんだっけ?。確か楽しみにしていた映画を観た・・。それで・・・俺は・・・・・死んだんだ。

 ・・・でも?それなら・・今の俺は・・・なんなんだ?・・・ここはどこだ?・・・はっ!?体が動かせる!?・・・本当に俺はどうなったんだよ!?


「・・・俺は・・何が・・起きて?」

「もう動いて大丈夫ですか?」

「うえっ!?」


 俺は今意識がはっきりしているのに、周りは真っ白な空間で何も存在しない不思議な場所の中にいるため誰もいないと思っていた。だからまさか返事が返ってきたことに心底驚き後ろへ振り替える。

 そこには西洋のドレスというより古代ギリシャ神話で出てくる天使や女神の様な姿と印象の女性・・いや女神っぽい人がいつの間にかあった玉座の間の椅子に腰を掛けていた。

 この展開って・・まさか・・・。


「あの・・すみません・・・えっとどちら様でしょうか?」

「私は次元の女神です」

「・・次元の女神?」

「そうです、様々な次元宇宙の均衡を監視することが私の役目です」


 俺はこのときなんかラノベやアニメとかで観たことある異世界転生ものに似ていると思った。そして俺は非現実的な展開に若い頃なら喜んでいただろう、だが今の俺は徐々に不安が広がっていた。


「あ、あの・・その女神さま・・・俺はどうしてここに?」

「あなたは死にました」

「なっ!?」

「一方で私はあなたに興味を持ちました」

「・・え?」

「私はあなたの勇敢な行動を見ました。自分の命の危険も顧みずに他者を助けようと奮闘したあなたに感動しました。」

「は・・はあ・・」

「そんなあなたが死んでしまうのは、私個人としては残念だと思っていたのですが・・あなたは最後に生きたいと願いましたね?」

「あっ!?・・は、はい!」

「だから私はあなたにもう一度生きるチャンスを・・命を授けようと思いました。そのかわり・・」

「・・そのかわり?」

「別の宇宙で起きようとしている異変を鎮める役目をあなたに務めて欲しいのです」


 これが俺が女神様との初めての出会いだった。俺はごく当たり前のものとして平和な日々を生きていくんだと思っていた。だけどこの瞬間やっと理解した。俺の日常、いや世界そのものが変わった。そして全く知らなかった世界があることを知り、新たな現実を突きつけられていたのだと。



◇ ◇ ◇


(とある廃墟の町/夜)


 廃墟の町。所々焦土と化した道路やズタズタに切り裂かれて骨組みが露出した住居が立ち並び、至る所で風化した瓦礫が散りばめられた悲惨な風景がずっと続いている場所。

 俺は資料で見たこの廃墟だらけの町の中を歩いていた。廃墟なだけに人どころか野生動物すら存在しない悲しい雰囲気の場所・・まあ似たような景色をいくつも見てきた俺には見慣れただけに何も感じなかったがな。一歩また一歩と歩いたところで俺は何もない空間にスクリーンを出す。

 スクリーン上には今自分がいる廃墟の町の平面図が映される、平面図を3Dスキャンで立体化させ地上から地下へとスライドさせる。すると今自分が立っている場所の真下約30メートル地点に巨大な生命反応があることを確認する。


「この廃墟を生み出した原因はこいつか」


 スクリーンには新しくこの町の過去の映像が映し出される。

 ここでは過去に住民たちが古代のオーパーツである生物兵器を発掘してしまう。それを敵国との戦争の兵器として利用、その巨体を生かした怪力で敵国を殲滅と破壊の限りを尽くし勝利を収め満足気な者たち。だが生物兵器はそれで留まらず利用していた味方勢にも牙を向け、止めようとするもどうすることもできないと気づき懊悩する様子が描かれていた。そして最後は最初に発見されたこの町の住民たちまでも蹂躙した。

 俺はこれまでのこの町の廃墟に至る経緯の映像を再確認し、生命反応をサーチした物体の正体が映像に出ていた生物兵器と一致したことを確認する。


「自分を戦争に利用しようとする者に対して敵味方関係なく消滅させる生物兵器か・・・」


 そして俺は、同時に人間はどの世界でも愚かなんだなと思った。

 俺は息を吸い自分の中にエネルギーを生成するイメージを浮かべ、超エネルギー『プネウマ』を生み出していく。

 さらに俺は地面に手を添えて、手から超振動させたプネウマをドリルのような形状で発射させ地中を掘削させ生物兵器に直撃させるイメージを浮かべる。イメージをはっきりさせた俺はそれをそのまま実行に移していく。


「ここだな」


 俺はスクリーンを確認しつつ生物兵器に命中できる的確なポイントに手を添える。そしてプネウマを発射させる。

 ドゥン!ズーーーーーーーーーー・・・

 俺が生成したプネウマはイメージ通りに地中を掘削していく、しばらくしてドォオオン!。という轟音が鳴り響き遅れて土煙が上がる。すかさず俺は小走りに離れると、地響きが鳴り響き地面に亀裂が入っていく。すると亀裂の中心から土煙を上げながら土が盛り上がっていく。盛り上がった土が崩れていき生物兵器が姿を現す。


「滅亡疑惑対象、目視で確認・・」


 俺は目的のものを確認しプネウマを全身に鎧のように纏って戦闘態勢をとる。


「目標確保する」


 今俺は生きている、違う世界の住人として。

 俺が望んだ通り生きている、全く誰も知らない俺となって。

 女神さまのおかげで生きている、新たな現実で。 

 だが俺はいつからか何で生きているのだろうと考えるようになっていた。


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