留守番だと!?
公務が始まっまたのはいいが、どうすればいいんだ?班長は開始してから5分ただ座っているだけ。
「は、班長?」
「どしたの?空野くん。」
「俺達は、何をすれば?」
ほかの3人もよくぞ言ってくれたという目で俺を見てきた。
「んー。特にないかな。ここにいていいよ。」
は?
「公務始まったのに、ここにいてもいいんですか!?」
「まぁね。第3班はお留守番係だからっ。」
「それじゃ、巡回行ってきまっす!」
他の班の人たちはぞろぞろ出ていく。
お留守番係は、ローテーションなのだろうか?
「班長、お留守番係って日替わりですか?週替わりですか?」
「何言ってんの?毎日だよ?」
『え?』
俺たちは揃って声が出てしまった。
「まぁ、事務みたいなものだと思ってくれればいいよー。」
事務って言っても、窓口はほかの班の保安員が座っているし。
プルルルル
「はい、保安検査場ですね。ハイハイ、男性と女性が揉めている。分かりました。今から向かいます。」
「重田!通報あったから、俺たち出てくる!新人にここやらせといて!」
「はーい」
「それじゃ、空野くんと足立ちゃんお願いねっ。」
「はい!」
ようやく仕事が貰えてほっとしたのもつかの間、おばあさんが落し物を探しにやってきた。
何をしていいのかわからなかったが、話を聞きながらメモをとる。
「ええと、赤色の携帯電話ですね?スマートフォンではなくてガラケーですか?開いたり閉じたりする。」
「こんな年寄りでもスマートフォンくらい使うわいなぁ。ほほほほぉ」
「そうなんですか。私の父親はガラケーなんですよ。」
「そうかい。そうかい。私は、孫に色々教えて貰ってねぇ。」
「いいお孫さんですね。それでは、落し物を探して参りますので少々お待ちいただけますか?」
落し物は第3班の部屋のちょうど裏に保管してある。
「班長、遺失物保管所の鍵ありますか?」
「あー。うん。ほいっ」
「ありがとうございます!」
鍵を受け取って、中に入る。
「す、凄いなぁ。」
棚にものすごい量の落し物が保管されている。年間8000万人を超える空港だからこんなもんだろう。それに、国際線ターミナル室と第1ターミナル室にも遺失物保管所はあるので合わせるととんでもない数になるだろう。
「お、あった。これだな。」
今日の日付のダンボール箱に赤い携帯が入っていた。他にも、財布やクレジットカードなどが詰め込まれている。
「一日でこれかぁ・・・・・・。」
赤い携帯電話を手にして、部屋を出る。
「班長!鍵ありがとうございました!書類ってどこにありますか?」
「上から2番目の引き出しっ!頑張ってんじゃん!」
「はい!ありがとうございます!」
窓口に戻ると、足立とおばあさんが楽しそうに話していた。
「ありましたよ。これで合っていますか?」
「あー、それそれ良かったぁ。」
「それじゃあ、こちらの書類を書いていただけますか?」
無事、落し物を引渡した。
「やっと昼休憩だぁ。」
出動した先輩はまだ戻ってこなかった。昼休憩までに5人ほど落し物を探しに利用者が訪れた。
昼食を取ろうと部屋に戻ると
「あ、空野くん主任室に行ってくれる?」
すっかり忘れていた・・・・・・。
「分かりました。」
午前中だけで羽田空港がどれだけ凄い空港なのか分かるほど、良い経験をすることが出来た。