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アマービリタ  作者: しや
10/30

京都旅行三日目。そして帰宅。

 翌朝は八時に目が覚めた。

 名残惜しいから早起きしようと思っていたのに、心とは裏腹に身体の疲労は素直で、全然予定通りにはいかなかった。

 目をつぶれば快適な二度寝を過ごせそうだが、誘惑に打ち勝って布団から這い出て起床する。

 羽毛布団は軽くて過ごしやすいし、枕の高さもちょうどいいから寝やすいのだ。枕が変わったら寝られないとかとは無縁でソファーだって快適に眠れるとはいえ、寝やすい枕があるのもまた事実だ。ぽん、ぽん、と手で枕を叩くと低反発のように柔らかく沈んでから元の形に戻る。自宅の枕は替えどきかもしれない。

 藍色は今日も今日とて元気なようで、着替えまで済ませてあった。タオルハンガーにぬれたバスタオルがかかっていたので、朝風呂も満喫したようだ。この男には疲れという概念は存在しないのか。

 二泊も旅館にいたのに一度も寝ている姿を見ていない。

 みずは一度起床しようとして失敗したのか、羽毛布団の上でうつ伏せになっていた。

 ふんわりとした髪の毛が枕に埋まっているので、犬の毛玉が埋まっているような気分になった。わしゃわしゃと髪の毛を撫でまわしたい気もするが、犬の毛じゃないのでやめて背中を軽く叩いて起こす。もぞもぞとみずは動くが、顔は一向に此方を向けない。


「みーず。起きろ朝だよ」

「無理っぽい……」

「起きろ」

「寝る」

「駄目だって、ほら。時間だよ」


 うぅとみずが唸りながら枕から顔を上げた。白茶の前髪は若干寝癖がついていた。半分しか目があいておらず眠そうだ。


「……がんばる」


 ホントかな、と思いながらも俺も眠くて欠伸が出た。カフェイン欲しいな。でも朝は和食なのでコーヒーとの組み合わせはいまいちである。緑茶にもカフェインは含まれているし、それを頼りにしよう。

 御膳が運ばれて、艶やかな漆が塗られた木製テーブルの上に並べられる。手を合わせて食べ始める。まずはみそ汁を一口。さっぱりとした薄味が、朝の胃に丁度よく染みわたる。

 ひんやりとした豆腐の爽やかな味わいに、しらす干しとご飯の組み合わせは最高だ。

 完食して、隣に座るみずをみると、食べやすい朝ごはんでも平らげるのが難しいようで、半分残っている白米と睨めっこをしていた。


「しらす干しつきなら少し貰うけど」

「うん、ありがとう」


 朝は面倒であればコーヒーだけで少したりもするが、食べようと思えば食べられるし、何よりご飯が美味しいので、思ったよりも腹に収まった。

 今日の予定は新幹線の時間が決まっているのとキャリーをもって移動するため、神社を少々めぐって終わりだ。

 朝食が終われば、荷物の準備をして忘れ物がないかを確認して名残惜しい一泊七万円の宿を後にした。

 昼は藍色が勝手に予約を取った店で食べる――完全予約制の豪勢なお店だった。

 勝手に予約を取った藍色の奢りとはいえ、殺人鬼の金銭感覚っておかしい。こんな豪勢に豪遊をして暮らせるものなのだろうか。人間って高いんだな。

 のんびりと食事に舌鼓をうってから、京都駅へと向かった。

 新幹線に乗る前にお土産を買わないといけない。京都駅は広く、インフォメーションでお土産売り場を訪ねて向かうとびっくりするくらい混んでいた。中々商品は見れないしレジは行列だ。早々に購入しないと新幹線の時間に間に合わない可能性すらある。


「もう土産買わないで帰りたくなるな。なくてもいいかな」

「駄目だよ、ちゃんとお土産買わないと。優等生のいろがお土産買わないなんて状況はないよ?」

「……ですよねー」


 因みに、この京都旅行。家族への説明は前々から計画を立てており、早期割引で安めのプランを予約ができた、ということにしてある。日頃の成果のお蔭で怪しまれることはなかった。


