表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第三章 竜達の暮らす里
40/65

0007-01

 ヨイヅキは宴の後カーミレとアズサが寝入ってしまったので起こさずに、竜化して天空巨塔へと影渡した。



 すぐさま、天空巨塔の前までついた。ゆっくりと歩き扉を押す。すさまじい大きさの扉だが割りと簡単に開いた。



 もしこの塔を攻略しようとしてきた者達であれば、延々と続く階段を上っていかなければいけない。ただ、ここにはちょっとしたギミックがあるのだ。



 まったく躊躇わずに、螺旋階段から飛び降りた。底も見えない程の深さがある。普通なら地面に叩きつけられて死ぬだろう。だが、ヨイヅキ達古竜は叩きつけられただけで死ぬことなどない。



 その強靭な肉体を利用して、地下に降り立つ。そして、壁にあるボタンに魔力を流しながら一度だけ押す。


 すると、転移魔方陣が起動し最上階にまで行けるという寸法である。




「もう!オンナノコの部屋に勝手に上がり込んできて!」

 ニヤニヤしながらそう言ってきたのはコウリョだった。


「何がオンナノコ、だ。もうそんな歳ではないだろう?」

「もぅ!まーた、そんなこと言うー。心はいつだってオンナノコさ!」

 ぶったぎられて唇を尖らせながら文句を言われた。


 いつものように、白と黄色を基調とした服装である。その後ろには同じような服装の少年が立っていた。


 灰色の短い髪から細長い耳が顔を出している。顔はどことなくシュトラウスに似ている。そして、なんと言っても背が低い。カーミレよりも背が少しだけ高いぐらいである。


「シュトラウス、なのか?」

「うん!そうだよ」


「実はね。記憶もほとんど混濁が無かったんだ。失敗したのは器だけだったのが不幸中の幸いかな?」

 いやぁ、全盛期なら失敗しなかったかもなぁと言いつつもバツの悪そうな顔をしていた。絶対に成功すると思っていただけに、失敗が辛かったのだろう。



「良かった。本当に良かった」

「ヨイヅキ。ありがとね。私のために正体をばらしたんでしょ?ここからずっと見てたよ。ヨイヅキ達の戦いを」


 声も少しだけ低い気がするがシュトラウスはシュトラウスである。多少姿が変わったぐらい、どうってことない。



「ごめん。覗き見しちゃった!」

 てへっ☆と下を出しながら悪びれずに言った。先程までの萎れた態度は何処へ行ったのやら。


「はぁ。まぁ良いがな」

「ねぇ、次こそは来るよね。集まり」

 唐突にコウリョが話を変えた。この話題を変えたいから、ではなく単純に思い出したから聞いた、というような聞き方であった。



「もちろんだ。次の集まりは、亡霊樹海か。リョクハの所だな」

「うん。次の集まりの日にちは一週間後だったはずだよ」


「そうか。カーミレを連れてそっちに来るからな」

「わかった。じゃ、お二人で仲良くしてくださいねぇ~。ここでお邪魔むしはどろん!しまぁ~す」


 ニヤニヤしながら部屋から出ていった。コウリョなりの配慮であろう。もしくはただ、からかいたかっただけか。



「その体は馴れたか?」

「うん。コウリョさんからたくさん話を聞いたよ。ヨイヅキのことも、ね。それでね。謝らないといけないんだ」


「ごめんなさい。ヨイヅキがこの町に来たときにね、真名と種族をこっそり見ました。私さ、聖女だからさ。見たら分かるんだ。真名と種族がさ。それで、竜って分かってたから近づいたんだ。ずっと騙してたんだ」


 シュトラウスがヨイヅキの目を伺うように見た。怒られると思っているのだろうか。



「いや。いい。こちらこそ、すまん。怖かったんだ、本当の事を言ったら離れられてしまいそうで」


「そっか」



「なぁ、これからも一緒に居てくれないか?シュトラウス、お前が居なくなったって分かってから、寂しく思えたんだ。それくらい大事なんだ」


「それって、告白?」

「な、何を言っている!そんな訳、無いだろうが!」

 珍しくヨイヅキが慌てた。そこから、少しだけ喋ってシュトラウスを連れてナルトリアの町に帰った。


 もちろん、コウリョには一言お礼を告げてから移動を始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