第2話 願いを叶えるタイミング!!!!!
実はオレには前世の記憶がある。
オレはいわゆる「転生者」だ。
それを思い出したのは、13歳の時だった。
13歳のある日、オレは兄2人の手を借りて木に登らされ、そのまま放置されて降りられなくなってしまった。
そこは家から少し離れた山の中で、人が通るような場所でもない。
このまま夜になれば、野獣が襲ってくるかもしれない。
そう思ったオレは意を決して降りようとした――のだが、足を滑らせて木から落下し、気を失ってしまった。
その衝撃がトリガーとなったのか、目が覚めると前世の記憶を取り戻していたのだ。
◆ ◆ ◆
前世でのオレの名前は、冬月智也。
ブラック企業で使い潰されていた――なんてことは特になく、いたって普通にサラリーマン生活を送っていた。
25歳にして年齢=彼女いない歴だとか、友達がほとんどいないとか、そういった些細な(?)コンプレックスはあったが。
それでもそれなりに楽しい1人暮らし生活を満喫していた。
しかしある日の帰宅途中。
とんでもなく荒々しい運転をしている車が目に入った。
人通りはあまりなく、その先の横断歩道には、塾帰りと思われる子どもの姿があった。
そしてその車は、なんの躊躇いもなく子ども目がけて突き進んで――
「危ないっ!!!」
オレはとっさに飛び出し、子どもを突き飛ばした。
と同時に、体の側面に今まで感じたことのない強い衝撃を感じる。
オレの体は数メートルふっ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
車は止まることなく走り去り、悲鳴とともに周囲に人だかりができていく。
――ああ、これ死ぬな。
でも女の子は助かったみたいでよかった。
オレは薄れゆく意識の中そんなことを思っていたが、ふとあることを思い出す。
「――昨日届いた極上ずわいがに、まだ食ってないのにな。食いたかったな」
享年25歳。
冬月智也の人生は、ここで幕を閉じた――。
◆ ◆ ◆
幕を閉じた――。
――え?
いや待って。
もしかしてあれのせい!?
あれのせいで神様、こんなスキルをオレに!?
いやいやいやいや。
願いを叶えるタイミング!!!!!
オレこの世界では貴族ですよ!?
叶えるタイミングもっとありましたよね!?
ちなみにこの世界のごはんは、食えなくはないが全体的にレベルが低い。
正直、おいしくはない。
どうせならもっとごはんがおいしい世界に転生させてくれるとか。
それが無理でも、貴族ならせめてそこに有能なシェフがいるとか。
なんかあっただろ!?
く、くそ……。
オレはあてもなくさまよい続け、気づいたら森の中に迷い込んでいた。