0007-06
夕暮れが訪れると共に竜達の宴が始まった。多くの竜人が集まる広場には大きく火が燃え、辺りを明るく照らしている。
「では、竜達の宴を始めましょう。その前に一つ聞きます。皆さんは理性ある竜ですか? それとも理性なき獣ですか?」
リョクハの問いに多くの、否ほとんどの竜達が声を揃えて叫んだ。違う、と。誇り高き竜である、と。
「そうですか。良かったです。実は今回は、私をあわせて五体、そう全ての古竜がこの宴に参加してくれています」
グレンゲ、スイハ、コウリョ、ヨイヅキがリョクハに近づいていく。竜人達から、どよめきの声が聞こえる。いつもはヨイヅキは来ないので、揃うことが無かった。それに、ちょいちょい他の古竜も参加しなかったりしていたのだ。
「影と茨の古竜である、ヨイヅキ・ソーレイドから皆さんに話があるそうです」
「あ、あー。俺が影と茨の古竜、ヨイヅキだ。俺は竜と人とが共存する世界を作りたいと思っている。夢物語だと思っているだろう。まぁ、そう言われるのは分かっている。だが今、俺の住んでいる町では少なくとも竜と人とが共存できている」
違う意味のどよめきが起きる。だれもなし得なかったことをしているのだ、と理解したのだろう。竜達がずっと聞かされていた昔の時代の話。
「十刻災厄、参之刻。これが俺たちの町を襲った。その時に俺は竜として戦った。全ての人が肯定してくれる訳ではない。否定してくる人もいるだろう。だが、一昔前のように竜だから、と言って問答無用で殺されることは無かった」
思い出しながら、ゆっくりと言葉を紡いでいく。ここでも、否定的な意見が出てくると思っていた。
なにかをすれば、色々な意見が帰ってくるものである。ヨイヅキは思っていた。
「おいっ。嘘じゃねぇんだよな?」
グレンゲがヨイヅキに問いかける。先程のように感情的ではなかった。ただ真実が知りたい、というような目であった。
「あぁ。嘘ではない。そして、これからも竜と人が暮らせる世界を着実に増やしていきたい。そう思っている」
「さっきは悪かったな。ちょっと、昔に捕らわれすぎてたかもな。姐さんに言われたんだよ。あの後」
きっと、口論した後にスイハと合ったのだろう。その時に、グレンゲを変える言葉を言われたのだろう。何が変えたのか、想像もつかないが。
「焔と破の古竜たる俺はっ。影と茨の古竜の夢にできる限り協力しよう!竜と人が一緒に、か。また見てみたい!お前らはどうだ?」
「ふふっ。ちゃーんと言えたじゃん。ヨイ君」
コウリョが小さく呟いた。隣に居たスイハがコウリョを見てクスリと笑った気がしたが気のせいだろう。
「光と癒の古竜も影と茨の古竜に協力しよう!」
「霧と断も協力しようかね」
「私もですよ!」
四体の古竜がヨイヅキに賛同したのを皮切りに、口々に俺も私も、僕も!と言ったように笑いあっていた。きっと実現すると、どこか心で感じたのだろう。
確証なんてない。失敗するかも知れない。それでも、信じたいと思える願いだったのだろう。
「昔からの者はともかく、若い衆は人族と喋った事がないだろう?今日は俺の友人を連れてきた。偏見を持たずに喋ってほしい。以上だ。長ったらしい話は止めて騒ぐぞ!」
おおー、と叫び声が聞こえた。一瞬、大地が震えた気がした。
まだ、夜は始まったばかりである。これから、長い長い宴が始まる。