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竜の親、人の子  作者: 暁月夜 詩音
第二章 動き出す脅威
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0005-02

「誰かっ、誰かっ。助けて欲しいのじゃぁ~」

 不思議な衣装を身に纏った女と共に魔獣が大量に追いかけてきていた。それはもう、この女を必ず殺す!と言わんばかりに殺気だっている。


 何をしたのだろうか。まぁ、おもいっきりやらかしたのだろう。


「カーミレ、魔術詠唱」

「う、うん!」

 恐ろしいほどの量の魔獣に恐怖を感じて固まっていた。だが、そのまま固まっているだけではいけない、とヨイヅキはカーミレに指示を出す。


「数多の影から忍び寄る死の氷。影から飛び出し、頭を穿て!」

 対多数用に詠唱の一部を改編した詠唱。それはしっかりと魔術となり大部分の魔獣の頭を穿った。しかし、魔力の練りが甘かったのか氷が上に外れたものやそもそも発動しなかった等の理由でまだ魔獣は生き残っている。


 カーミレに魔術の才能が無い訳ではない。むしろ、高い才能を持っている。だが、所詮は竜の血を少し継いだだけのただの人間である。


 魔術の行使にも限界があるのだ。


「茨よ穿て」

 たった七文字で残りの魔獣が茨により頭を貫かれる。カーミレはそれを見て少し自信を無くしている様子である。



「落ち込むことはないぞ?カーミレには魔術の才能がある。ただまだ慣れていないだけだ」

 真実をただ言えば良いだけではない事ぐらいは理解している。もうそろそろで魔術の限界に辿り着きそうだが、その事実は伏せて励ます。


「ぐゅるぉぉぉぉっ」

「なにっ。一体残っていたかっ」

 ヨイヅキが焦る。確実に全て殺ったと思っていた。だからこそ、喋っていたのだ。まさか残っているとは思いもしなかった。


 久し振りだったためか、油断していたようだ。


「ここは、妾も良いところをみせるかのぉ」

 女に向かって最後の一体の魔獣が襲いかかっていく。だが、女は魔術を使う様子が見られない。そもそも、杖を持っていない。


 杖のように見えるのは腰に下げている何かだけだ。


 すると魔獣が本当に目の前になってから腰に下げている棒のようなモノを抜いた。

 そこには、赤を薄く水で溶いたような色と、落ち着いた青色で編まれた持ち手の剣?のようなものだった。


 剣を持つ者など殆どいない。魔獣に剣や弓は通じないからだ。


 まるで、ただ歩いていくように進んでいく。そして、魔獣がその爪で女を切り裂こうとした時に女の動きが変わった。


 歩くような速度からいきなりすさまじいスピードで魔獣の横を走り去ったのだ。


 しかも、魔獣が一刀両断されている。そして、棒についた血を振り落とし腰にまた戻した。


 昔の時代の剣士のような者なのか、とヨイヅキは予想をたてる。


「お腹すいたのじゃ」

 それだけ言うと、真っ二つになった魔獣の先で倒れた。





※※※





「んぐっ、んぐ。はぁ。助かったのじゃ」

 女を木陰に移して、鞄からコップやら昼食を取り出す。実は、この鞄は影渡の魔術を応用して作られたヨイヅキ謹製の魔法の鞄なのである。


 カーミレが物欲しそうに見ていたので近々作成しようと心に決めた。



 昼食を取り出すと、臭いで気がついたのか女が目を覚ました。



 カーミレと女に昼食を進めて自分も食べ始める。

 クックル鳥甘辛いタレを絡め、野菜を挟んだサンドイッチである。それを食べながらこの女の事情を聞くことにした。



「先程から助けてもらって感謝するのじゃ。妾は、アズサ・ツキノキ。東の最果て、トウヨウの出の旅人じゃ」

 女は、いや。アズサはそう言った。

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