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ありがとう、と言えなくても……  作者: デルタミル
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第五幕 -戦慄の足音-

 ――――とりあえず、一旦整理した方がいいかもしれない。


 今年になってからこの病院で死亡者数が増え始めたのは、モチヅキ曰く『招かれざる客人』がやってきてからだった……

 ヤツは時には患者として、時には看護師としてあたしたちを監視してた……

 そして、なぜか分かんないけど突然患者を病室から運び出し、『隔離病棟』という名の『個室』へと連れて行った……

 おそらく、患者はその『隔離病棟』の中でヤツに殺されてる……

 里緒菜も……そして杏奈も…………ヤツのせいで死んだんだろう。



 そもそも『隔離病棟』に続くエレベーターはこの六階にしか存在しない……

 おかしいのは、例の『厚生労働省』がこの病院の調査をしたにも関わらず、おかしな点が見当たらなかったってこと。

『隔離病棟』の中にさえ入れば、絶対に殺人の証拠が見つかるはずなのに……

 まさか、証拠隠滅をされてたなんてことないよね。いや、でも可能性はあるかもしれない。いつ調査が入ってもいいようにしとかないと大変なことになるもんね。


 ――――ここにいる患者たちは『向精神薬』を服用してて、下手をすると『薬物』か何かで殺されてしまうかもしれない。

 でも『あたし』は違う。あたしは"薬を一度も服用してない"。つまり、薬による副作用なんか一切出ないから、自由に動けるとしたらあたしだけってことになる。




 もし、この病院で『闇社会』が動くとするなら……それはどんな時だろう?

 "見つかっちゃマズイ物"を見られた時? いや……もっと単純な話かもしれない。




 仮にあたしが『闇社会』の人間だとして……見過ごすことのできない状況があるとしたらそれは――






 ――"病院に忍ばせた『招かれざる客人』が誰かに捕まった時"じゃないかな。


 下手に騒ぎ立てられたり、警察に通報されたり、外に逃げられたりしたら非常に厄介だもん。あたしだったらそいつの口封じをして、この病院の全ての証拠を隠滅してさっさと逃げる。




 ……あたし一人だけじゃ『招かれざる客人』を捕まえるなんてできっこない。そのためには……モチヅキとおねーさんの協力が必要だ。

 でもおねーさんはあたしの正体を知ってショックを受けてしまってるし、協力者がモチヅキだけってのもなぁ…………

 どうしようかと悩み続けて、いつの間にか晩飯の時間になってた。






 おねーさんはまだカーテンを閉め切ったまま、こっちに顔を出す気配はない。きっと……もう仲直りもできないかもしれない。

 でも……せめて、おねーさんは守ってあげたいな。あ、ついでにモチヅキのやつも……




 ――晩飯を済ませて少し時間が経った時、あたしの右側から棚をノックするような音が聞こえてきた。

 あたしは頭側のカーテンを少し開いて、棚越しに小声でモチヅキに話しかける。


「なに、呼んだ?」

「あぁ、呼んだ」

「またおねーさんに話聞かれたらどうすんの」

「別に聞かれてもいい、これは大事な話だからね。もうすぐ看護師が来ると思うから、手短に話す」

「わかった」

「この後、寝る前の薬と水を持ってくると思うけど、この『水』だけは絶対に飲むな。いいかい?」

「えっ……なんで?」

「――理由は後ですぐに分かる。それと、足元のカーテンだけは開けておくようにね。不審に思われたら面倒だから」

「おっけ」


 あたしは軽く返事をした後、カーテンを閉めて足元のカーテンを右に開いた。




 ――――夜の八時半を回った頃、入口から足音が聞こえてきた。入ってきたのは『おかむら』看護師だ。

 本物……?


