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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第二章 動き出す脅威
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0006-05

「ほら、二人が死んじゃうよ?」

 ニヤニヤしながら、カーミレとアズサの方に目を向けた。二人が分かりやすく動揺しているのが分かる。


「そうか?俺には何も見えないが?あぁ、そうそう。もし幻影のこと言ってんなら、その二人、容姿は似てても仕草が似てないな」

「元からバレてたってことかよ」


「当たり前だ」


 影という影から茨が現れる。果てることなく縦横無尽に目の前のラバーズに向かって飛んでいく。しかし、多くの茨の槍が地面に深々と突き刺さり動きを止めてしまった。


 凄まじい速度でラバーズに迫ってきているがヒラリヒラリと避けられる。凄まじい反射神経と動体視力である。



「攻撃が単調だよ~」

「さて、どうかな?」

 まだまだ黒い茨の槍がラバーズに襲いかかる。



 どちらにも足りない物があった。


 ラバーズには射程が足りなかった。どうやってもヨイヅキの近くに近づけないのだ。黒い茨の槍が邪魔をして。


 ヨイヅキには、ラバーズの動体視力を上回る速度が足りなかった。どんなに極限まで早くしても避けられるのだ。




 こんな攻防か何十分も続いた。


「もう終わりかな?」

「まだだっ」


 魔力切れである。どんなに魔力が膨大にあろうとも使えば減ってしまう。有限なのだ。それに比べて、ラバーズは殆ど魔法を使わなかった。


 余裕綽々とヨイヅキに近づいていく、ラバーズ。魔力が残っていない魔術師など、ただの一般人である。恐れることなど何もない、とでも思っているようだった。



「死ね!」

「お前がなっ!」

 同時に叫ぶと共に、ヨイヅキが後ろに飛んだ。ラバーズの影からお馴染みの氷が飛んだ。ギリギリで避けられる。だが、確実に顔に傷がついた。



「ヨイヅキ!」

「カーミレ!危ないから逃げろ!」

 確かに、起死回生になりそうな攻撃ではあった。油断していたのもあるが、それでも傷を付けられた。


「大丈夫じゃ。妾もおる」

 カーミレの後ろからアズサも現れる。その後ろにもぞろぞろと魔術師が現れた。誰もが、ヨイヅキではなくラバーズを睨んでいた。



「キサマっ。顔に傷を付けたな!ユルサナイ!コロスッ。コロシテヤル!四肢を引き裂きコロシテヤル!」

 どうやら、顔に傷が付くことが何よりも忌避していたことらしい。どうやら、カーミレはラバーズの逆鱗に触れてしまったらしい。



「カーミレに近づけるとでも思ったのかのぉ?アホじゃな。妾が通すとでも?」

 星天紅華を鞘から抜き、こちらに走ってくるラバーズに視線を向ける。



 次の瞬間、星天紅華とラバーズの腕が火花を散らす。生身の腕とは思えないほどの硬度であることにアズサが驚いたような顔をする。


 その間に、後ろの魔術師がヨイヅキに回復魔術を掛けていく。魔力も疲労も少しずつ回復していく。もっとも、自己治癒力も魔力回復力も半竜化している今は高いのだが。



「俺たちが間違ってた。アナタにとって、謝罪なんて意味が無いかも知れない。だからこそ、行動で示していこう。全班、標的は参之刻!」


 氷、火、土、雷、風と色々な魔術が、アズサを巻き込んでラバーズに降り注ぐ。一瞬にして土煙がもうもうと上がる。だが、アズサには傷ひとつ着いていない。


 特異体質《魔力反発》のお陰である。おそらく、最初から説明していたのだろう。アズサは自身の体質を。


 それに比べて、ラバーズはそこそこ怪我をしていた。着ていた上等な服はあちこちが焦げていたり切り裂かれていた。傷も少しだけついていた。


「まだまだ!皆、仲良く殺してあげるよ!」

 ラバーズの目には闘気が宿っていた。見た目によらず、まだまだ戦えるようだ。もしかしたら、見た目ほど傷を負っていないだけかもしれないが。


 十分にヨイヅキの魔力が回復した。そして、心に暖かいものが広がっていく。それは、アズサ達の後ろにいる魔術師が言った言葉が原因だろう。



「ふぅ。人間よ!感謝する。その勇気に祝福あれ!」


 ラバーズの元に、ヨイヅキが走っていく。先程のように魔術は使わずに拳を握りしめて。

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