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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第二章 動き出す脅威
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0006-07

 ラバーズの討伐から数時間が経った。参之刻(ラバーズ)のせいで無くなった人間への追悼が行われた。


 痴情の縺れによる殺人事件の大半は参之刻が原因だったらしい。討伐後から、ラバーズの証言が大量に集まった。



 大きな篝火を焚いた。もうもうと煙が天へと立ち上っていく。魂もその煙を目印に登っていくことだろう。そして、全員で祈りを捧げた。


 本来なら死ぬ必要などなかった者達というのは、ただ災厄に巻き込まれた者達である。



 静かに、追悼がなされたのだった。



 だがその後は、場所を大きく変えて宴が始まった。十刻災厄の一つを退けたのだ。偉業ともいえる事態に、宴が始まらない訳がない。





 だが、最愛の者を亡くしている者の事を考えて宴は追悼の篝火よりもずっっっと遠くで行われた。


 音楽などが鳴り響いたりはせず、食事会のような物である。



 ヨイヅキは宴の真ん中の人混みではなく、少し離れた場所の木に寄りかかっていた。もちろん、半竜化した状態ではなくいつもの人の状態である。


「俺はこの町から出ていった方がいいのか?」

 ポツリとヨイヅキが呟いた。確かに、竜化した際にそう言ったのだ。出ていけと言われても文句も言わずに出ていくつもりだった。


 だが、宴に強制的に参加させられて笑顔を向けられていた。ありがとう。そう感謝すらされた。


 カーミレがヨイヅキのローブの裾を掴む。そして、口を開けようとした瞬間に話しかけられた。



「なに言ってんだよ!おめぇさんがいなけりゃ、参之刻は倒せなかっただろうに。見てたか?俺達の魔術師、まったくダメージ与えられてないだろ?もうこの町にとって、おめぇさんは必要なんだよ」


 ガハハ、と笑いながら肩を叩かれ、近くにいた酔っぱらいに言われた。どうやら、大量に酒を飲んでいて酔っているらしい。



「それに、そっちの小さな英雄さんの言葉。ぐっと来たぜ。じゃぁな!」

 カーミレを見ながらそう言ってふらりとどこかに言った。カーミレは顔が真っ赤になっている。



「ん?何か言ってくれたのか?カーミレ」

「う、うん。そうだよ。でも、何て言ったかは、ひみつ!」

 顔を赤らめているので、恥ずかしいことだったのだろうか。だが、ヨイヅキを守ろうとして言ったことだけは予想できたので感謝の気持ちを込めて頭を撫でた。



「飲んどるかのぉ?ヨイヅキ殿」

「いや、俺は酒は飲まない」


「つれないのぉ。一杯ぐらい飲んでみたらどうじゃ。ほれほれ、」

 グイグイと酒の入った器をヨイヅキに押し付けるアズサ。こっちも酔っているらしい。



「止めろって」

「むぅ。つれないのじゃ!情けないのぉ。妾は向こうに行ってまだまだ飲んでくるのじゃ」

 だがヨイヅキに本気で嫌がられてしまった為か、勧めていた器に入っていた酒を一気に飲み干し、それだけ言って踵を返して人混みのなかに消えていった。

 アズサが酒に強いということが発覚した。




「なぁ、カーミレ。まだ、俺と一緒にいたいか?」

「うん!あたりまえでしょ?ずっと一緒にいる!」


「俺が竜だとしても?」

「ヨイヅキが竜でも、関係ないよ。ヨイヅキはカーミレを助けてくれたから。ずっと着いていくからね!」


 逃げても無駄だぞ!と言いたげにカーミレが言った言葉に、ヨイヅキは無性に嬉しくなった。怖がれると思っていたから。恐れられると思っていたから。拒絶されて、自分の元を離れてしまうと思っていたから。



「そうか。ありがとう。なぁ、カーミレ。竜の里に一緒に行ってくれないか?俺の仲間達にカーミレを紹介したいんだ」

「うん!およめさん、って紹介するんでしょ?」

 冗談なのか本気なのか分からなかったが、冗談だとヨイヅキは受け止めた。



「なら、この宴が終わってから。行こうか」

「うん。ヨイヅキにずっと着いていくからね」

 ヨイヅキが見ない間にずっと、カーミレは大人になったようだ。そんなカーミレの成長を感じながら夜は少しずつ明けていく。



 第二章完結です。次は『第三章 竜達の暮らす里』へと移ります。さて、読んで頂き誠に有難うございます。これからも、頑張っていきますので、どうか応援の程を宜しくお願いします。


次章予告!

 ヨイヅキ達は、竜達の暮らす里を全て巡ることにした。亡霊樹海、灼熱火山、氷零洞窟の三つである。果たして、ヨイヅキ達を待ち受けている運命は。そして、十刻災厄もその牙を各地で振るい始める……

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