0008-01
ヨイヅキ達はなんとかギリギリ、暗くなる前に帰り就くことができた。
「楽しかったね!」
「確かに。ここでは見れないものが見れたもんね」
カーミレとシュトラウスは楽しめたようだ。確かに、ずっと他の竜人達と楽しそうに喋っていた。カーミレもだ。
「ヨイヅキ殿。見てほしいのじゃ。星天紅華、打ち直し。天地煌華なのじゃ!」
スラリと抜いた星天紅華、ではなく天地煌華をヨイヅキに自慢げに見せている。この刀の打ち直しのために抜け出していたようだ。
一晩で打ち直してくれた竜人の鍛冶職人もかなりの腕前なのだろう。
波打つ波紋も、元々の水で溶いたような紅色もまるで変わっていないように見える。だが、一つだけ地がう点があるとしたら威圧感だろう。
ずっしりとしていて、それでいて鋭い印象を受けるその刀はしっかりとアズサの手に馴染んでいた。
「グレンゲのとこの鍛冶職人か。良い仕事をしたみたいだな」
「じゃろ!」
ニコニコと嬉しそうにはしゃいでいる。落ち着いたイメージをヨイヅキは持っていたのでアズサの違う一面が見れたように感じた。
「朝からすいません!ナルトリア領主からの使いです。影と茨の竜、ヨイヅキ・ソーレイド様とそのお連れ様にご同行を願いたいのですが」
扉の前から若い声が聞こえた。聞こえた限りでは領主の部下だろう。そのため、安心して開けた。
目の前には、かなり若い男が居た。ソワソワとしているので緊張しているのだろうか。
「わかった。少しだけ待っていて欲しい。準備をしないといけないからな。カーミレ、シュトラウス、アズサ。外に出る準備をしてくれ!」
分かった~、と声が聞こえた。それと同時に若い男も敬礼する。
「では、少し待っています。ゆっくりと準備してください」
「いや、俺もここで待とうかな。少しだけ世間話をしようか」
扉を閉めて男を見た。
「この町の英雄との世間話ですか。光栄です」
「なぜ、人と竜とが決別したか。分かるか?」
「えっ……」
「竜が完全に悪くない、とは言わない。竜にも非があった。だがな、ある日ある事件が起きたんだ」
「事件ですか」
話されたの恐らくは知られていない事実。
「あぁ、その時な竜と人とが──」
「皆な、準備終わったよ!」
扉を開けてカーミレが顔を出した。いつもの普段着ではなくよそ行きの服が少しだけ見えた。
「なら、世間話もここまでだな。案内してもらっていいか?」
「もちろんです」
カーミレの後に続いて二人も出てきた。その姿を見てから男は歩き出した。
「ねぇ、ヨイヅキ。どこに行くの?」
「あぁ。領主の館だよ」
へぇ~、と言うように頷いた。どうやら目的地を知らずについていってたらしい。
「ねぇ、アズサちゃん」
「なんじゃ?シュトラウス殿」
圧倒的にシュトラウスの方が子供らしく見えるのだが上下関係だけが逆である。とても不思議な光景に見えた。
「ずっと聞きたかったんだけどさ。壱之刻を討伐したのってさ、アズサちゃんだよね?」
「はて?壱之刻?」
「んー、ほら。魔術をバンバン売ってきた奴」
「おー。それなら、倒したのじゃ」
壱之刻と知らずに倒していたらしい。ある意味、凄まじい。
「十刻災厄をも倒していらっしゃる方々だったとは」
男が驚いたように話に参加してきた。
「ここが、領主様の邸です。来てくださりありがとうございます」
最後に敬礼をして、門の扉を開けた。
目の前には、ナルトリアの町でもとても豪勢な邸の姿があった。