「そうだなぁ、まぁ母さんと父さんは京都の和菓子でいいだろ。和歌もこれでいいか」


 適当にクッキーをとると、みずが小首をかしげた。


「キーホルダーとかそういったものはいいの?」

「いいよ。和歌が俺から新選組モチーフの刀キーホルダーとかもらったって絶対つけないから。そういうものは彼女から貰った方が和歌は喜ぶ。なら消費できるほうがいいさ」


 キーホルダーをお土産にしたら、和歌は虫を踏んでしまったような顔をしながらも、両親が喜んでいる手前、捨てることも出来ず鞄につけて結果として兄弟は仲良しの印象を強めるだけに終わるのが目に見えている。

 俺ほどじゃないにしろ、和歌も猫を被るから。そして自業自得になるのは割と共通している。

 わざわざ嫌がらせのために俺の財布を寂しくする必要はないので、腹に消化できるものを選ぶ。

 みずは納得したのか、お土産売り場をキョロキョロと物色し始めた。

 みずにお土産を買う相手とかいたか? ゼミの面子には旅行のことを告げていないから別に土産を買わなくてもいいし、気になる。

 影で様子を伺おうと思ったら目ざとく藍色が睨んできたので仕方なく籠に入れてあるお土産を購入するためレジへ並ぶことにした。藍色は店内を一瞥してから店の外で待機をすることにしたようだ。

 俺が会計を終え、外に出ると藍色が周囲の観光客をうっとおしそうに見ていた。少し遅れてみずとも合流する。


「みず、何を買ったんだ?」

「自分用とかのお土産だよ」

「あぁ、なるほど。自分用か、すっかり忘れていたわ」


 親へのお土産でいっぱいでそこまで思考が回っていなかった。まぁでもお土産も素敵だけれども、写真を沢山一杯とれたのでそれを現像してアルバムにして飾っておくのは至福のお土産になるしいいや。

 時間には余裕をもって新幹線に乗れた。グリーン車は行きも帰りも居心地が良い空間だ。広めにとられた椅子と通路。深く腰を掛ければ沈む椅子は柔らかい。キャリーを足元に置いても十分にスペースがあってありがたい。行きも帰りも四席分を購入した藍色の暴挙により座席は向かい合わせだ。座席がなくて困っている人がいたら藍色のせいなので文句は藍色まで。

 発車して景色が移り変わるのを、窓から眺める。

 二泊三日のGA京都旅行もこれで終わりだと思うと心底名残惜しい。


「楽しかったな」


 藍色の言葉に頷く。


「ありがとう藍色」

「なんだ? 気持ち悪い」

「失礼な。色々と奢ってもらったんだ、お礼の一つは俺だって言えるよ。藍色が実行してくれなきゃ、こんな楽しい京都旅行できなかったんだから」

「そうだな。私も楽しかったから満足だ」

「あいといろにお土産買ったんだ、どうかな? 皆でお揃いにしようと思って」

 

