0007-07
ヨイヅキが話してから直ぐに、カーミレやシュトラウスやアズサに竜人達が群がってきた。
そこには害意や悪意等なく、ただ純粋な興味や仲良くなりたいという正の感情が多かった。
「おい見ろよ!あの嬢ちゃんの下げてる刀!かなりの業物だぜ」
「ん?星天紅華のことかの?」
どうやら赤髪の鍛冶職人とアズサは話しているようだ。おそらく、グレンゲの付き添いできたのだろう。
「なぁ、抜いてみてくれよ」
「いいのじゃ」
すらり、と星天紅華を抜刀した。薄い赤の刀身に炎の光で反射している。
「すごい。重みが伝わってくる。だが、寿命が来ているな。打ち直さないのか?」
「それがのぉ。妾を探しているのじゃが、なかなか見つからないのじゃ」
星天紅華を納刀し、悲しげな顔で伝える。
鍛冶職人曰く、刀身が火や魔力に強すぎて軟らかくならないそうだ。
「紅星隕鉄か。そりゃ人には無理だな!」
グレンゲがそう言いながら歩いてきた。どうやら先程の光景を見ていたらしい。
紅星隕鉄。それは、高い硬度と耐火、耐魔性能を持つ金属のことである。希少価値が非常に高くまず見つからないことでも有名である。
また見つかっても、加工ができないのでなかなかお目にかからない。
「なぁ、その剣。預けてくれないか?俺たちの里でなら打ち直せる。なんなら一緒に来てもいいぜ」
「よ、ヨイヅキに相談したからでもよいかのぉ?妾としては行きたいのじゃが」
物凄く悩んでいる様子だった。このまま自己判断で行動されたら困ると思ったのだろう。
「大丈夫だって。なんなら怒られた時には俺が口添えしてやる」
グレンゲがそう言って胸を張った。はたして、どれほどの効果があるのかは分からないがアズサは安心して、よろしく頼むのじゃ、とだけ言った。
「よし、お前。この嬢ちゃん連れて先に里に戻って良いぞ?早く打ち直したいんだろ?」
「いいんですかい?」
おずおず、というように赤髪の鍛冶師が聞く。まぁ、言ってしまえば自らの族長が目の前にいるのだ。
気を使わない方がおかしいだろう。
「もちろんだ」
きっぱりとそう告げられて鍛冶師は嬉しそうに笑った。その後に、直ぐに竜化してアズサを見た。
ヨイヅキ以外の竜は初めて見たが、不思議と恐怖は沸いてこなかった。
ヨイヅキに乗るように、ゆっくりとのぼって背中に座った。直ぐに竜が羽ばたく。
強風に目を瞑ってしまう。そして、次に目を開けた時にはもう樹海はかなり遠くにあった。
「すごいのじゃ。ヨイヅキよりもずっと早いのじゃ」
※※※
その頃、カーミレは子供達と遊んでいた。
子供らしく?鬼ごっこをしているようだがクオリティの高い鬼ごっこだった。カーミレ以外が全員鬼であり、カーミレも影渡で影から影へとあちらこちらに逃げわまっていた。
子供達も、どこら辺に影渡するのか分かってきたのか先読みして捕まえようとするのだが、紙一重で交わされてしまう。ヒラリヒラリと逃げ回っていた。
「楽しそうだね」
「あぁ。ちょっと前まで死にかけていたとは思えないな」
ヨイヅキとシュトラウスが話しかけていた。ヨイヅキは古竜である。里にいる竜よりもはるかに強かったりする。
だからこそ、話しかけられずに遠目で見られているだけである。グレンゲは、自分達と同じ系統の竜人達に好かれている。リョクハもだ。スイハも割りと慕われている。コウリョは治癒特化なので割りと人気なる。
つまり、ボッチ古竜はヨイヅキだけなのだ。
「さ~て、私も何かたべてこ~よっと」
ヨイヅキから離れて辺りを詮索するように見て回り始めた。ヨイヅキの周りには人が誰も居なくなった。