第13話 女王陛下も、作戦会議に参加します。
久しぶりに更新できました。
ウルとリオ、そしてランドはお互いが持っている情報を共有した。
サラと会話した内容を勝手に話すのは気が引けたが、サラとランドが幸せになるならば、と当たり障りない部分をウルは話した。
そして、サラが雪の国での生活に強い関心を示していたこと。寒さに弱い人が、どのように暮らしているのかと熱心に尋ねられたことを話すと、ランドの目が優しく細められた。
(良かった。いつものランドに戻ったみたい)
ウルが優しく見守るように微笑み返すと、ランドは我にかえったように咳払いをして、真面目な表情に戻った。
「その子爵令息について、他に何か情報はないのか?」
ウルの話を聞いている間も、リオは腕を組んで考えを巡らせていたようだ。
「サラ曰く、一目見れば忘れないほどの美しい容姿をしているのだそうです」
そう報告したランドが小さく舌打ちをする。サラが他の男を褒めることが気に入らないのだろう。
しかし、すぐに落ち着きを取り戻し、何事もなかったかのように続きを話しだした。
「あまり日光に当たらない生活をしていたのか、女性のように白い肌なのだとか。そして、最も特徴的なのは紫の瞳だそうです」
「なっ……! 白い肌に紫の瞳?」
」
リオが目を見開いた。
そして、リオとランドは同時にウルの顔を見る。
「な、何? 紫の瞳なんて珍しくないでしょ?」
「いや、砂の国では、まず見ないな。まったく居ないとは断言できないが」
「稀少な能力持ちなら、容姿も稀少だということもあるのでは? 成長するにかけて瞳の色が変わることは一般的によくあることですが、紫に変わったという前例は聞いたことがありません」
「俺もないな。突然変異と生まれつきの可能性、両方から探る必要があるな。パーティーに出席していたということは、幼い頃の姿を知っている者がいるんだろう?」
「それが……。『女児のように可愛らしい顔立ちだった』というだけで、瞳の色まで覚えている者はいないそうです」
「紫の瞳なんて、一度見れば忘れないだろ。――つまり、その時点では茶色や青、緑……、よくある瞳の色だったと考えるのが自然だな」
「私も、そう思います」
「リオ、これ読んでみても良い?」
二人の会話を聞いていたウルが、テーブルの上にある巻物を指さした。
「あぁ、良いよ」
リオが巻物を留めていた紐を外し、ウルが読みやすいように手渡した。そして、ウルの膝の上に厚めのクッションを置いた。こうすれば、肘を乗せて読めるため、腕が疲れにくい。
「ありがとう」
その様子を見ていたランドが、ふっ、と笑った。
「何だよ?」
「いえ、少し羨ましくなっただけです。お気になさらず」
「お前たちのために必死になってんだよ」
「そうですね。ウル様もありがとうございます」
「いいえ。どこまで役に立てるかは分からないけれど、できる限りの手を尽くすわ」
ウルの言葉に、ランドは後頭部が見えるほど深く頭を下げた。その動作だけで、サラに関してどれほど真剣なのかが伝わってくる。
「そういえば、雪の国の王族は魔法を使えないんだよな? ウルや先代の王だけじゃなく、もっと前の代も……」
「そうよ。私たちは、神の祝福や加護を受けてないから。王族だけではなく、すべての国民が魔法は使えないはず。あぁ、でも……北の魔女は例外ね。年齢すら分からないし、人と呼べるかどうかは何とも言えないけど……」
「その魔女と面識は?」
「私はないわ。おじい様なら、会ってるかもしれないけれど。雪だるまの呪いを受けた成り行きは、魔女の気まぐれなのか、魔女の逆鱗に触れたのか、私も父も知らないの。おじい様が頑なに話さなかったそうよ。ただ、“王位を継ぐ者への呪い”ということは、後者の可能性が高いと思う。――そうだ。たしか文献に、魔女の瞳も紫色だったって記されてたはず」
「なるほど……」
呪いが解け、雪だるまから人間の姿に戻ったウルの髪を、リオは一房持ち上げて口付けた。
すぐにランドの咳払いが聞こえたが、リオは何食わぬ顔をしながら呟いた。
「もし、魔女の呪いが絡んでるなら、かなり厄介な話になりそうだな……」
お読みくださり、ありがとうございました。