「ミヤガワさん、お薬とお水をお持ちしましたよー」

「あー……えっとね……なんかさ、水を飲んだら気分が悪くなるんだよね……だから薬だけでいい?」


 ――さっきの晩飯の中にスープが入ってたのに、今のは少し苦しい言い訳だったかもしれない。


「えっ? でも、さっきのお夕食にスープありましたよね……? お飲みになられてたじゃないですか」

「あー、うん……さっきね、トイレで吐いた!」


『吐いた』と告げると、看護師はとても心配そうな表情になった。


「そ、そうなんですか……っ?! 体調が悪いんじゃ……今度から点滴に変えましょうか?」

「あーいいよいいよ、たまたまかもしんないし。なに、"看護師さん、ちょー優しくない"?」

「え、"私"ですか? 全然そんなことありませんよ! むしろ、患者様からはそういった気遣いを嫌がられることが多くて……」




 ――よし、本物みたいだ。




「"『陰キャ』っぽい顔してるのに、全然明るそうな人"だし」

「えっ……『いんきゃ』……? 『いんきゃ』って何ですか?」




 ――この看護師は間違いなく本物の『おかむら』看護師であることを確認したあたしは、とりあえず薬を飲むフリだけをして、奥歯に逃がす。


「はい、水は持っていってね」

「は、はい……? あ、あの『いんきゃ』って何でしょう?」

「いーじゃんいーじゃん、そんな細かい事はどーだってさ、ほらほら、さっと隣の患者さんの所に行きなよ」


 あたしが手でしっしと追いやると、看護師は渋々隣の患者の所に行った。


「――僕も薬だけでいい。水なんかいらない」

「えっ……えー…………??」


 看護師がどれだけ困惑してるのか、その声のトーンだけで容易に想像できた。






 ――二十一時の消灯時間を過ぎても、周囲に変化はなかった。

 あたしはベッドで仰向けになったまま、さっきの言葉の意味を考えてた。

『理由は後ですぐに分かる』……か。全然分かんないんだけど!



 …………でもいつもと違うことに気が付いたのは、深夜零れい時が近づいてきた時だった。



 ――そういえば、ここ数日と比べて眠気が襲ってこないな……何でだろ?

 身体がうずうずするくらいに目が冴えてた。




 あれやこれや考えているうちに、電子時計の表示はもう深夜一時を回ろうとしてた。






 その時だった――





 ガシャン……………………タッタッタッタッタ…………タッタッタ……………



 何か重たい音と共に遠くから誰かが廊下を走る音が聴こえてくる。なんか慌ただしくしてるのか、声も聴こえる。




「……えず…………を………………し…………」


 女の声だ。何を喋ってるのか聞き取れない。


 タッタッタッタッタ…………


 また廊下を走る音……

 深夜になると夜勤の人たちは忙しくなるのかな…………と考えて、あたしの身体全身に危険信号が走る。

 背筋が凍り付き、鼓動が早くなってく。あたしは掛け布団を頭までしっかり被って、震える呼吸を何とか落ち着けようとした。




 ――今、廊下を走っているのはスタッフじゃない……!!




 タッタッタッタッタ……………………タッタッタッタッタ……………………


 その足音がだんだんと近づいてくる。


 タッタッタッタッタ……………………タッタッタッタッタ……………………!


 タッタッ………………!


 ――急に足音がこの病室の前で止まった。




 コツ……コツ……コツ……


 その足音は病室の中に入ってきた。


 サー…………


 隣のカーテンが静かに動く音が聴こえた。

 だめだ……! 侵入者の姿を確認したいけど、とてもそんな勇気なんかない!


 サー…………


 再び隣のカーテンが静かに動く音、そして足音は移動する。


 コツ……コツ……


 ……だ、誰かがあたしの足元にいるっ!!


 サー…………


 少し遠くからカーテンが静かに動く音が聴こえてくる。そいつは今おねーさんの所にいるみたいだ。


 サー…………


 やがて、また少し遠くからカーテンが静かに動く音が聴こえた。







 ……………………あれ? どうしたんだろう? 急に静かになった。






 ――シャァアッ!!!


 カーテンが思いっきり開けられるような音が聴こえて、もうあたしの心臓は爆発寸前だった。

 あたしは寝たふりを続けて、息を潜める。




「――――ひひっ?!」


 ――シャァアッ!!! タッタッタッタッタッ!! タッタッタッタッタッタッタ…………ガシャン…………


 再びカーテンが思いっきり閉められるような音が聴こえた後、その足音は病室から遠ざかり、廊下の向こうへと消えて行った…………最後に何か重たい音が聴こえて、それっきりだった。




「はぁっ……はぁっ……はぁっ…………」


 乱れる息を何とか鎮めようとする。なんだったの今の……!?

 まさか、あれが『理由は後ですぐに分かる』ってやつの正体!?


 今、走り回ってたのって…………


「――――っ!」


 それに気づいた瞬間、再び心拍数が上がっていった。

 どうしよう……もしかして、あたしが起きてるのバレたんじゃ……!? こ、殺される!




