幕間
「──あれ?」
晄は両目をしばたかせながら、三つの空席を順繰りに見回していた。
ここには明とクロエと、その他に名前も知らない女の子が座っていたはずだ。
つい先ほどまで、自分は彼らと一緒にご飯を食べて、楽しくお喋りをしていた。
だというのに、今目の前には誰もいない。彼女がほんの一瞬意識を逸らしていた間に、彼らは一斉に姿を消してしまった。
「……夜渚くーん?」
また明の悪戯だろうかと思い、とりあえずテーブルの下を覗いてみる。
が、誰もいない。地面には食べかけのクレープと割り箸の片割れが落ちているだけだ。
最後に見た時、あの女の子がクレープを美味しそうに頬張っていたことを思い出す。仮に何かのドッキリだとして、あんなに躾けの行き届いている子が食べ物を放り捨てていなくなったりするだろうか?
クロエにしてもそうだ。彼女は同年代の女子と比べても気難しい性格だが、黙ってどこかに消えてしまうような人間ではない。どれだけ急いでいたとしても一言くらいは断りを入れるはずだ。
「じゃあ、どうして……?」
見当もつかない。だが、嫌な予感はした。
奇妙な感覚だ。自分は何一つ分かっていないくせに、同時に"何かあった"という確信を得ている。
それはただの誇大妄想かもしれないし、自分に宿る不思議な力がそう思わせているのかもしれない。
どうあれ晄は、その直感を信じることにした。
料理のパックに蓋をして、「おトイレ中! まだ片づけないで!」と記したメモを貼り付ける。
そして走り出した。探す当てなどなく、しかし何かを見つけるために。
結論から言うと、彼女の予想は的中していた。
唯一つ、計算外だったのは。
この状況を作り出した者たちが、彼女自身を狙っていたということだ。