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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第三章 竜達の暮らす里
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カーミレとイラスト

「カーミレ。たまには一緒に出掛けるか」

 竜人と人間が同盟を組み、共存へと歩み始めた頃。ヨイヅキは家に居る、カーミレに話しかけた。


 人から竜へと変わった、シュトラウスに難しい事は丸投げしてあるのでヨイヅキも割りと暇なのだ。


 シュトラウスが初めは胸を張って言っていた。繋がりを強固にするために、私も頑張らないと! と。



 だが、今は仕事したくないぃ、と死にそうな声で言っていた。隣にはコウリョが居るので死ぬことはないだろう。


 死にそうに、というよりも死んでも蘇生させるだろうから。



 それに、近頃は魔物の討伐依頼もめっきり減った。まぁ、ヨイヅキの収入が零になる程ではなく、ちょっと減ったかな? ぐらいではあるが。



 そんな訳で、ヨイヅキは暇なのだ。



「うん!」

 ぐでぇ、としていたカーミレが元気よく起き上がる。最近、伸ばしていた髪だが短い方が良い! とカーミレ本人が言ったので切ってある。



「なら、準備してくれ」

「はーい」

 ヨイヅキは準備と言っても服を着替えたり髪を整えたりする訳ではないので、カーミレのおめかしを待つばかりである。





 少し経ってから、カーミレの準備が終わった。着ている服は、懐かしい初めて勝って貰った白いワンピースに、ベージュの上着である。


 少しぶかぶかだったワンピースは、ちょうどぴったりの背丈になっていた。子供の成長が早いのはどこも同じなのだろう。



「懐かしいな。その服」

「うん! ヨイヅキが初めて買ってくれた思い出の洋服だもん」


「じゃ、行こうか」

「うん」

 嬉しそうに笑っているカーミレの頭を撫でて、扉から出ていく。大通りにゆっくりと歩いている。




 昔と違って、今は竜人も楽しげに歩いているのが特徴的だ。ヨイヅキが知っている竜人達もチラホラ見かける。


 どの竜人達も心の底から楽しそうに笑っていた。



 竜人の文化も少しずつこのナルトリアの町に入ってきている。例えば、菓子等だ。昔は無かった、クェイと呼ばれる菓子が今大流行している。


 薄く焼いた生地に、砂糖漬けにした果物やシロップを包んで食べるというものだ。



 クェイを食べ歩きしている人間も見られる。どちらかと言うと、人間の方が大量に食べている。目新しさもあるのだろう。




「ねぇ。あそこ! なんかやってるよ!」

 カーミレが指差したのは、噴水の近くのベンチに座っている絵描きがいた。絵描きの目の前にある大きめのキャンバスかある。絵を描いているのだろう。


 また、子供連れの家族が一組立っていた。目の前の絵描きに書いてもらっているのだろうか。



「書いてもらうか?」

「面白そう!」

 ちょうど書いて貰っている家族が絵を貰っていた。子供が母親と楽しそうに会話している。




「絵を描いてくれるのか?」

「えぇ。そうですよ。書きましょうか?」

 すかさず、絵描きの元にヨイヅキ達はやってきた。どうやら、無償で書いてくれるらしい。


「なら、カーミレ。書いて貰え。俺は良いや。さすがに恥ずかしい」

「むぅ」


 ヨイヅキが自分から言い出したことは絶対に曲げないことはカーミレも知っていること。なので、頬を膨らませるだけで特に駄々は捏ねなかった。



「では、可愛らしいお嬢ちゃん。書きますよ」

 カーミレが絵描きの前でポージングをした。ワンピースの裾を少し持ち上げて笑っていた。それを、絵描きが真剣な面持ちで書いていく。



 かなりの速さで、カーミレがキャンバスの中に描かれていく。隣で見ていたヨイヅキが見ても、生き写しのようにそっくりであった。


挿絵(By みてみん)


「書き上がりましたよ」

「見せて! ほら、見て見て、ヨイヅキ! カーミレに似てる?」

 キャンバスの隣に立ってヨイヅキに聞いてくる。ポージングもほとんど同じでそっくりだった。



「あぁ。どっちが本物か分からない位だ」

「ほんと! 絵描きさん。ありがとう!」


「いえいえ」


 嬉しそうにカーミレはキャンバスを受け取った。そして、ヨイヅキを催促して家に一旦帰った。せっかく書いて貰った絵だ。汚したりしたら困るからだろう。



※※※


 ちなみにカーミレが描かれた絵は、ヨイヅキの家に大切に飾ってある。

今回、ふわにゃ様より可愛いカーミレのイラストを描いて頂きました。ありがとうございます。


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