 でもその足音はいつまで経っても聴こえてくることはなかった……






「ミヤガワさーん、朝ですよーっ」

「ひゃぁっ!?」

「きゃっ?! え、なに?!」


 ――突然名前を呼ばれたあたしは悲鳴を上げながら跳ね起きる。


「はぁっ……はぁっ……!」


 荒くなった息を整える間もなく、あたしは電子時計に視線を投げかける。

 朝の六時……そっか……あのまま夜が明けたんだ……



「どうされたんですかミヤガワさん?! 汗びっしょりですよ?! あ、ここにタオルがありますから、使ってください!」


『いけだ』看護師か……タオルを受け取ろうとして――


「ひぃっ?!」


 ギョロっとした目と目が合った…………ような気がした。


「えっ?! えっ?! どうしたんですか!? あ、あの……先生呼びましょうか?!」

「あっ…………」


 少し落ち着いてよく見てみると、『いけだ』看護師の不安そうな顔がそこにあった。まるで母親のような優しい目…………


「えっと……看護師さん…………『陰キャ』って分かります?」

「……はい? い、いん……きゃ??」

「ぶっ……くくっ…………あっはははは…………!」


 なんだかバカバカしくなってあたしは笑い転げた。


「ミ、ミヤガワさんっ?! ど、どうか落ち着いて……っ!」


 あたしはひとしきり笑った後、にこにこしながら応える。


「いやー、ちょっと怖い夢見てさー。ごめんね、心配かけて」

「そ、そうだったんですか…………もう、心配しましたよ……」


『いけだ』看護師はほっとした表情で、あたしに微笑んだ。


 ――――とりあえず水を一杯もらって心を落ち着ける。いつも通り薬を上手く処理して朝飯を食う。

 おねーさんはまだ怒ってるのか、カーテンは閉めきられたままだ。


 そうだ、モチヅキ…………! あいつと話をしないと…………!

『交流タイム』の時にでも話をしよう!




 ――――今日は珍しく、おねーさんは遊戯室には来なかった。やっぱり、昨日のことが原因で心を閉ざしたのかもしれない…………

 いずれちゃんと謝らないといけない。




 そのためには、まずはここを乗り切らないと!



 あたしは昨日と同じ場所にぽつんと座ってるモチヅキの所へ行く。


「モチヅキ…………」

「やぁ……どうだった? 昨日の夜は刺激的だっただろう?」


 彼は薄気味悪い笑みを浮かべながらそう言った。

 あたしはモチヅキの隣に座って、少し愚痴ってやる。


「マジでびびったんだからね。殺されるかと思った」

「……あぁ、きみ、近々連れていかれるかもね――」

「――だよね、絶対そんな空気を感じ――――って、え……? 今なんて?」


 あたしはもう一度モチヅキに訊き返した。


「うん、だからきみは近々連れていかれるかもって言った」

「またそーやって怖いこと言う……」

「いや、それがあながち冗談じゃないかもしれない」

「……どーゆーこと?」



 モチヅキは順番に説明してくれた。まず、誰かが『隔離病棟』に連れていかれた日の夜に飲まされる水には、必ずと言っていいほど多量の『睡眠薬』が仕込まれてると。なぜそれが分かるのかと言うと、これも『匂い』なんだそうだ。普通の水とはなんか違うとこいつは判断して、その日の水は飲まないようにしてたらしい。


 そしてその水はおそらく患者全員に運ばれてて、それを飲んだ次の日の朝はそれ以上にないくらい目覚めの良い朝を迎えるらしい。

 まあ、心当たりがあるかと聞かれればないこともない。実際にそれ以上にないくらい、最高の朝を迎えた日があったし。多分それがそうなんだろう。

 ちなみに、その問題の睡眠薬が仕込まれている日の夜中になると、誰かが廊下を走り回るそうだ。一度だけ病室の外から廊下を覗き込んで、ちょうど病室の前を走り去っていくヤツの後ろ姿を見たことがあると。

 そいつは看護師の服を着てて、短髪の女だったらしい。でもそれ以上は見つかる可能性を危惧して、自分のベッドに戻って狸寝入りをしたんだと。

 それでこの前、『モトヒラ』という患者が個室に連れていかれた日、同じようにして深夜を待っていると、また誰かが廊下を走る音が聞こえてきたんだと。

 そいつはあたしたちの病室に入り込んできて、モチヅキから見て正面にいた患者――つまり『イシカワ』とかいう患者が寝ていたカーテンを思いっきり開いて、「ひひっ」という笑い声を上げて、カーテンを閉めて走り去っていったそうだ。

 ――それから二日後、『イシカワ』という患者は隔離病棟に連れていかれた……

 そして昨日、そいつはあたしのカーテンをぶち開けて笑い声を上げた。つまり…………



「今度はあたしが連れていかれるかもしれないってことなんだ?」

「その可能性があるねって話だよ。取り越し苦労で終わればそれまでなんだけど……」

「そっか…………でも、ちょっと安心したよ」

「えっ……?」


 あたしはきょとんとした顔のモチヅキに微笑みかけてこう言った。


「だって……少なくともおねーさんは連れていかれずに済むってことでしょ?」


 すると、モチヅキは驚いた目をしてこう訊いてきた。


「……………………きみはなぜ……自分が危険な状態になっているにも関わらず、人の心配なんかできるんだ……?」


 あたしは少し目を伏せってこう答える。


「だって、あたしにはもうなんにもないから」

「…………」

「って、そう思ってたんだけど……死ぬ前に大事な物が出来ちゃった……」

「…………それが、『シライシ』って人?」

「うん……あたし、嬉しかったんだ。あのおねーさんから『妹ができたみたい』って言われてさ。『まりなちゃん』って呼んでもらえてさ……その時、あたしの中でなんか温かい気持ちっていうのかな……それが生まれてね。あぁ、この人には絶対元気になってもらいたいなーって思うようになったんだ…………」

