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勘違い

作者: 藤野

 暑い日差しを受けて木の葉がキラキラと煌めき、漏れ出した光が地面に模様を作る。

 その上をサッカーボールが転がり、それを子供達が取り囲む。

 なんだか懐かしい。俺もよくここで遊んでいた。

 夏休みの、それもうだるような暑さの日、誰だったか——同い年くらいの子とここで遊んだ。

 周りが木で囲まれていて、小高いこの公園はなんだか別の世界のようだった。


 記憶はキラキラしていて曖昧で、ここで遊ぶと時間の流れが無いような不思議な感覚になっていた気がする。

 二人で、そう、あの子供達のようにボールを蹴って遊んでいたんだ。男の子と、そうだ、ごく普通の小学生の男の子と。


 確か俺が落ちているボールを見つけて、一人で蹴っていたんだ。そしたら男の子が追いかけてきた。

 手を伸ばして、走りながら。

 ボールの奪い合いが凄く楽しかったんだ。

 あいつも上手かった。

 ただ、顔が思い出せない。


 首から上はどんなんだったっけ。


 何か大切なことを忘れている気がする。


 コツン、と足にボールが当たった。

 あの子供達のかと思って蹴り返す。

 ……でも、何か感覚が違う。重くて固かった。


 黒っぽいそれはサッカーボールと同じように木漏れ日を浴びて転がり、子供の足にぶつかり止まった。

 目が合う。

 それは笑った。



 ……ボールじゃない。



 子供の頭だ!



 子供の頭があるはずの場所には向こうの風景が見えて、俺は叫ぶまでもなく走り出した。


 そうだ俺はあのとき頭を蹴っていたんだ。それをあの子供が返して欲しくて追いかけてきた。

 だから上手かったのかよ——!


 ふら、と前につんのめる。


「うわ」


 地面が迫って、額に激しい痛みが走る。

 多分皮が剥けた。でもそんなのどうでもいい。

 追いかけられている気がする。でも後ろは向かない。向いたらとんでもないことが起きる気がして。


 いや振り返った時が終わりなのだ。


 再び走り出す。じんわりと暖かいものが頬をつたっている。


 あのとき俺はどうなった?


 なぜ覚えていない?


 なぜ……?



 公園から出て振り向くと、子供の姿は無かった。

 その代わり俺の体が見えた。

 首から上が無かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 構成に無駄がなく、テンポが良くて読みやすい作品ですね。 生首サッカー、イメージすると生理的恐怖感が良い感じですね。 思考を司る脳を収めた頭部を粗末に扱う事への、本能的忌避に由来する恐怖でし…
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