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第10話 特製ピグカツサンドでおもてなし

 話がひと段落し、オレは城内の厨房へと案内してもらった。


「食材は何でもご自由にお使いください。分からないことや足りないものがありましたら、いつでも何なりと」

「ありがとうございます」


 キッチンは元いた小屋の数倍の広さがあり、器具も食材も豊富に揃っている。

 ――のだが。


 食材の鮮度が少し落ちてるな。


 この世界には冷蔵庫がない。

 オレはスキル【美食】で冷蔵庫らしきものを生成できたが、普通は水系のスキルか氷系のスキルを使って貯蔵するのが一般的だ。

 しかもこれだって、運よくそういうスキルを持っている人がいれば、の話。


 そのため肉や魚はそのまま保存するのではなく、干し肉や塩漬け、燻製などの加工品に変えて貯蔵するのが普通だ。


 ――よし。

 せっかくだし、やっぱりどうせなら最高のものを食べさせたいよな。


 オレは執事に頼んで捕えたてのピグを2~3頭用意してもらうことにした。

 執事のスキルは【飛行】らしい。


 そしてアイテムボックス内に入れていたキャベツや青じそ取り出す。

 オレが栽培して収穫した農作物は、なぜか劣化と無縁で収穫直後の瑞々しさを保ち続ける。


 調味料もあまりいいのがないし、持ってきたのを使うか。


「お待たせしました。ピグ3頭です」

「早っ!? まだ1時間ちょっとしか経ってないですけど!?」

「恐れ入ります。これが私のスキルですので」


 こうして上位スキルの実力を見せつけられると、羨ましいという気持ちが湧かないでもない。

 いやでも! この【美食】のおかげで今ここにいるわけだし!


「スキル【美食】!」


 目の前にあった3頭のピグが、綺麗に処理されたピグ肉へと変化する。

 今日はヒレ肉にしよう。

 程よい厚みにカットし、塩コショウを振って小麦粉、卵、パン粉をつけたら。


 油で揚げる!!!


 ジュワっという音のあと、パチパチと小さな泡を作りながら、衣が香ばしい小麦色へと変わっていく。

 オレは揚げ物をしているとき、この音を聞きながら様子を眺めるのが大好きだ。


 こんがり揚がったらウスターソースにさっと浸し、事前に用意していたふわふわの食パン、からしマヨ、千切りにしたキャベツと青じその上に乗せる。

 染みこみ切らないソースが、わずかにキャベツと青じそを伝って流れた。


 よし。あとはからしマヨを塗ったパンを重ねて半分に切れば完成だな。

 完成したピグカツサンドをお皿に盛りつけ、王様と王妃様、そしてリディの待つ部屋へと運ぶ。


「お待たせしました。特製ピグカツサンドです」

「これ! これよ!」

「……なんとも変わった料理だが、どうやって食べるのかね」

「このザクザクしたものに包まれたお肉がピグカツかしら」

「そのまま手に持って、好きにかぶりついて食べるのよ!」


 リディは自慢げに両親にそう説明する。


「手で食べるのか」

「でも、ピグカツサンドはそう食べるのが正式な食べ方なのよね。だったら――」


 手で掴んで食べるという行為は、この国では行儀の悪いこととされている。

 が、それはよその国では逆になることもある。

 それを「文化」として受け入れられるこの一族は、やっぱり素晴らしい。


 皆それぞれピグカツサンドを手で掴み、口へと運んだ――

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