「…………きみは……これから死ぬつもりなのか……?」

「どうせ、もうろくでもない人生でしかないから……どうせ死ぬなら、あのおねーさんだけは何としても守りたいんだ」

「…………そこまでの覚悟を……」

「覚悟なんてないよ。今だって手足が震えてるんだよ…………でも、やるしかないじゃん? なんもしなくたって、向こうから勝手にやってくるんだからさ……」

「……確かに」


 そう言って、モチヅキは少し穏やかな表情に変わる。


「僕にも友人と呼べるものが出来たさ……まぁ、その子はギャル娘だけどね」

「おいちょっと待て……それってあたしのことかよ……?」

「さあ? きみのことだとは一言も言ってないよ? ふっ……」

「なんだよムカツクなぁ…………」


 あたしたちはくすくすと笑いあった。でもそれも束の間――



「――気を付けて、『招かれざる客人』の気配がする。上手く隠れてるみたいだけど……この部屋にいるみたいだね。できるだけ目を合わせないように」


 と彼は言った。




 ――――『交流タイム』も終わって病室に戻ってきても、やっぱりおねーさんの所のカーテンは閉め切られたままだった。なんとか話をしたいな…………




 お昼の昼食の時間になっても、そのカーテンが開かれることはなかった…………本当にいるのかどうかさえ怪しくなってくる。

 もしあのカーテンの向こうにいるおねーさんが、実はおねーさんに化けた『ヤツ』だったらどうしようかと思ったけど、隣にいるモチヅキが何の反応も示さないあたり、その心配はなさそうだった。




 ――――処刑の時間はなんとやら、という歌の歌詞がどこかにあった気がする。

 そう、午後三時を回った頃、ついにやってきてしまった。






『いけだ』看護師が隣のカーテン越しに顔を覗かせて、こう言ってきた。


「ミヤガワさん…………これからミヤガワさん、『個室』に移ることになるみたいです」


 ついに来たか。


「――――はぁ?」


 とあたしは『いけだ』看護師に凄んでやる。


「か、患者さんたちから苦情が出てるそうです…………『夜に廊下で騒ぎだしてうるさい』って。何か心当たり、ありませんか?」


 へぇ……そういう風に話を持ってくるんだ……なるほどね…………


「知らねーしそんなこと、つーか、誰が言ってんのそんなこと?」

「それは患者様の『プライバシー』に関わることなので申し上げられません……」


 少し突っ込んだことを聞いてやるか。


「じゃあ、『いけだ』さんは"そいつらから直接話を聞いたんだ"ね? 『ミヤガワっていう患者が、夜に廊下で暴れてうるさい』って。どうなの?」

「……そ、それは…………」

「どうなのかって聞いてんの! 患者から直接聞いたのか、それとも他の誰かから聞いたのか!」

「えっと…………『まつした』看護師からそのようにお聞きしました」

「いつ? どこで?」

「えっと……今朝……遊戯室で…………」


 …………今度は『まつした』に成り代わってるんだな、『ヤツ』は。


「いいよ、じゃあ今すぐその『まつした』ってやつを連れてこいよ。問い詰めてやるからさ」

「えっ……でも……」

「じゃあおめえはそこで突っ立って待ってろよ! あたしが直接呼んでやるよ!」


 あたしは枕元のナースコールのボタンを乱暴に押した。すると、ボタンのすぐそばについてるスピーカーから女の声が聞こえてきた。


「――ミヤガワさんですか? いかがされました?」

「今すぐ『まつした』を連れてこい」

「…………はい?」

「だから、今すぐ『まつした』を連れてこいよ。話があんだよ!」

「――――あの……どうされたんですか?」


 …………この声……確か…………


「ミヤガワさーん? 聞こえてますー?」

「…………おまえ、今すぐ部屋に来いよ」

「…………」


 ――――返事はなかった。再び『いけだ』看護師に視線を戻すと、すごくおろおろしてて今にも泣き出しそうな顔になっていた。ごめんね……怖がらせちゃってさ。でもすぐに終わらせてやるから、もう少し我慢しててね。




 ――少しして、『ヤツ』はカーテン越しに顔を覗かせた。


「――呼びましたぁ?」

「あぁ、呼んだよ」

「で? なにか?」


『まつした?』のぎょろっとした目があたしを射抜く。でもあたしはもう動じなかった。

 怒りを露わにして静かに怒鳴ってやる。


「『あたしが夜に廊下で騒いでてうるさい』んだって?」

「あぁ、そのお話ですか。はい、"患者様からそうお伺いしてます"よ?」

「誰だよ? あたし、一度も騒いだことなんてないけど?」

「いえいえ、もう苦情が殺到してるんですよ? それはそれはもう……わーわー猿みたいに騒いでて落ち着いて寝ていられないと」

「だから"誰が言った"んだよ?」

「いやいや、『患者さんのプライバシー』に関わることなんで、"あたし"の口からは言えませんよー」


 チッ……このままだとラチが明かないじゃん……!