 みずが土産袋から取り出したのは刀をモチーフにしたキーホルダーだった。小さく新選組の羽織りがついてある。THE京都といった感じのお土産だ。

 まさかみずが買ったお土産が俺たちへ、だとは思わなくて藍色も俺も目を丸くしてから、受け取った。そしてそのままスマホにつけた。


「ありがとう。みず」

「そうだな、自分たちの土産も買うべきだったな。いい記念だ、ありがとう」

「どういたしまして」


 みずが嬉しそうに微笑んだのでこちらも心が和む。暫くはお喋りをして、新幹線で食べる用の京都駅弁を食べた。少しばかり早い夕食だ。

 疲れていたのか、満腹からか、眠気がやってきたので寝た。

 途中で目を覚ますと、前に座っていた藍色が寝ていた。


「……まじか」


 藍色が腕を組みながら、身体をやや斜めに傾けて寝ている。寝たふりかと疑いたくなる光景だった。

 折角だからいつの間にか寝ていたみずを起こすべきか、写真は新幹線の中でとったら迷惑だよな。シャッターの音が消せたら良かったのに。

 でもみずを起こしたらその物音で藍色が起きそうだよなっていうか俺が藍色の寝ている姿を初めて見たから絶滅危惧種を目撃したみたいで面白くなっているだけで、一緒に暮らしているみずなら見たことあっても不思議じゃないからつまらないか。

 殺人鬼だけど、でもやっぱ藍色も人間なんだなぁとか、寝顔をみて当たり前のことを思った。

 やっぱ記念に写真撮りたいなと思っていると、藍色が起きて睨んできた。


「……人の寝顔をみて楽しがっているのはお前くらいなものだぞ」

「なんで寝ていたのに起きるのさ。もっと熟睡しろよ」

「新幹線の中で熟睡は出来ないだろ……」

「でも意外だ。藍色も寝るんだなって思うと」

「お前は私を何だと思っている。……寝たいときには私だって寝る」

「いや、まぁわかっているんだけど。写真とりたかったなって」

「人の写真を撮るな、全く。まだ私は眠いから寝るぞ。お前も寝ておいたらどうだ」

「うん、そうするわ」


 物珍しさに凝視してしまっただけで藍色の寝顔とか一度みたら十分だ。もう興味はなくなったので、寝る。

 東京駅が近づいたころに、藍色に起こされた。


「さて、そろそろ到着だ。忘れ物はないな?」

「ないよ」

「大丈夫」


 駅のホームに降り立つ。東京駅についただけなのに何故か帰ってきたという感覚がすさまじくやってくる。東京と京都の空気の違い何てわからないのに、空気が東京だ、とかわけのわからないことすら思ってしまう。


「……ここから電車で帰るのも億劫だな。タクシーで帰るか?」

「いや、そっちの方が時間かかるでしょ。GWに都内を車とか渋滞間違いなしだよ。だったら電車で帰った方が早い。ここからならニ十分くらいで駅までつくし」

「まぁそれもそうか。みず、大丈夫か?」

「平気だよ。新幹線で寝たし」

「無理そうならキャリーを持つからな」

「平気だって。あいは心配性だね」


 気持ちはわかる。階段から転倒してしまいそうで不安になるのだ。


「なんならみずを運んでもいいぞ」

「なんでそうなる」


 思わずツッコミを入れてしまった。


「……必要とあらばお前だって運べるぞ」

「絶対ごめんだわ」

「あいって力持ちだよねーでも大丈夫。子供じゃないんだから自分で帰れるよ」

「色葉だってみずならば運べるんじゃないか?」

「いや無理だからそれは」


 仮に体重が四十キロだったとしても、十キロの米四つとか無理だ。二十リットルの灯油だって運ぶの重たいというのに。そもそも、みずがいくら軽くて折れそうでも四十キロ以上はある。

 人ごみの流れに従ってエスカレーターを下り新幹線の改札を出て、メトロへの乗り換えする道を進む。

 GWで通勤ラッシュという程は混んでいないが旅行客が多い分、賑わいはある。

 電車にのって最寄り駅まで到着してから、そこからはタクシーを拾って、まず俺の自宅まで送ってもらった。


「じゃ、ありがとう。明日、写真を現像して昼過ぎにでも持っていくわ」

「別に急がなくてもいいよ?」

「明後日から大学だから成るべく明日の方がいいだろ。今日はゆっくり寝るから大丈夫、あぁでもみずが疲れていたら連絡宜しく。そしたら日を改めるから」

「わかったよ。それじゃおやすみ」

「あぁおやすみ。みず。藍色もおやすみ」

「とってつけたようだな。まぁいい……待っている」


 そうして別れた。

 タクシー代も藍色が出してくれた。色々と藍色の財布に頼りすぎではあるが、徒歩十五分くらいの距離とはいえ、旅行帰りにはしんどいのでありがたく甘えさせて持った。目の前には数日ぶりの我がアパート。

