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第11話 ピグカツサンドがグラルディア名物に!?

「んーーーーっ! これこれっ!」

「う、うまいっ!」

「素晴らしい食べ心地だわ。こんなの初めてっ」


 3人とも、そのまま昇天しそうな勢いで表情を緩ませ、休むことなく頬張り続けてあっという間に完食してしまった。


「厚切り肉にこってりとしたソースを絡めるなど、普段ならば重くてうんざりしそうだが。しかしこのピグカツサンドとやらはいくらでも食べられそうだ」

「ピグ肉が柔らかくジューシーで、くどさがまったくないわね。2種類のソースの組み合わせも絶妙だわ。キャベツに混ざってる濃い緑の葉の爽やかな香りも素敵」

「でしょでしょ!? 山の中で突然こんなの出されて、私が今まで食べてた料理は何だったのかしらって思っちゃったわ」


 ――おお。まさかここまで喜んでくれるとは。

 でも、千切りキャベツに青じそを混ぜるのはぜひとも推したい食べ方だ。

 これがあるのとないのでは、食べたあとの清涼感が全然違う。


「ありがとうございます。ピグ肉に小麦粉、卵、パンの粉をまぶして油で揚げたピグカツという料理を、青じそ入り千切りキャベツと2種類のソースとともにパンで挟みました。卵を主体にした白いソースには、からし菜という植物の種から作った香辛料を混ぜてあります。これを加えることで味が引き締まるんです」


 グラルディア帝国では、塩コショウや砂糖、香辛料の類を使うことはあるが。

 しかし味つけの種類が乏しく、マヨネーズやウスターソースは存在しない。

 また、油は使うが揚げ物をする文化もない。

 そのため、このピグカツサンドは極めて異色な料理として映ったようだ。


「なるほど。これはすべてスキルで?」

「いえ、実は最近、すっかり料理にハマっちゃいまして。自分でできるところは自分でやってます。でもこれくらいなら、時間があれば誰でも1から手作りできますよ」

「素晴らしい。これを私たちだけで独占しておくのはもったいないな。調理法を限定的に開示して、ぜひともグラルディア名物として広めたい」


 す、すげえ。

 ピグカツサンド大出世だな!?


 こうしてオレは、ピグカツサンドを「グラルディア名物ピグカツサンド」として売り出す手伝いをすることになったのだった。


 ◆ ◆ ◆


 それから約2年。

 ピグカツサンドは名物として大成功をおさめ、今では全国の美食家たちがこぞってグラルディア帝国を訪れるようになった。


 一方その頃。

 オータム家は不正を摘発され、貴族の地位をはく奪されて一家離散となっていた。

 今、両親だった2人は投獄され、兄2人は行方不明だという。


 まあ、兄たちはちやほやされて育った結果のあれだから、気の毒ではあるけど。


 実は少し前、オレが王族になっていると知った兄から手紙が届いた。

 心を入れ替えていれば手を差し伸べないでもなかったが、謝罪もなく媚びを売ってくるその内容にげんなりし、手紙は込められた欲望とともに焼却炉行きとなった。

 当然、返信もしていない。


 ぼっちのまま子どもを助け、車にはねられて死んで。

 転生先でも才に恵まれず、おまけに雑魚スキルしか与えられず追放ってどんだけ神に見放されてんだって思ってたけど。


 きっとオレは、むしろ救われたのだ。

 おかげで今は才能を認められ、王族だけでなく使用人たちとも良好な関係を保ちとても幸せな毎日を送っている。

 リディもすっかりオレに懐いて、最近は妹というよりもはや――

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