「あの…………一つ、よろしいでしょうか……?」


 ――思わぬ助け船が入った。


 サー……と向かいのカーテンが静かに開かれて、そこからおねーさんが顔を出した。


「あらあら、シライシさん、どうされましたー? やっぱりあなたもミヤガワさんのことで何かあるんですか?」

「あの…………」


『まつした?』はわざとらしくおねーさんに近づこうとするが、おねーさんは視線を逸らしてこう告げた。






「そんなに騒いでたって言うなら…………"巡回看護師さんが気づいてる"んじゃないんですか……?」






 ――――『ヤツ』にとって、それが致命的な一言だったことは言うまでもない。






「もし騒いでたなら、それこそもっと多くの患者さんから苦情が出てるはずですし……でもやっぱり一番おかしいのは、あなたたち看護師がその『異常事態に気付いてないこと』ですっ! ほんとにまりなちゃんは廊下で騒いでたんですか……! あなたたち、おかしいですよ……!?」


 最後ははっきりとした声で、『まつした?』の顔をしっかり見て、おねーさんはそう告げた。






「…………もしかしたら違う患者のことかもしれませんね、もう一度事実確認してきます」


 そう言って『まつした?』はすたすたと歩いて病室から出て行く。


「――あ、ちょっと『まつした』さんっ!」


 その背中を追うように『いけだ』看護師も出て行った…………




 ざまみろバーカっ!!


 と、入口を覗き込みながら心の中で叫んだあたしは、向かいにいるおねーさんに視線を向ける。


「えっと…………その…………」


 急におろおろしながら、恥ずかしそうに自分の前髪を指でくおねーさんの姿を見たあたしは、おねーさんの瞳をまっすぐに見据えて、こう伝えた。


「――助けてくれてありがとね、おねーさん」

「あっ……」


 やがておねーさんは笑顔になって、首を振りながらくすくすと笑った。



 そして、ベッドから起き上がったのか、モチヅキはあたしとおねーさんのベッドの間まで歩いてきて、あたしたちを手招きする。あたしとおねーさんは身体を起こしてモチヅキに寄った。


「――問題はこれからどうするかだよ。時間がない、僕の考えを手短に話す。おそらく今夜、『アレ』が動き出すはずだ」






 ――モチヅキはこう語った。


『招かれざる客人』は、あたしたちが何かしらの対策を講じていることに勘づいてる。これまでにこの病院で秘密裏におこなってきたことに関してもバレてると思ってる。

 そしてヤツの活動が特に顕著に表れたのは、『あたし』がやってきてからだという。

 つまり、ヤツが一番警戒をしてるのは、この『あたし』だと。

 あたしの行動一つ一つがヤツを刺激し、同時にヤツの活動にも影響を及ぼしている。だからあたしさえ消し去ってしまえば、自分の活動がこれ以上脅かされることもなくなるとヤツは考えるだろうと。

 そこで今夜、必ずあたしにコンタクトを取ってくるはず。

 だから、今夜飲まされるであろう睡眠薬を全員で処理しよう……と。




 ――話の途中であたしは小声でもう反論した。


「――ちょっと待って! ここにいるメンツでどうやって睡眠薬を処理すんの?! 見つかったらヤバくない?!」

「落ち着いてくれ、方法は二つある」


 モチヅキ曰く、『睡眠薬』の効果を弱めるためには、薬を飲んだ直後に『胃洗浄』をすればいいらしい。水を大量に飲んで尿と一緒に排出するか、喉に指を突っ込んで飲んだものを吐き出す方法。


