表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第四章 竜と人が住む町
59/65

0009-05

 時は少し遡る。広大な草原で陽の光を浴びて気持ち良さそうにしている一体の竜がいた。


 かの竜こそ、緑と陽の古竜 リョクハである。



「ふぅ。やっぱりコレが一番気持ち良い~」

 かなり上機嫌なのか完全に独り言を呟いている。リョクハは古竜であると言っても、まだまだ若い古竜である。ヨイヅキよりもずっと後に古竜の頂に上り詰めた。



 そんな話は良いとして、だ。リョクハは戦闘には向かないので、竜の里の守護を担っている。攻める事は苦手でも長期間護ることは得意なのだ。




「そこにいるのは誰?」

「あはは。バレちゃった? チャリオットって言うんだ。知ってる?」


 そこには小さな子供が立っていた。この場所はリョクハの結界によって守られている。


 だからこそ、この場に人間がいるなんて事は絶対にあり得ないことだった。




「十刻災厄、か。肆之刻《戦車》のチャリオットかな?」


「正解っ! どーんっ」

 リョクハの立っていた場所が爆破される。なんとか、上に逃げることによりダメージは無いが驚いたのは事実である。


「うわぁ。どうしよっ。黒兎っ!」

「お呼びですか? 緑と陽の古竜サマ」

 ヌルリと影から現れた黒兎。リョクハはチャリオットの追撃をスレスレで交わしながら会話していく。


「──って伝えて! 対価は後払いでっ」

「了解しました。後払いなら高くなりますよ?」


「構わないっ! 速くっ。うわっ」

「では後程」



 まるで元から居なかったかのように黒兎が消えた。下を見た時、リョクハの中で何かが切れる音がした。


 下には、チャリオットの周りを中心として大地が捲れていたのだ。もちろん、そこに自生していた木々や植物達も。



「植物を無下にしたその罪。ゆるさんっ!」

「どうしてだい? どうせ放っておいたらまた生えてくるじゃん?」



 リョクハのキレるポイントは幾つかある。その一つに、植物を大切にしない行動が入っているのだ。


「それは乱雑に扱っても良い理由にはならない」


 リョクハの降り立った場所から植物が芽を出して、急速に成長していく。均衡を壊してしまうのであまり使わないリョクハの固有能力である。



「草樹槍・散」

「ばくはーつ! どーんっ!」


 爆破に巻き込まれて、植物が散ってしまう、なんてことは無かった。



 リョクハの魔力により保護されていた植物達は爆破に勢いが削がれてもチャリオットを目指して飛んで行った。



 だが、速度が遅すぎる。すべて交わされてしまう。だがそれもリョクハの考えている内の一つ。




「捕まえたっ。どうだ」

「ありゃりゃ。でも、残念っ」


 チャリオットの足元に、ほぼ不意打ちとも言えるように強靭な蔦が巻き付いた。それは足の骨を圧縮して折ろうとするように力が籠っていた。




 だが、爆破により燃やされてしまう。



 しかも、ただ赤くなっただけで折れてすらいなかったのだ。






「早く、早く来て下さい。先輩」

「おしまい、かな? じゃぁ、どーんっ!」


 ぎゅっ、と目を瞑って衝撃に備えた。だが、音が鳴り響いただけで爆破はこなかった。まるで相殺されたかのように。



「頑張ったな。緑と陽の嬢ちゃん」

「助けに来たぞ。リョクハ」

「英雄は遅れてくるものなのだっ!」


 グレンゲ、ヨイヅキ、コウリョの順番で影から古竜達が現れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