0010-02
次の日。
八人は領主主催のパーティー会場に居た。ホールを貸し切って、主要な人物の多くが参加している。名目は、『人と竜の交流記念』である。
ヨイヅキ達を多くの人達が、無遠慮に見ていた。スイハやグレンゲ、コウリョ等は馴れている、と言うよりも気にしないのか自分のペースであっちこっちで話しかけられている。
まだ正確にはパーティーは始まっていない。ただ集まっているだけである。パーティーの主催者による宣言を終えて始まるのだ。
そんな中、ヨイヅキの元に独りの男がやって来た。かなり恰幅が良い男である。装飾品等から貴族だと分かる。
「これはこれは、ヨイヅキ殿ではありませんか。私、エグレ・シャルリーン。シャルリーン家、党首でございます」
「ご丁寧にどうも。ヨイヅキ・ソーレイドだ」
一応、一度だけ顔を見せているので覚えられていたのだろう。
「娘様も麗しく、どうです? ぜひ内の──」
「断る。他人に決め付けられた人生等、面白くもないだろう?」
あくまで笑顔でそう言った。カーミレの未来は、カーミレに決めさせると。策略の駒ではない、と言うように。
「そうですか。いやぁ、残念です」
「そうか、では」
足早にカーミレを連れて去っていった。残念です、と言いながらも微塵も諦めていないような気がした。
カーミレがヨイヅキを見ながら不思議そうにしていた。
「本日はお忙しい中、お集まり頂き、ありがとうございます。主催者から開始のご挨拶です」
ちょくちょく会っている、ナルトリアの領主とその給仕のミナの言葉により、ざわついていた会場は一瞬で静かになった。その隣には、現領主であるゼルフォ・ナルトリアが立っている。
「今日は、祝いの日だ。共存に一歩一歩進んでいるナルトリアへの。食事と踊り、楽しんでいってくれっ!」
その言葉を皮切りに、パーティーが正式に始まった。
「数日ぶりだな。ヨイヅキ殿」
「あぁ。そうだな。ゼルフォ殿」
真っ先にゼルフォがヨイヅキの所に来た。友好関係を示したかったのだろうか?
「お初にお目にかかる。焔と破の古竜 グレンゲだ」
「ヨイヅキがお世話になっています。霧と断の古竜 スイハです。以後、お見知りおきを」
「ボクは、光と癒の古竜 コウリョだよ。よろしくね」
「私は緑と陽の古竜 リョクハです。よろしくお願いします」
コウリョ以外は口調がいつもより丁寧だった。まぁ、そんなには変わらないが。全員が全員、人形でいつもよりも豪華な衣装を着ている。
一応、古竜と言うのは竜族の頂点に立つものである。要るだけで、同じ系統の竜には加護が与えられるのだ。それに、入れば士気が高まる。
「このナルトリアを治めている。ゼルフォ・ナルトリアだ。今後ともにより良い関係であることを願う。堅苦しい話は抜きだ。今日は良い音楽隊も来ている。踊るといい」
それだけ言うとゼルフォは去っていった。