0008-03
領主の館から帰ってきた。だが、ヨイヅキだけは三人を先に帰らしてどこかに行ってしまった。恐らく、他の古竜たちにも相談するのだろう。
「ねぇ、シュトラウスお姉ちゃん」
「どうしたの?」
まだ昼前であり、自分の影を踏みながらカーミレはシュトラウスに話しかける。
「竜と人。私はどっち?」
「え?」
確かに、ヨイヅキからは聞いていた。カーミレはヨイヅキの血で蘇っていると。そのため、竜とも言えなくもない。だが、竜ではない。竜化することもできない。
だが逆に、人かと言われたら完全にそうである。とは言えない。
竜の身体能力と魔力量は有した者を人間と呼べるのだろうか?何十倍もの魔力を保有し、魔術を操る直感は凄まじい。尚且つ、普通の近接戦闘を得意とする魔術師にも遅れをとらない。
ものすごく、中途半端なのだ。カーミレは。
「カーミレ殿。お主が、竜なのか。人なのか。妾は知らぬ。だがのぉ、お主は紛れもなくお主である。竜であろうが、人であろうが、お主をしっかりと見守ってくれる者達がいるのじゃ。それで十分じゃないかのぉ?」
歩きながら、言葉に詰まったシュトラウスをフォローするアズサ。
その言葉に納得したように、そっか、と呟いて笑った。
「ありがとう!」
「別にいいのじゃ」
その後、大通りをブラブラしたり遊んだりして家に帰りついた頃にはヨイヅキが先に家にいた。
※※※
「はぁ。スイハ、グレンゲ、コウリョ、リョクハ。聞いてくれ」
「なんだ?こっちは忙しいんだ。完結にな」
「ん~。おはよう。それでどうしたの?」
「ヨイ君、どーした?寂しくなっちゃった?」
「先輩!何かありましたか?」
声だけが頭に響く。影を伝い声だけを届ける魔術である。凄まじい量の魔力を使うがこのように遠くの者と会話するときには便利である。
「ナルトリアの町の領主から、竜に対する平等な同盟の申し入れがあった」
「ごぼっ。ごほっ。ごほっ、な、なんだって?いくらなんでも早すぎだろ?その人間の領主はアホなのか?こっちからしてみれば、嬉しい限りだがな」
「やっと、夢に近づいてきたね。あなたの成したいようにやりなさい。フォローはしてあげる」
「ふふっ。こーなると思ったよ。スイハの意見にさんせーい」
「さすが、先輩です。何かあったら言ってください。できるだけやってみます!」
どうやら、反対意見はないらしい。ヨイヅキ的にはグレンゲ辺りが反対してくると思っていたのだが、そんなことはなかった。
「なら、同盟を組んでいいんだな?」
「あぁ、」
「そうね」
「上に同じく」
「もちろんです!」
そして、古竜全員の意思で幾名かの竜人をナルトリアの町で生活させてみようという意見もでたが、これは領主と意見を交わして実行するか決めていく方針となった。