0007-05
竜人という種族の特徴の一つとしてあげられるのは耳が細長い、と言うことである。
だがこの特徴はあまり他種族は知らないらしい。耳が細長かろうが、そういう体質なんだなぁ~、ぐらいにしか思われていない。
竜人達にとっては好都合だったが。
「グレンゲ先輩もスイハ先輩もコウリョ先輩も来るそうなのでやっと、古竜五体が揃いますね!」
リョクハの言葉に精神的なダメージを受けるヨイヅキ。
リョクハの言葉を返せば、今までヨイヅキが参加しなかったために、揃うことが無かった、というように聞こえたからだ。
竜人達の里には、緑髪の竜人と黒髪の竜人の二種類が暮らしているようだ。
実は、緑髪の竜人はリョクハの系統の竜人達である。主に緑や自然関係の魔術に適正を持つ。
そして、黒髪の竜人はヨイヅキの系統よ竜人達である。ヨイヅキが里を作らなかったために広大な土地が余っていたリョクハの所についでに暮らしてきた。
どちらも仲が良いようで、中には黒っぽい緑色の竜人も見られた。
「ヨイヅキ様!お久しぶりです」
「あぁ。久しぶりだな」
子供のような小さな黒髪の男の子から手を振られていた。カーミレよりも背丈は低い。しかし、カーミレの倍以上は生きている。
「よぉ?影と茨の野郎。人族の女ぁ侍らしてなんのつもりだ?」
赤髪のヨイヅキと同じぐらいの背丈の男がこちらに歩み寄ってきた。
人間族。恐らくはアズサのことを指しているのだろう。シュトラウスは完全に竜人となっているし、カーミレも竜人に見えなくもない。
「ちょっ、グレンゲ先輩!喧嘩腰にならないで下さいよ!」
「あぁ?なんだ緑と陽の嬢ちゃん。コイツの肩を持つってのか?」
イライラしたようにグレンゲが言い放つ。オロオロしながら周りで見守る人達。誰も止めようとはしない。
いや、正確には止められないのだ。
焔と破の古竜であるグレンゲを止められるのは、同じ古竜ぐらいであるからだ。
「竜と人とが暮らしていた世界をもう一度見たかった」
「何を夢物語を言ってやがる。知っているだろう?最終的に人族が俺たちにどのような仕打ちをしたかっ!」
「あぁ。夢物語、そうだな。そうかもしれない。だが俺が今、住んでいる町では俺の正体がほぼ全ての人にバレている」
「どうせ迫害でも受けて逃げ──」
「違うっ! ヨイヅキはね。怖がりながらも、ちゃんと本当の事を話してくれたよ? そして、十刻災厄。参之刻を討伐してくれた。見捨てても良かったのに」
グレンゲの言葉を遮って、シュトラウスが叫んだ。
「新参者に何が分かるっ! 迫害の記憶も、全ての人から憎まれたこともっ、無いくせに!」
感情的にグレンゲが叫んだ。その大声に驚いてカーミレがヨイヅキの裾を掴む。
「そこら辺にしときな、皆。感情的になりすぎだよ」
「あ、姐さんっ」
「スイハ先輩!」
「久しぶりだな。スイハ」
蒼色の髪をした女性である。霧と断の古竜であるスイハだ。先程来て、この喧騒を耳にしたのだろう。
「ヨイヅキ。人と竜とが共存する世界、か。そこまで行き着くには、苦難すぎる道のりだと思うよ? でも、私は見てみたい。ふぁぁ、後、おやすみ。宴の前に起こしてね」
それだけ言うと去っていた。マイペースな古竜である。だが、場の雰囲気は和らいだのがわかった。
「あっれれぇ? どうしたの? なんかあった?」
「なんもねぇよ。光と癒のアホ」
そっぽを向きながらその問いに答えた。
「あっ、またアホって言った! アホって言う方がアホなんだよ!あ、それにシュトちゃん、体どう?」
いつぞやの、光と癒の古竜のコウリョである。シュトラウスは、大丈夫です。とだけ答えていた。
これで、古竜五体が久しぶりに揃っての宴が始まる事となる。
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