 ただいま。

 キャリーは玄関に置きっぱなし――明日片付ける――にして、冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出して飲む。一度座ったら、根付いて立てなくなりそうなのでそのままシャワーを浴びる。風呂は面倒だ。

 あぁ露天風呂は気持ち良かったなぁ。普段、シャワーで済ませてしまう俺が長湯をしたくらいの心地よさだった。

 風呂から上がって、髪を軽く乾かしたらスマホを充電しながら、今日はそのまま寝ることにした。

 おやすみなさい。


 夕べは日付が変わるよりも早く――というか十時前に寝たので、朝、目を覚まして時計を見ると六時だった。二度寝をしたら十時になった。


「やべ、ほぼ半日寝てる……」


 ベッドから降りて、洗面台へいき顔を洗って、さっぱりとする。

 鏡を見ると寝癖が盛大について爆発頭になっていた。

 寝癖直しのスプレーをかけたが一部は外はねが普段より主張が激しいままだったので諦める。

 軽く朝昼兼用の食事をとってから、キャリーの中から三日分の洗濯物を取り出して洗濯機に放り込んで洗剤と柔軟仕上げ剤を入れて回す。

 洗濯をしている間に寝癖を隠す帽子を被り外に出て、近場の電気屋へと向かう。そこでスマホで取った画像を全て三枚ずつ現像した。

 結構いい金額にはなったが、お土産だ。

 一眼レフでとったほうは藍色が持っているのでそのうち現像をしてくれるだろう。

 背景だけとった写真も沢山ある。渡月橋の写真や、旅館の写真、廻った寺や神社。食事した場所のとか色々ある。アルバムも売っていないか探したら売っていたので、枚数に問題がなさそうなのを選んで三つ購入した。

 こちらは以前、両親がテレビを買ってくれた時のポイントで買えた。

 コンビニのチキンと栄養ドリンクを購入してから部屋に戻り、チキンを先に食べ終えてから、机の上にアルバムと写真を取り出して一枚一枚アルバムに収めていく。

 いつか、ページを捲ったらその時の行動が明確に浮かび上がるくらいなアルバムに仕上げたいと思い作業をしていたら一時間が経過していた。現像を含め二時間くらい既に立っているのに、洗濯機の中に洗い物を放置したままだった。臭くなってしまう。急いで取り出して、ハンガーにかけて外干しをした。臭いがついていたら消臭剤で誤魔化そう。

 栄養ドリンクを飲んでから少しベッドでゴロゴロとする。スマホを取り出して、二時過ぎに向かうとみずへメールを送った。すぐに了解の返事が来たので、三十分寝た。寝てばかりだな。

 一時四十五分になったので、いつもの鞄にアルバムを詰めて、藍色の家へと向かった。

 昨日の疲れは完全には取れていないものの、足取りは思ったより軽やかだった。最後のタクシーが良かったのかもしれない。

 インターホンを鳴らして勝手知ったる部屋へ足を踏み入れる。リビングはモノトーンの落ち着いた部屋は変わることなく綺麗だ。キャリーが散らかっていることもない。レースカーテンからうっすらと見えるベランダには洗濯物が綺麗に干されていた。

 藍色はテーブルの上でパソコンを使って何やら作業をしている。


「写真、現像してきたよ」

「あぁ……少しだけ待ってくれ、これが終わったらパソコンをどける」

「わかった」


 ソファーに座って寛いでいると、みずが台所からお茶を用意してきてくれた。


「ありがとう。でも、わざわざ用意してくれなくとも、別に飲みたくなったら勝手に漁らせてもらうよ。みずだって旅行の翌日は疲れているだろ?」

「うん。でも写真を持ってきてくれたんだからこれくらいはするよ」

「お言葉に甘えるわ」


 冷たいお茶を飲んでいる間に、藍色はやることが終わったようでノートパソコンの蓋をしめて、テーブルの上を綺麗に片付けた。


「待たせたな」

「別にいいよ。じゃあ、俺からの京都土産」


 鞄からアルバムを取り出して藍色とみずに手渡す。ありがとうといってから受け取った二人はアルバムを捲ってみてくれた。写真の順番は撮影した順番なので、時系列はあっているはずである。


