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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第二章 動き出す脅威
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0006-04

 直ぐにナルトリアの町に着いた。だが、町は殺気だっていた。


「なぁ?竜なんだろ?さっさと消えてくれよ……アイツが、アイ──」

 ヒョロヒョロの男に言い寄られたのだが、直ぐに黙ってしまった。いや黙らされた、の間違いである。


 首から手が生えて、男は死んだ。



「あーあ、言いつけの守れない家畜は要らないんだ?やっと会えたね。嬉しいよ?あれ、この前の女の人が居ないね。あっ、殺したんだっけ?」

 おどけたようにラバーズが言う。それに、従ってヨイヅキの顔が憤怒に染まっていく。


「お前っ!」

「どうする?仇討ちする?どうする?ねぇ、それで報われる?ねぇねぇねぇ、」


 ヨイヅキの顔を覗くようにニヤニヤとしながら言ってきた。




「黙れ。ここまで怒らせたのはお前が四人目だ」

 ヨイヅキの腕が黒く染まっていく。左目も竜の時と同じように金色へと染まる。額からは角が現れた。


 まるで、人と竜を足したような姿になった。



「へぇ。そーか。そーなんだ。これでも戦う?」

 パチン、とラバーズが指をならした。後ろにはカーミレとアズサが捕らえられていた。



「我は忘れぬ。人の罪を。人が我らにした仕打ちを」

 チラリとヨイヅキの脳裏をよぎったのは、シュトラウスのことだった。


 目の前の災厄によりシュトラウスを殺された。助かったもののその生は苦しい道のりになってしまった。



「我は忘れぬ。我を守った人への恩を」


 竜としてその姿を現した時に、全ての人間から拒絶されると思った。ある程度は合っていた。恐怖に染まった目を向けられた。


 だが、それ以上に。守ろうと動いてくれた人間がいたことが嬉しかった。動機なんてどうでも良い。その結果が嬉しかった。


「ただ過去に感情に囚われ、バケモノに成り果てるのか?」


 今だけはバケモノだと罵られても仕方がない。目の前の災厄を殺す為に、感情に流されてこの姿となったのだから。


「それとも、まだ理性を保ち、竜でいるのか?」


 だがそれでも。まだ、まだ竜でいたい。この生に誇りを持って生きていたい。だからこそ、バケモノになったとしても這い上がってまた竜へとなろう。


 そう誓いながら言葉を紡ぐ。


「選択せよ。己は竜か?それともバケモノか?」


 だからこそ、もう一度己に訪ねる。


「我は竜。闇と茨の竜!その瞳も、牙も、鱗も、爪も。ただ感情のままに振るうものではない!」



「瞳は惑わされずにただ真実だけを見ておこう」

 幻影などには騙されない。ただ、ひたすらにまっすぐを向いておこう。たとえ、残酷な真実があったとしても。


「牙は不可能を噛み砕き、可能へと導こう」

 不可能な事なんてきっと無い。ただ、ひたすらに努力を重ておこう。たとえ、無理だと笑われても信じることが何よりも大切である。


「鱗は全てを受け止め、我をそして友を護ろう」

 頑丈で傷の付きにくい鱗は、自分を護るためのものでもある。だが、それと同時に他人を守ることもできよう。


「爪は災いを断ち、勝利へと友を導こう」

 護るだけではなく、自らも血濡れになろう。そして勝利へと導く標へとなろう。




「竜の誇りを胸に。影と茨の古竜。ヨイヅキ・ソーレイド!推して参る!」


「かかってきなよ!雑魚が!」


 ナルトリアの町に降り立つ、一つのバケモノと一つの竜の争いの火蓋が。


 今、落とされた。

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