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最終話 2人で歩む未来のために

「ねえレイアお兄様」

「うん?」

「……こ、この国では、義理の兄妹は結婚もできるらしいの」

「お、おう」

「そ、それでね! 私とレイアお兄様が結婚してこの国を治めれば、きっととっても素敵な国になると思うんだけど」


 最近リディは、ちょいちょいオレにこうした提案をしてくる。

 頬を染め、視線をさまよわせながら手を前に組んで――


 ――うん。

 いくら恋愛から縁遠かったオレでもさすがに分かる。

 どうやらリディはオレに惚れているらしい。


 でも、拾ってもらった身でさすがにな。


 オレは元々は上位貴族出身だが、追放されたうえ、今はそのオータム家も爵位をはく奪された没落者だ。

 リディにはもっと相応しい相手がいるはず。

 そう思い、彼女の思いに応えかねていたのだが。



「レイアよ、おまえはリディをどう思っているのだ?」


 ある日王様に呼ばれて執務室へ向かうと、唐突にそんな質問を投げられた。

 部屋にはなぜか王女様までいる。


「え、ええと?」

「あれだけ露骨にアピールされて気づかないこともなかろう」

「……まあ、はい」


 ――何だろう、牽制か?


「私としては、おまえがリディを大切にしてくれるのであれば、ぜひとも結ばれてほしいと思っておる」


 あははですよねー。

 ……ねー。

 …………。


「えっ!? は!? あ、いや、えええええええ」

「あはは。その反応を見る限り満更でもなさそうだな。レイアが王になればこの国も安泰だろう。私も全力で応援するぞ」

「わたくしもですわ。リディをよろしく頼みます」


 慌てふためくオレを見て、2人は満足げな笑みを浮かべる。

 こうしてオレは、王様と王妃様の後押しによってリディの婚約者となった。



 今、オレはグラルディア帝国の食文化改革を進めている。

 王になるための勉強をこなしつつ、休日には全国各地の市場を巡って、貴族だけでなく一般市民の食生活も大幅に改善させることに成功した。


「おかげ様でおいしい食事が食べられるようになりました」

「栄養不足が解消されて以前より体調がいいんですよ」


 街へ行くとあちこちから声をかけられ、感謝された。

 もし与えられたスキルが【美食】じゃなかったら。

 そしたらこんな世界、絶対に見ることができなかった。


「レイアっ! 今度、街に新しいピグカツサンドのお店ができるんですって! あそこの店主、元々は高級料理店で働いていた人気シェフらしいの。今度お忍びで食べに行かない?」

「よし、それなら次の休日はデートだな」

「で、デートっ!?」


 リディはボンっと音がしそうなほど真っ赤になり、わたわたしている。可愛い。


 次の休日は3日後か。

 どこに連れていってやろう?

 たまには少し遠くまで一緒に行くのもアリか。

 オレは自室の窓から晴れやかな午後の空を眺め、幸せをかみしめた。

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