「――って、いくらなんでもこれは難易度が高すぎるっしょ! バカなのあんた!?」


 と小声でまたもう反論してやる。


「まぁまぁ……人の話は最後まで聞くものだよ。はい、もう一つの方法がこれだ」


 モチヅキはあたしのベッドの左側へ移動して、突然しゃがみ込んでベッドの下から何かを取り出し、詳しく説明してくれた。






 ――本当にそれで上手くいくのか不安だったけど、今は我儘を言ってる場合じゃない。

 "また大掛かりな演技をするんだな"と、あたしは覚悟を決めてその時を待ち続けた――――











 ――午後八時過ぎ。




「――ミヤガワさん、お薬とお水、お持ちしましたよー?」


 その『いけだ』看護師の言葉の後、あたしのベッドのテーブルの上に何かが置かれる音が聴こえてきた。

 いや……正確には『いけだ?』かな。ヤツは語尾を伸ばす癖があるみたいだから。

 ――あたしは掛け布団を頭まで被ったまま、狸寝入りをし続ける。


「あれ……? ミヤガワさん寝てるんですかぁー? ……しょうがない…………『シライシ』さん、お薬とお水をお持ちしましたから、飲みましょうねー?」


 ――――よし、今だ。




「――わっ!」


 と、ベッドから身体を起こしていたあたしは、コップを手に取ろうとして誤って前に倒し、水をこぼしてしまった。


 カラン……


 軽い音と共にコップは床に転がっていく。




『いけだ?』は凄い目をしながらこちらに振り返って、


「――何してるんですか?」


 と真顔で訊いてきた。


「いや、ごめん……寝ぼけててさ、水こぼしちゃった」

「…………」


『いけだ?』はコップを拾い上げると、「新しいのを汲んでくるので、"何もせず"にじっとしててくださいね」と言って、


 タッタッタッタッタ……ッ!


 と凄い速度で病室から出て行った。ここまではモチヅキの想定通りだ。


 おねーさんはベッドの下に忍ばせていた『本物の水』が入った同じコップを取り出し、自分のテーブルの上に置かれていたコップとすり替えた。

 そして『睡眠薬入りと思われる水』をあたしのベッドの前にある水たまりに流し、備え付けの棚の引き出しの中に隠して、再びベッドへ戻った。

 この動作、僅か十秒。


 


 そしてその数秒後、タッタッタッタッタッ!! と全速力で『いけだ?』が息を切らしながら病室に戻ってきた。



「あっ……新しい水っ! お持ち……しましたよっ! はぁ……はぁ……!」


 そしてあたしのテーブルの上にコップが荒々しく置かれた。


 顔を上げれば、あの母性的な顔はどこへ行ったのやら……ギョロっとしたおぞましい目があたしを凝視してた。つくづくキモい目だ。


「ほら、シライシさんも……っ! 早く飲んでください!」


 おねーさんは少しおどおどしながら、薬と水を飲み干した。

 それを確認した『いけだ?』はまるでマリオネットのようにすーっとこちらに身体を傾け、「さあ? あなたもどうぞ?」と言ってきた。


「"いつもいつもご苦労様、『いけだ』さん"」


 あたしはそう言って口角を釣り上げ、不敵に笑ってやる。



「"とても生き生きとした表情"をされてるじゃないですかぁ……ミヤガワさん」

「そりゃあね……"生きてる"んだから当然じゃん?」


 目と目がぶつかり合う。

 向かいにいるおねーさんも、こちらを心配そうにしながらその場を見守っているようだった。


「じゃ、いつものお薬とお水、"ちゃんと飲んでくださいね"?」

「"なんであんたにそこまで強制されなくちゃいけないの"?」

「"ちゃんとした治療ができないから"です。いつまで経っても、お身体が良くなりませんよ?」




 ――こいつ、いけしゃあしゃあと言いやがって…………!




「――じっと見られてると飲みにくいんだけど?」

「だってー、"吐かれたら大変"じゃないですか」




 ――なるほどね、ここに仕込んだ睡眠薬を台無しにされると思ってるわけだ。良かった、後者の方法を選んでおいて。

 モチヅキはこう言ってた。


『おそらく、前者の方法ではヤツに看破される恐れがある。だから僕は後者の方法を強くお勧めする』と。そう、さっきおねーさんがやったみたいに、『飲む水をコップごとすり替える』方法だった。






「ちゃんと飲むから、あっち行ってくれない?」

「ダメです、そう言ってちゃんと飲まない人が多いんですから、ただでさえ"問題児"がいるわけですから……ね?」

「へー? 是非聞かせてほしいな、その"問題児の名前"をさ?」

「それは患者様の『プライベート』に関わりますので、お答えできません……ふふっ……」

「あっははは! そりゃそっかー! 聞いちゃまずいよねー!」




 今すぐにでもこいつをボコりたい気持ちをぐっと押さえて、『合図』を待ち続ける。


「さあ、ほら、飲んでくださいよー!」


『いけだ?』は目をギラギラさせながら動向を見守る。

 くそ……なにやってんだよ……『合図』はまだかよ……!




「――モチヅキさーん? いかがされましたー?」


 入口の方から看護師の声が聞こえてきた。

『いけだ?』は視線だけを入口に向ける。


「あれ? どうなさったんですかー、『まつした』さん?」


 カーテンで入口が見えないけど、『まつした』さんが来たのかな?


