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隣街へ ②

宿に戻ってから、しばらくすると皆が戻ってきた。

出迎えた皆の顔は明るい。その表情から、交渉が上手くいったのだと感じられた。



「ルーカス、やったな!」


「アーノルドさんのアドバイスのおかげですよ。それに、今回の一番の功績はサラだ」


「ふふ、たまたま知り合いだったからよ。私1人では上手くいかなかったわ。

リナ、今戻ったわ。」


「お疲れ様でした。」



私は皆に労いの言葉をかける。

どうやら当主様は、サラお嬢様のお知り合いだったようだ。サラお嬢様の人脈は、この先もきっと役に立つのだろう。



「出店が決まったのですね。おめでとうございます」


「あぁ、皆で祝杯を上げよう!」


「アーノルドさんは、自分が飲みたいだけでしょ?」


「支払いは私が持つわ。皆、好きに飲んで。私は、部屋に戻って休むことにするわ」


こういう時は自分がいると気を遣うだろうし、盛り上がれないでしょ?と言われて部屋に戻って行った。

お嬢様がそんなことを言うなんて意外だった。てっきり、ルーカスと一緒にいるものだと思っていたのに。


お嬢様を見送った後、ふとルーカスに視線を向ける。

ルーカス…? どうしてそんな顔をしているの?




「リナも、さぁおいで」


「アーノルドさん、あのっ、私は━━」



せっかくのお誘いだったけれど、


私はサラお嬢様が心配なので、自分も部屋に戻ると伝えた。


アーノルドさんがいるとはいえ、やはりルーカスと一緒にいるのは気まずい。


「じゃあ、男同士で盛り上がろう!ルーカス」


アーノルドさんは、お酒が大好きなので意気揚々とルーカスの肩を抱いて行った。


それにしても、あの時のルーカスの顔……。


サラお嬢様が部屋に戻ると言った時、一瞬だけど右の口角が上がっていた。

昔から知ってる私だから分かる。あれは、ルーカスが嬉しい時の癖。


あまり表情が豊かではないから、分かりにくいけれど。

ルーカスは、サラお嬢様が来ないことが嬉しかったの?



ルーカスに聞くことも出来ないから、憶測でしかないけど。でも、どうして? 喧嘩でもしたのかな。


答えが分からず悶々としながら、部屋へと戻った。


私の部屋はサラお嬢様の隣だ。お嬢様の着替えの手伝いが必要だろうと思い、介助をしようと扉をノックした。


「リナ、着替えなら良かったのに。」


私は、お嬢様が入浴を終えるのを待ち、着替えを手伝う。


お嬢様は、上機嫌で、饒舌だった。


「リナはルーカスと一緒に行かなくて良かったの?」


「2人は幼馴染なんですってね。」


「これからは、私も1人で着替えぐらいできるようにならないといけないわね」


「平民の方はこんな時どうするの?」


もういい加減にして!

少しは黙っていて! お願いだから、放っておいて!


お土産を購入した時のウキウキとした気分から一転、私の心はどす黒く塗りつぶされていく。


どうして、そんなにルーカスとのことを聞くの?


暗に自分が平民になるかもしれないと仄めかすの?


それは、あなたが、


ルーカスと結婚すると言いたいの!



私の口から何を言わせたいの?


泣きそうな私を見て、いい気味とでも見下してるの?


優しい言葉をかけるふりして、本当は私をばかにしてるんでしょ!


もう、お願いやめて!



淡々と受け答えをしながら、

心の中では必死に叫び声を上げていた。


もうこれ以上聞きたくない。


限界が近づいてくると、これ以上心に響いてこないように、無意識に耳に蓋をする。

サラお嬢様の声が、私の耳を素通りしていくように。


もう、正直鬱陶しい…


どんどん醜くなる自分も嫌。


サラお嬢様とこれ以上一緒にいるのは耐えれなかった。



黙々と介助を終えると、即、退室した。


お茶でも飲みながら話しましょう、というお誘いも無視して。


明日へは街へ帰れる。

もう少しの我慢…


嫌な気持ちを洗い流すように、勢いよくシャワーを浴びて、ベッドに横になった。


もう、早く帰りたい





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