表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/14

第3話 弟の第二皇子が、妻にぞっこんらしい。

砂の国の皇太子。

第二皇子リオの兄のターンなのですが、

とにかくこの人が動いてくれず、執筆まで時間がかかりました。



 砂の国の皇太子レオンが、インク壺にペンを浸したところで、廊下から足音が聞こえてきた。


 レオンは一度ペンを置き、見事な金の髪を掻き上げた。


 黒髪に青い瞳の第二皇子、リオとはまた違う雰囲気だが、一目で高貴な存在だと分かる空気を纏っている。

 

 襟足を綺麗に切り揃えた短めの金髪と金茶の瞳は、「獅子」を表す名を付けられた男として、名前負けしていない。


 

 コココンッ

小気味良いノックが聞こえ、入室の許可をする。

このノックの仕方をする者は一人しかいない。


 扉が開くと、レオンより一歳上――、二十八歳の一見軽そうに見える男が笑顔で近付いてくる。


 この国の宰相の嫡男である、アランだ。

見かけによらず、そこそこ……いや、かなりできる男である。

また、彼は第二皇子リオの右腕、ランドの兄でもある。


 そして、アランも、レオンが最も頼りにしている側近だ。

また、二人は乳兄弟であり幼馴染。

リオとランドの関係と、まったく同じである。

 

 しかし、皇太子、つまりは次期国王の側近だということに関しては、責任の重さが異なる。


 また、弟のランドも十分に毒舌だが、この男は更に上を行く。

そして、常に胡散臭い笑顔を浮かべているのだ。

しかし不思議と、周囲からはそれが好ましく思われているらしい。


(分からない……)


 今も、にこにこと笑みを浮かべながら、執務机に向かうレオンに近付いてくる。


「殿下、進捗はいかがですか?」


「今日の分は終わった。まだ余裕があったから、明日の分に取り掛かっていたところだ」


 比較的、砂の国は平和な国だが、やはり国民からの陳情も上がってくる。

それら全てに目を通し、是非の回答とサインを記す。


「お疲れ様でございます。しかし、そろそろお支度をしなければいけませんよ」


「支度? あぁ、リオと雪の国の女王が来ているのだったな。晩餐用の装いに着替える。華美すぎず失礼にあたらないクラヴァットを見繕ってくれ」


「承知しました。しかし、『雪の国の女王』などと、他人行儀な。義妹君でございましょう?」


「では、何と呼べば()いのだ? 婚姻式に出席しなかったため、今日が初対面(はつたいめん)だ」


「ウル様でよろしいのでは? あー、名前で呼ぶことをリオ殿下がお許しになれば……ですが。最初はスノウ陛下、もしくはスノウ様が無難でしょうか」


(妻の名前を、他の男が呼ぶことを許さない……か)


「あの風来坊のリオが、妻にぞっこんとはな」


 んっんん! 

 笑いを堪えるように、アランはわざとらしい咳払いをした。


「殿下、『ぞっこん』はいささか古い言い回しかと……」


「そうなのか? では、どのように言えば()いのだ?」


「そうですね……。そう改めて尋ねられますと、迷いますね」


「では、ぞっこんでも()いではないか」


「まぁ、そうなのですが……。しかし、私と二人の時だけに使う言葉にいたしましょう」


「そうか」


 鏡の前でクラヴァットを結び、ジャケットを羽織る。


「さぁ、食堂に参りましょう。レオン殿下が夢中の婚約者様、セレーナ様がお待ちですよ――」


 アランの動きがピタリと止まった。

 そして、興奮気味に口を開く。


「そうです! 『夢中』です! ぞっこんを言い換えるなら『夢中』ですよ!」

「なるほど」


(なぜ、コイツはこんなにも興奮してるんだ……まぁ、リオがやっと()(ひと)を見つけたのであれば、何でも良いか)



()(ひと)』の言い回しを、後に指摘されることをレオンはまだ知らない。


皇太子レオン、何か思っていたより天然な人になってしまった……

もっと、シュッとしたイメージだったのに。

しかし、仕事はできる人です。


お読みくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] わーい♡ 更新嬉しいです! レオン殿下、これまでのお話の中で想像するイメージは、かたくてつまらない、みたいな感だったので、天然マジメ君で意外でした! しかし、めっちゃタイプです! 異世…
[良い点] 可愛いくて楽しいお話!! 本当におとぎ話みたい!! 好きです。大好きです、こういうの!! [気になる点] 視点を変えて、ちょっとずつ進むオムニバスもイイ!! 平和で仲良く暮らしてる国の、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