「えっ? あの、モチヅキさんがナースコールのボタンを押されたので……」

「えー、もうやめましょうよモチヅキさん。そういう"悪戯"をしてると、いざという時に"誰も来てくれなくなりますよー"?」


『いけだ?』が洒落にならないことを言いだしたので、モチヅキは声を荒げた。


「何を言ってるんだあなたは……! さっき、ベッドで横になる時に躓いてね……棚にぶつかって腕を切っちゃったんだよ!」

「あ、あら……!」


『まつした』看護師が心配そうな声を出しているのが聞こえてくる。


「それなのに、"そこにいる『いけだ』看護師"はなかなか手当てをしてくれなくてね!」

「は、はいぃい?!」


 ――予想外の展開だったのか、『いけだ』看護師は目を丸くした。


「あー……切っちゃってますね……ちょっと『いけだ』さん?! 何で傷を放置してるんですか! それに床が水浸しですよ?!」

「――ちっ」




『まつした』看護師に叱られた『いけだ?』は小さく舌打ちをしてカーテンの向こうへ消えた。でもすぐにこちらに顔を出して、「ちょっとそのまま待っててくださいね」と言って、再び消えた。




 ――あたしはテーブルの上に置かれたコップを素早く回収して、左側へ身体を向けてベッドの真下にそれを隠した。そして同じく真下に隠してあった『本物の水が入ったコップ』を、先ほど『コップ』が置かれてあった通りの場所に一寸の狂いもなく置いた。その動作、わずか四秒!


 そしてそのわずか数秒後、「ちゃんと薬と水を飲んでるか確認させてください」と言ってこちらに顔を出してきた『いけだ?』が、「早く飲んでください」と急かしてきたので、あたしはヤツの目の前で薬を口の中に放り込み、奥歯に逃がした後で水を飲み干してやった。


「はい、これで満足?」


『いけだ?』は怪訝そうにしつつも、隣のモチヅキの所へ移動していった。

 それと同時に、モチヅキの傷の手当が終わったのか、『まつした』看護師が病室から出て行く。


 さてと……あとはあんただけだよモチヅキ。しくじんなよ……




「…………」


 あたしはベッドから身体を起こした状態のまま、隣に耳を澄ませる。


「モチヅキさん、"あなたのこと"ですからね? 我儘ばかりを言って迷惑をかける『問題児』は」

「随分ストレートな物言いだね」

「ほら、ちゃんとお飲みになられてください」

「ごめんね『いけだ』さん、僕はトイレの水じゃなきゃ飲めないんだよ」

「くだらないことは言わなくていいので、ちゃんとお飲みになられてください」

「やれやれだな……どうして"きみ"はそこまで人に強制するんだ?」

「じゃあ逆に訊きます、あなたは"治療するために"入院してたんじゃないんですかぁ?」

「もちろん治療するためだよ? でも"きみ"のようにここまで強制してくると、かえって恐ろしいなって思うよ」

「――『恐ろしい』? どこが?」

「"今の自分の顔、鏡で見てきなよ? どれだけ恐ろしい顔をしてるか、自分の目で確かめてくるといい"」

「――――そんなはずないでしょ、あたしは優しいでしょうが!?」

「"いや、いいから見てきなよ。確か『ミヤガワ』さんが手鏡を持ってたはずだから"」


 ――――よしよし、良い流れ!