「両親への写真は送ったのか?」


 藍色がみずと俺が映っている写真を見ながら言った。


「うん。送ったよ。楽しそうで良かったわって言ってくれた。今度実家帰ったときお土産も渡すっていったら喜んでもらえたよ」

「それは何よりだな」


 藍色は本当に段々保護者化が進んでいるよなぁなんて思う。


「綺麗にとれてていいね。あ、そうだマジックで日付とか場所とかかいてもいい?」


 みずの提案にいいなと言って、俺と藍色もマジックで思い出をつづることにした。完成したアルバムはどこからどう見ても宝物の輝きをはなっていた。


「金庫がうちにあれば入れたくなるわ」

「気持ちはわかるけど、それはそれでどうなの」


 みずが呆れながら楽しそうに笑っている。


「一眼レフで取ったほうの現像はまだできていないから、今度お前が来た時までに用意しておく」

「ん。わかった、楽しみに待っているよ」


 ひと段落したら藍色はまたブルーライトカットの眼鏡をわざわざかけてパソコンを弄っていたので、忙しいのだろう。

 一眼レフの現像が直にみられないのは残念だが仕方ない。

 疲れは抜けきっていない部分もあったので、みずの家でくつろぎながら適度なところで切り上げて、明日は大学で宜しく、とみずにいった。


「明日の弁当は何がいい?」

「明日はいらないよ。ゆっくりしていて」

「わかった、じゃあそうする」


 流石に旅行から一日開けただけの翌日に弁当を五百円払ってはいるとはいえ作ってもらうのは申し訳ない。ということで辞退する。一人作るのも二人作るのも変わらないよ、とみずは言うかもしれないが、結構違うのである。

 六時過ぎには藍色の家を出て、ゆったりと外の景色を眺めながら自宅へ向かう。

 都内暮らしだから、駅前と比べたら少ないとは言え、道行く人は結構いる。だが、二泊三日の京都に毒されたのか、変な違和感を覚えてしまう。景色が、空気が違うのだ。何が違うのかはわからないけれどもそう思えてしまう。

 部屋に戻ってベッドでくつろぐ。仰向けになってアルバムを開く。何度見ても思い出とはいいものだ。

 充実した時間は、瞬く間に過ぎ去る代わりに、脳内に強烈な印象を残していく。

 アルバムを指先でなぞる。どれもいい笑顔をしている。

 賑やかな旅行のあとだからか、一人で暮らすには、この部屋は広くて寂しいと実感してしまう。一人には向かない家だ。

 みずとルームシェアが出来たら最高だが、現実はうまくいかないものである。何せ藍色が絶対に許してはくれない。本当に過保護だ。

 さて、疲れて動きたくなる前に、明日の講義で使う教科書と、財布を忘れないで入れておく。殆ど寝て過ごしているようなものだが、睡魔がやってきたので今日も日付が変わる前に寝るか、と思っていると珍しいことに弟から連絡がきた。メールを開くと、いつか、ののかちゃんと京都旅行したいからおすすめのスポットがあったら教えて。どうせお兄ちゃんは無駄に詳しいんでしょ、といった内容が綴られていた。彼女のことになると嫌っているお兄ちゃんすら利用できるようで賢い。

 送るべき観光スポットを思い浮かべていくつかをピックアップして弟へ送った。

 するとどうだろう。大変珍しいことに


『ありがとう』


 と、素直なお礼がやってきた。


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