0009-06
「お友だち? でも──」
「黙ってろよ。雑魚が。てめぇが何だろうが関係ねぇよ。ただ緑と陽の嬢ちゃんを傷付けたのが不味かったな?」
グレンゲが相手の言葉を遮るようにそう言った。向こうは向こうでかなり苛立ったようにこちらを睨んでいる。
「いっつも、グレンゲはそうだよね。仲間が傷つけられるのを見るのが大嫌いだった」
「確かに」
後ろでコウリョが呟いた。それは昔を懐かしむような顔だった。そんなコウリョの言葉を肯定するようにヨイヅキも答える。
「うるさいっ! 雑魚なんかじゃないっ。どーんっ!」
「見掛け倒しか?」
任意の場所を爆破させる能力はグレンゲも出来る。それに、なんとなくグレンゲにはどこが爆破されるか予想がついた。
「本物の爆破ってのはこうするんだよっ! 影と茨っ!」
「はいはい。よっと!」
影に潜んでいたヨイヅキが、チャリオットの影から現れて思いっきり上に投げつけた。ポーンと飛んで行くチャリオット。
追い討ちをかけるように、爆破が次々に起こっていく。その度に錐揉み状に体を曲げていくチャリオット。
「リョクハ、大丈夫?」
「ありがとうございます。コウリョ先輩」
「ふふっ。いいよ」
コウリョの手によって、リョクハの傷が全て癒えていく。それと同時に、ようやく打ち上がっていたチャリオットが落ちてきた。
「茨影の牢獄」
「不破の焔」
先程も模擬戦で使った魔術が、チャリオットを包み込んだ。そして、グレンゲもまた魔術を牢獄の中に放り込む。
またしても爆音が上がった。だが、それは模擬戦の時よりもずっと大きかった。茨の所々から煙が出ている。
爆破する焔をグレンゲが入れておいたのだ。普通に喰らえば、逃れることもできただろう。だが、密閉された空間ではそれもできない。
「これで死ななかったら、キモすぎるだろ。よし帰るぞ!」
「確認しなくていいの?」
「ったりまえだ。致死性の魔術を全力で放ったんだ。絶対に死んでいる」
「あ、あの。ありがとうございました。先輩方っ」
リョクハがグレンゲ達に向かって頭を下げた。彼女なりに考えたのだろう。
「良いってこった。なぁ、お前ら」
「あぁ。以前にもリョクハには助けられたしな」
「そうだよ。お互い様ってやつだよ」
「あ、そうそう。緑と陽の嬢ちゃん。ヨイヅキの家に行くんだが、来るだろ?」
「お邪魔して良いですか?」
ヨイヅキが頷くと嬉しそうに笑った。そんなに行きたかったのだろうか。それと、これで古竜五体が全員揃ったことになる。
「もちろんだ。じゃぁ、影渡」
ヨイヅキの魔術によりまた家に戻ってきた。だが、十刻災厄にしてはあっけない終わり方に見えた。