『いけだ?』はさっきよりもおぞましい目をしながら、こちらに顔を覗かせてきた。


「――鏡」


 と告げて、こっちに手を差し出してくる。


「えっ? そこに置いてあるから自分で取りなよ」


 と、あたしは棚の上の電子時計のすぐそばに置いてあったピンクのフレームの手鏡を指さした。


『いけだ?』はすたすたと隣まで歩いてきて、手鏡をひったくるようにして手に取ると、自分の顔を覗き込んだ。


「ちっ……違う…………そんな……怖い顔してないでしょ……!? こんなのあたしじゃない……!」


『いけだ?』は手鏡を力なく置いて、モチヅキの所に戻る。


「どうだった? 今の自分の顔は。恐ろしい顔をしてただろう?」

「所詮、鏡なんてそんなものでしょ。いいからさっさと飲んでくれない? あたし、仕事に戻れないから」




 もうすでに言葉遣いが普通じゃないことに『いけだ?』は気づいてんのかな。

 多分興奮してて自覚してないのかもしれない。




「――はい、ちゃんと飲んだだろ? "おかげでいつも夜はぐっすり眠らせてもらってるよ"」


 モチヅキも容赦なく嫌味を投げかける。


「――ふんっ」


『いけだ?』は鼻を鳴らして病室から出て行った…………




 あたしは向かいにいるおねーさんと目を合わせる。

 おねーさんは少し微笑みながら頷くと、視線をモチヅキの方に移し、同じように頷いた。



 良かった……とりあえずこれで『眠ったままゲームオーバー』は避けられたんだ。






 ここでネタ晴らしをすると、モチヅキは病室に運ばれてくるコップがどの患者も同じ物であることを利用して、この方法を思いついたらしい。

 それは予め『本物の水を注いだコップ』を三人分隠し持っておいて、ヤツが『睡眠薬入りの水』を運んできた際に、本物とすり替えるという作戦だった。

 ヤツは必ず病室の奥にいる患者から順番に薬と水を運んでいく。そしてその患者がちゃんと薬と水を飲み干すまでは絶対に動こうとしない。


だからまず、あたしが狸寝入りをしてヤツの注意をおねーさんの方に無理やり向かせる。

 次にあたしが『睡眠薬入りのコップ』をひっくり返し、ヤツの注意を再びあたしの方に向かせる。そしたらヤツは当然新しい水を注ぎに行くはずだから、その間に今度はおねーさんの方に入ってる『睡眠薬入りの水』をさっきあたしがこぼした場所へ流し込み、流したコップを見つからない場所に隠す。

 そして『本物の水が入ったコップ』をおねーさんのテーブルの元にあった場所に置いて、ヤツの帰りを待つ。後はヤツが戻ってくるのを待って、おねーさんが普通に薬と『本物の水』を飲み干すだけで良い。


 その後、今度はモチヅキによる熱演によって、他の看護師と交えての大乱闘を始める。『この看護師が応対してくれない』という変な言いがかりをつけてヤツを貶め、ヤツの注意を無理やりモチヅキに向かせる。

 その間に、あたしもおねーさんと同じ要領で水をすり替えて、ヤツの目の前で薬と『本物の水』を飲む。あたしの場合、薬は飲むフリだけど。


 そして最後、モチヅキによるナイスプレーによって、ヤツを大きく刺激。

 今度はあたしに注意を向かせて、手鏡を渡してあげれば、その間にモチヅキが本物の水とすり替えて、後は普通に飲んでおしまい。



 ――――というのがモチヅキの筋書きだったらしい。まさか本当にその通りになるだなんて思いもしなかった。

 やるじゃんかモチヅキ、あんたマジでさいこーだよ。生きて帰れたらあたしのダチにしてあげる。


 あたしは心の底から、モチヅキのことを尊敬した。











 ――――おそらく今日、入院生活八日目にしてこれが最後の夜になるかもしれない。

 ヤツの目を上手く欺けたかな……仮にもし、あたしたちが飲んだ水が"すり替えられていた"ことに気付いてたとしたら、その時点で改めて『睡眠薬入りの水』を飲ませてくるはずだよね。

 そう、だから大丈夫……大丈夫のはず……






 ――二十一時、行動を始めた。






 あたしは暗がりの中、電子時計の薄明りを使って、棚の中から自分が外に出る時に着ている白シャツとデニムのショートパンツを取り出し、それに着替えてた。

 ここまで来たらもうこの病室に留まるのは危険だと思ったし、それに病衣のままだったら動きづらくてしょうがなかった。

 カーテンの向こうから衣擦れの音が聴こえる。おねーさんも今着替えてる途中のようだ。

 モチヅキは…………まぁ三年間ずっといたらしいから、私服なんてものは持ち合わせてないっぽいから、そのまま行動するんだろう。

 ヤツがあたしに直接コンタクトを取ってくるとしたら、これが最初で最後だと思う。

 だからおねーさんとモチヅキにはどこか安全な場所に逃げてもらおうと思ってる。


 結局、あたしは『闇社会』の事を二人に明かせなかった。

 地獄に行くなら、あたし一人で十分だ。



 さっき、消灯時間前にあたしたち三人は軽く打ち合わせをした。

 これからどうするかを話し合って、あたしは『この病院でやらなくちゃいけないことがある』と二人に説明して、『二人には何とかしてここから逃げてほしい』と言った。

 当然おねーさんは反対したけど、モチヅキは止めなかった。

『わかった、でも必ず生き延びてほしい。それがきみと僕とシライシさんとの三人の約束だ、いいね?』

 あたしは頷いておねーさんとモチヅキと握手を交わして、それぞれ自分のベッドへ戻る。




 おねーさんにはどうか立ち直ってもらって、亡くした家族の分まで精一杯生きてほしい。新しい縁を探して、幸せになってほしい。

 モチヅキには持ち前の頭脳を活かして、これからも多くの人の力になってほしいな。あいつ、根暗だけどイイトコロあるしさ。

 こんなイイヤツ二人が、こんな所で死ぬ必要なんてどこにもない。




 ――ありがとう、というその一言がなかなかあたしには言えなかった。


 でも……親を亡くして、ダチを亡くして一人になって…………ずっと後悔し続けて…………

 この病院で新しい縁に出会った今だからこそ思う。


 ありがとう、と言えなくても……

 言葉に出すことができなくても……

 ありがとう、と伝えることはできると……






(最終幕へ続く)


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