第1話 15歳にして追放されてしまった
「二度と私に顔を見せるな! 出ていけ!」
「……今までお世話になりました」
――いったいなんでこんなことになったんだ。
オレ、何かそんな悪いことしたか?
オレ、レイア・オータムは、15歳にして実家であるオータム家を追放されてしまった。
◆ ◆ ◆
オレが今いるこの世界は、グラルディア帝国という中世ヨーロッパ風の世界。
この世界では、15歳になると1人につき1つスキルが与えられる。
それは人知の及ばない神の力とされていて、たとえ貴族であっても選ぶことのできない、いわゆるガチャのようなシステムだ。
そのため誕生日になると、皆神殿へ行き授与されたスキルを鑑定してもらう。
もちろんオレも例外ではなく、両親とともに神殿へと向かった。
「レイア・オータム、そなたのスキルは――んん?」
「え?」
「い、いや失礼。そなたのスキルは――【美食】じゃ」
「び、びしょく?」
「美しい食事と書いて【美食】。正直ワシも見たことがないんじゃが、恐らく食に関するスキルじゃな」
し、食に関するスキルって、それはつまり、ただの生活スキルってことか?
しかも食事に限定された生活スキル。
与えられるスキルは、一般的に血筋でおおよそのランクが決まっている。
うちのような上位貴族の家系は、普通ならば相応のスキルが授与されるはずで、それは決して生活スキルなんかではない――はず。
オレには兄が2人いるが、どちらも戦闘に有利な上位スキルを授与され、騎士として出世の道を歩んでいる。
なのに。なのにオレは――。
チラッと両親を見ると、父様は屈辱と怒りに震え、母様は失望したような目でオレを見ていた。
オレは兄2人に比べ力が弱く、剣も体術も今一つパッとしない。
つまりオータム家の落ちこぼれで、今までもずっと兄たちに笑われ虐げられて生きてきた。
だからこのスキルの授与は、オレにとって唯一の希望だった。
なのに結果は【美食】。
結果、帰宅後散々兄たちに笑われ、馬鹿にされ、そして。
オレは役立たずの烙印を押され、家を追い出されてしまったのだった。
◆ ◆ ◆
――さて、これからどうするかな。
今あるのは、数日分の着替えと食料、護身用の短剣、それから手切れ金として渡された金貨50枚。
つまりもう、オータム家を名乗ることすら許されない。
オレはこれから、ただのレイアとして生きていくのだ。
ずっと「家」という後ろ盾がある中で生きてきた貴族にとって、これを失い身一つで放り出されるのがどれだけ心細いことか。
それが分からないはずがないのに。
なのに、誰もオレのことを助けようとはしてくれなかった。
スキル【美食】を活かせる料理人として残る道すら許されなかったのだ。
だがしかし。
オレ個人のことを言うと、そんなに悲観的になっているわけでもない。
実はオレには、誰にも言っていないある「秘密」がある。
それは――オレが「転生者」であるということだ。