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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第四章 竜と人が住む町
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「づ~が~れ~だぁ~」

「おつかれ、シュトラウスおねぇちゃん」

 二人の幼女が、話しているように見える。尤も、シュトラウスは三十は軽く超えた年齢であるのだが。



「だいたいっ! どうして、教皇になんてしようとするのさっ。仕事が増えるだけじゃないっ! 断ってきたけど」


 下心しかない、他の神殿長からの教皇への推薦だろう。竜との共存を始めたナルトリアに恩を売っておけば後々、利益があるのは確定しているから。


 だが、そのⅠ大神殿長シュトラウスにはまさかの出世欲がまったく無かった。そんなまさかの理由で、他の神殿長の目論みは潰えるとは誰も思っていなかっただろう。



 どうせ、教皇に推薦しただろう? とかなんとか言って、後々にシュトラウスを、そして竜達を支配したかったのだろう。



「まぁ、お疲れさま。シュトラウス」

「ヨイヅキぃ~。ご飯まだぁ~」

 料理を並べながら、シュトラウスに声をかけている。それなのに、気が付かない所をみると相当、疲れているのだろう。


 ちなみにカーミレは気が付いて、手伝いをし始めている。



「ほら、食べるぞ」

「うぃ~」

 のそりのそりと、シュトラウスが椅子に座った。カーミレが、アズサおねぇちゃんを呼んでくるね! と中庭に行った。この時間帯は自主練に励んでいるのだ。


 食後の皿洗いは、アズサ達がやっている。さすがに、ヨイヅキばかりに負担をかけられないとアズサが言ったために。


 

 大きな変化と言えばアズサが居候の状態では無くなったことだろうか。家賃を払い始めたのだ。


「ん~、おいし~」

 一人だけ食べる速度が違う。みるみる皿が空になっていく。どれだけ腹が減っていたのかがよく分かる。


「シュトラウス、変わったことはあるか?」

「ん? 特には無いよ。あ、そうそう。明後日、領主の館で交友パーティーだって」

 しれっと、大事なことを言う。ヨイヅキが驚いたように目を見開く。顔には、なぜ早く言わなかった! と書いてある。



「ごめん! 思いっきり忘れてた。ヨイヅキの顔を見たら思い出してさ」

 てへっ☆ と片目を閉じた。大変可愛らしいのだが、さすがにこの状況でやられるとイラッとする。




「シュトラウス。今日おかわり禁止な」

「そんなっ、後このスープを二杯いや四杯は頂こうと思ってたのに」


「シュトラウス殿、自業自得じゃ」

「どんまい。シュトラウスおねぇちゃん」

 頼みの綱がクスクス笑っていたので、そんなぁ、と意気消沈した。ちなみに、シュトラウスが疲れていたので、ヨイヅキは気を使って全て料理は大盛りにしてある。


 気が付いていないみたいだが。



「それで、服装は礼服か? それとも、ローブでいいのか?」

「あ、ローブで良いみたいだよ。それと、他の古竜達も来てくれたら嬉しいなぁ~、チラッ、チラ。って、領主が」


 領民に敬われない領主、ではなく単純にシュトラウスも領主とどっこいどっこいの権力者のためタメ口である。


 神殿にも一応地位がある。上から順に、教皇、副皇、大神殿長、神殿長、副長、副長補佐が大まかな分類である。教皇は、数少ないが現在、三人はいるとされている。






「はーい! コウリョがやって来たよー!」

 扉をバーンっと開けて、コウリョが中に入ってきた。いつぞやのシュトラウスのように。もうそろそろ、扉が壊れそうだ。



「おい。また違う家だったらどうするんだっ。この光と癒のアホ!」

 グレンゲがコウリョの後から顔を覗かせる。そして、中に居るのがヨイヅキ達だと気が付いてホッとした顔をしている。


「コウリョ、何件目だ。それするの」

「ここを会わせて七軒目だよ!」


 六軒、間違ったらしい。間違われた方も大変だろう。そして、グレンゲの苦労が伺えた。




「たく。こっちの身にもなれっての。このアホ。それと、久しぶりだな。影と茨」

「あぁ。久しぶり。グレンゲ。それで? 何のようだ?」


「かぁー。冷てぇな、おい。暇になったから来ただけだ。姐さんは、用事があるって言って来ないし。緑と陽も、なんか忙しそうだったからな。暇だったのは、俺と光と癒だけだった訳よ」


 笑いながら持っていた壺を床においた。恐らく、酒だろう。



「嬢ちゃんは、イケる口だったろ?」

「もっちろん!」

 シュトラウスが元気よくグレンゲの近くによった。夕飯はきれいに食べ終わっていたりする。



「ヨイ君。遊びに来たよ」

「あぁ。飯食ったか?」


「ううん。あ、でも。ありがとうね」

 綺麗な笑顔で笑った。タカる気満々である。無言でヨイヅキが準備をし始める。そして、料理を運んだ。シュトラウスがいた椅子に座ってそのまま食べ始める。



 カーミレが話し掛けようとして、諦めていた。ついでに、アズサは不幸にも酒壺の近くに座っていた為に、アルコールに当てられて既に顔を赤らめて酔っている。



 強すぎる酒を持ってきたらしい。



「飲み明かすぞ!」

「おー!」

 宴会が始まり、カーミレが酒臭い臭いから逃げるように皿を洗いに行き、アズサも匂いで撃沈している。グレンゲとシュトラウスは酒を飲み始め、コウリョはヨイヅキの夕食を食べ始めた。まぁ、なんとも騒々しい夜である。

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