第8話 女王陛下は、旦那様の部屋で甘い夜を過ごします。
晩餐会の後、ウルとリオの夜のお話。
糖度高め、色っぽいシーンです。
苦手な方はご注意ください。
男性が好みそうな、落ち着いた色の天蓋を見上げながら、ウルは不機嫌だった。
そんなウルに構わず、夫のリオは頬や瞼に口づけを落としていく。
「この部屋は城の中でも、かなり端のほうにある。夜は誰も通らない。話し声も、それ以外の声も気にしなくて良い」
「明日は、お義母さまとお出かけするんです! 私があまり体力がないことは、あなたも知っているでしょう?!」
「一、ニ度くらいなら翌日に響かないことも知ってる。それに、何度か敬語も遣ってた」
「んうっ、はぁっ……。『ですます調』は丁寧語ですっ! 場合によっては、このお城のメイドたちに遣うこともあります!」
「そんなこと、どっちでも良いよ」
ウルは呆れた。
「二人きりの時にリオに対して敬語を遣うと、ペナルティとしてキスをする」というルール。
それは、婚約者としても夫婦としても、なかなか二人の関係に馴染めなかったウルが、リオに気後れしないようにと設けられた。
ルールの基準は『敬語』だ。
しかしリオは今、それを「どっちでも良い」と宣った。
「このペナルティー、そろそろ止めにしませんか? 年上だろうと、もう、あなたに遠慮はしていません」
「嫌だ」
(分かってた。そういう言うと、分かってたけど……!)
ウルはベッドに組み敷かれ、時折、深いキスを受けながらも何とか説得しようする。
このベッドも部屋も、リオが独身時代から使っていたものだ。
何となくだが、雪の国のベッドよりリオの匂いが濃いように感じる。
「ここはあなたの実家で、雪の国ではないの」
「だから?」
「だから、節度を守って……」
「夫婦が同じ部屋で眠るんだ。誰も気にしてない」
「叩くわよ?」
ウルが右手を宙に浮かせる。
「できるものなら、どーぞ」
そう言ったリオは、楽しそうにウルの両手をシーツに縫い止めた。
晩餐前の出来事もあり、ウルは怒っていた。
旅の疲れから、うたた寝をしてしまったウルが目を覚ますと、ニマニマと間近で笑うリオと目があった。
そして、置き時計で時刻を確認して飛び起きた。
なぜ起こしてくれなかったのか? という問いかけに、「寝顔が可愛かったから」という仕様もない返事が返ってきた。
結局、晩餐会に十五分遅刻してしまったが、リオの家族は全く気にしている様子はなかった。
皇太子レオンと婚約者のセレーナのほうが後からやって来たことで、ウルは少しホッとした。
そのうえ、リオの母である皇后は約束通り、町歩きにウルを誘った。
(今度こそ、失敗するわけにはいかないのよ。お義母様の前であくびをするようなことなど、もってのほかだわ)
手は動かせない。
しかし、苛立ちにまかせて、リオのみぞおちに膝を入れた。
ナイトドレスの裾が捲れ上がったが、この際どうでも良い。
痛みでリオの力が抜けた隙に急いで起き上がり、ベッドから降りようとする。
しかし、後ろから伸びてきた腕が腰に巻き付き、痛くはないが強い力で引き戻される。
そして、耳元で囁かれた。
「逃げられると思った?」
はぁ……。
諦め半分、くすぐったさ半分の吐息が、ウルの口から零れた。
TLっぽい話になりました……
恋人や夫婦間のこういう攻防というか、やり取りが好きなんです。(何の暴露)
お読みくださり、ありがとうございました。