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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第三章 竜達の暮らす里
47/65

0007-08

「恐らく、十刻災厄の肆之刻が現れると思う。その時は」


「わっかてるって。爆砕してやるよ」

 ヨイヅキのの言葉をグレンゲが続ける。もうとっくの昔に日は暮れてしまっている。カーミレにいたっては、ヨイヅキにもたれ掛かって眠ってしまっている。



「まぁ、辛気臭い話は仕舞いだ。今回は上等な酒を用意してきたぞ! ほら飲め飲め!」

 どんっ!と酒樽を近くに寄せた。器用に器がグレンゲの使いの者達が器を配っていく。


「おっ、燈酒じゃないか。また上等なのを持ってきたね。ほら、早く注がないか」


「いつもすいません。グレンゲ先輩」


「よっ!待ってました!」

 三体の古竜がやんややんやと囃し立てる。相当な酒好きなのだろう。



 燈酒というのは、薄い橙々色をしたかなり強い酒である。しかもこれまた希少価値が高く超高値で取引される。


 だが、一人だけ違った反応をする古竜がいた。そう、ヨイヅキである。



「ヨイヅキも飲むよな?」

 質問しながら酒を注ぐ。もはや、聞いていないのと同義であろう。だが、流されて断りきれなかった。



「じゃ! これからの未来を祈って、乾杯!」

 グビグビと全員が酒を煽った。そして次の瞬間、ヨイヅキが倒れた。完全に顔を真っ赤にしている。


 カーミレがヨイヅキという支えがなくなり地面に倒れて目を覚ました。



「あっ、やっべぇ。忘れてた。おいっ、アホ早く回復させろっ」


「ふぇ~。なぁにぃ?」

 かなり秘蔵のものを持ってきたらしくコウリョまでもダウンしていた。



「ふふっ。どうしたの?グレンゲ」

 そこには半分竜化したヨイヅキの姿があった。未だに顔は赤く酔っている様子である。


 基本的に古竜と呼ばれている種には性別がない。もう少し性格に言えば、両性なのだ。


 まぁ、慣れ親しんだ体で生活するのがだいたいらしいが。



 普段は調整しているのだが、ヨイヅキも古竜である。女にも成れるのだ。一応。



「姐さん!助けてくれ!」

「ま、自分で頑張りな」


 酔うと性格が変わる、なんてことはよく聞く話である。ヨイヅキはちょこ~とそのギャップが激しいだけで。



「来るなっ。来るなぁ」

 グレンゲが全力で逃げ出す。かなりの速度で走っているがヨイヅキが影渡すれば一瞬で捕まった。



「さぁて、い──」

 またもや、ヨイヅキが倒れた。そんなヨイヅキを見てほっと安心するグレンゲ。


 酔いすぎてまた意識を失ったのだろう。まぁ、死にはしないはずである。



「騒がしいねぇ」

 そんなちょっとした争乱をツマミにスイハだけが酒を飲んでいた。




※※※



 そんなこんなあったが、宴は終わった。コウリョとヨイヅキは早々にダウンしていたがどうやら他の面々は楽しかったようだ。


「頭、痛ぇ。なぁ、カーミレ。アズサはどこだ?」

「知らないよ?」


 ケロッとしているカーミレが返答した。昨日は一度夜中に起きたせいかとても眠そうである。


 あっちこっち探し回ったのだがどこにもいない。割りと焦っていた。だが、もうそろそろ帰らないといけない時間帯が迫ってきた。昼前には出ないと、町に戻れなくなる。


 リョクハにアズサが戻ってきたら連絡するように伝えてから、諦めて帰ろうとしたその時だった。


「うにゃぁぁぁっ」


 大きな叫び声と共に、アズサが降ってきた。手には、見慣れた星天紅華が握られている。



「アズサ! ぐっ」

 降ってくるアズサが、地面に叩きつけられないように、ヨイヅキがキャッチした。



「まったく、どこいってたんだ?」

「ごめんなさい、なのじゃ」


「次から気を付けろよ?」

 それだけ言うと竜化して、アズサを見た。帰るぞ、という意味だろう。


「さて、帰ろう! 私達の町に!」

 シュトラウスが元気よく叫ぶのと共に、ヨイヅキが羽ばたいた。それと同時に、真っ赤な竜とフサフサとした黄色い竜と青色の竜もそれぞれの場所に羽ばたいていった。

0007話、完結です。


いつも、読んでくださりありがとうございます。

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